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「父の人生」を辞めることが、ハッピーエンドへの近道


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記事: yuko (ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
父が嫌いだった。
反抗期と言われる時期を過ぎても、ずっと父が嫌いだった。
嫌いと苦手の両方の感覚だ。
私は父の言葉や態度に、ずっと傷付けられてきた。
その存在に、ずっとイライラしてきた。
 
父は、決して褒めることをしない人だ。
テストで98点を取った時でも、取れなかった2点の方を責めた。
「98点取れるなら、どうしてあと1問が取れないんだ」と。
子供ながらに、どうしてこの人は嫌なモノの見方をするのかと呆れたものだ。
「完璧」や「一番」を目指さなければ、相手にしてもらえなかった。
 
父は、母に対しても褒めることはない。
酒の肴から始まり、好き嫌いの多い父の為にわざわざ作った別メニュー出しても、「美味しい」と口にしたことはない。それどころか、何かにつけて文句を言った。
いろどりが悪いだの、味が薄いだの、食感が固いだの……。
きっと、何も言わずに食べている時が「美味しい」のだ。
いや、彼に言わせれば、「食べられる」くらい。
はいはい、と聞き流す母が、不憫でならなかった。
 
なんて悲しい人なんだろう。
ものごとを悲観的にしか見られないなんて。
なんて寂しい人なんだろう。
わざわざ嫌われる言動を繰り返すなんて。
 
ただ、不思議なことに、そんな父を嫌いながらも、どこか失望されないよう振舞う自分がいた。
進学や就職、付き合う人に関しても、心の奥底で、父が望むような選択をしてきたつもりだ。
もしくは、父の希望と食い違った時には、空しい反抗を繰り広げたのち、最終的に父の意見に同意した。
ずっと、父に喜んで貰いたい、父に褒めてもらいたい、そして、認めてもらいたいと生きていた。
ただし、これはほとんど無意識の中でだ。
 
気付いた時、無性に恐ろしくなった。
どうやら私は「父」に依存しているらしい。
私は、「父の人生」を生きている。
 
自分の意見がなかった。
自分の意志がなかった。
自分の希望がなかった。
 
そんな風に感じた。
 
親が喜ぶ人生を生きることは、理想的なのかもしれない。
親孝行になるのかもしれない。
 
一方では、それは正しい。
 
ただ、それでは「私」である意味がない。
私は私が幸せだと思う人生を歩む必要があるのだ。
 
レールを外れたと、一時的にはガッカリさせるかもしれない。
だが、最終的に私が幸せに生きていれば、きっと許されるはずだ。
許されるべきだ。
私の自我と、父の存在の葛藤がいつまでも続いている。
 
何故、こんなにも父に固執する自分がいるのか。
 
……理由は簡単だった。
あまり認めたくはないが、きっと私は、父が好きなのだ。
だから、とにかく喜んでもらいたいのだ。
 
自己肯定感が低い原因を父のせいにして、「やっぱり家庭環境って大事だよね」と
諦めてはいけない。
私はそろそろ、父離れをしなくてはならない。
自分が自分を好きにならなければならない。
 
最近の父は、鋭すぎる角が少しだけ取れてきた。
歳のせいもあるだろうし、姉の孫ができたせいもあるだろう。
 
相変わらず口は悪いが、そんな父を「不器用な人」だと見られる余裕が、私にもできた。
 
孫たち(私にとっては甥っ子たち)が、父に懐いている姿を見ると、とても安心してしまう。
オモチャやお菓子をいつも買い与えている恩恵も大きいだろうが、嫌われる「じぃじ」にならなくて良かった。(今後、嫌われる要素は多いにあるのだが……)
そして、何より笑顔を見せることが増えたことが嬉しい。父の笑顔や笑い声など、あまり記憶にないからだ。
どんな父であっても、娘としては、やはり幸せになってもらいたいのだ。
 
数年前、姉の結婚式で、ずっとその結婚を反対していた父が送った言葉。
 
「……大事な娘だからこそ、父親としては幸せを願ってのことだった」
 
意外だった。
あの父から、そんな愛情溢れる言葉を聞けるとは思わなかった。
 
家族って、よくある恋愛ドラマみたいなものだ。
上手く行かなくて衝突したり、嫌ったりしていても、心の奥底では相手の幸せを願っている。
それを不器用すぎるが故、なかなか伝えられない。
しかし、最初はいがみ合っていても、大抵最後はハッピーエンドだ。
 
だとしたら、これから私と父に訪れるのは、ハッピーエンドであるはずだ。
どういう結末を迎えるのか、楽しみである。
 
まずは、私が隙を見せる必要がある。
依存していない、自分の人生を見せるのだ。
徐々にでも、理解してくれたらいい。
 
父が嫌いだった私。
父の顔色を伺う私。
父の失望を見たくない私。
父に認めてもらいたかった私。
父の幸せを願う私。
 
どれも真実で、なかなか上手く切り離せない。
ただ言えることは、私が私の人生を生き、幸せになることが、すべてを解決してくれる。
「父の人生」を生きるのを辞めるのだ。
それがきっとハッピーエンドにつながる。
 
「エンド」にはならないのかもしれない。
 
だって、彼との物語はその先もまだまだ続くと思うから。
まだまだ元気に頑張ってもらいましょう。
「大嫌いだった」お父さん。
 
 
 
 
***
 
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2020-04-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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