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もう1つの選択肢


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記事:安井美貴子(ライテイング・ゼミ日曜コース)
 
 
「オンラインでのつながりは、これからの社会を生きていくのに必要な力だと思うんです」
 
2020年2月27日(木)。連日、報道でも新型コロナウイルスの感染拡大の状況が語られる中、全国の小中高校において、一斉休校が発令された。クラスメイトとの「また来週ね」という別れは、突如再開がいつになるのか分からない状態に。昼間、保護者が働きに出る家庭においては、子どもだけが自宅に取り残され、生活のリズムが崩れたり、ゲーム・インターネット依存のリスクも。
 
一方、ニュースの特集番組で語られるこうした問題を横目に、未婚・子無しOLのわたしは、会社から命じられた在宅勤務を快適にこなしている。勤め先におけるリモートワークの環境は、以前より比較的万全。外出自粛が叫ばれはじめた直後から、早々にテレワークへ切り替わった。会議はテレビ電話で。メールや社内フォルダの閲覧も、リモートネットワークを介して、不自由なく対応できている。職場へ行かない分、当通勤時間や雑多な定例作業や会議前後の雑談時間がカットされ、体感的には、普段の6割程度の就業時間となった。それまでは、退社時間がほぼ毎日22時を過ぎ、時間的にも体力的にも、平日に仕事以外の活動をすることはほぼ不可能だった。
 
業務後、余力を感じるほど、数年ぶりに訪れた余裕のある暮らし。在宅勤務が始まった当初は、この時間を自分のためにと、読みたかった本や映画を見て、平日に仕事以外に過ごす時間を贅沢に楽しんだ。しかし1週間も経つと、あっという間に物足りなくなった。思えば、大学生の頃より周りの友人から言われていた。「いつもせわしなく過ごしていて、動きを止めたら死んじゃう魚みたいだね」。のんびりとした丁寧な生活には心底憧れるが、性分に合わず、どうしても、何か、何か。新しいことを求めてしまうのだ。
 
いいタイミングだった。大学時代の先輩がとあるNPO法人において、オンラインでの「期間限定プロボノ」を求めていた。プロボノとは、職業上持っている知識やスキルを無償提供して社会貢献するボランティアのこと。大学4年間、NPO法人の事務局運営をしていたわたしは、現在は新卒で入社した民間企業で働いている。しかし、いつかまた、社会に出て、スキルを磨いて。なかなか手を差し伸べづらい社会課題に対して、積極的にアプローチする活動に従事したいとずっと考えていた。自分のための豊かな時間より、外側に向かってできることを。自分に何ができるのか分からなかったが、すぐに手を挙げた。
その日から、平日は業務終了後、20時ごろから。休日は、基本的には終日。パソコンの画面越しにコミュニケーションをとる相手は、これまで一度も会ったことのない仲間たちだったが、同じ目的意識のもと、取り組みを始めた。
 
そのNPO法人では、学校という当たり前の居場所を奪われた子どもたちへ、オンラインで日中時間帯の居場所を提供している。ZOOM(オンラインで会議やコミュニケーションを行うためのアプリケーション)をつかって、離れて暮らす子どもたちを繋ぎ、毎日さまざまなプログラムを展開することで、コミュニティをつくっている。朝と夕方には、学校と同じようにホームルームが開催され、今日1日何をして過ごすか皆に発表。夕方にはもう1度集まり、その日1日の成果を緩やかに報告する。
学校では話しづらい趣味やテーマであっても、画面越しのお友達は、そのテーマに物凄く詳しいかも。恐る恐る自分の好きなことを語りながらも、会ったことのない友達からの意外な反応に、照れながらも嬉しそうだった。
 
オンラインで学び、毎日のルーティンを維持する機能は、今回の一斉休校措置を受けて、急速に必要性を認識されるようになった。しかし、この混乱が落ち着いた後も、居場所や学校機能の一つとして可能性を考えるきっかけになるだろう。
 
活動におけるわたしの役割は、1人でも多くの子どもたちに向けて、新しい居場所を届けること。実際にお子さんが利用している保護者へ、同じくZOOMをつかってインタビューをした。
 
「娘はもともと学校に行っていなかったんです」
 
初めてインタビューを行った際、保護者の方が語ってくれた。
「この場では、学校では言いづらかったことも言える。学年も住む場所も異なる子どもたちが緩やかに繋がっているからこそ、学校特有の同調圧力みたいなものもないみたいです。」
「画面の向こうの子が自分と同じことに興味をもっている感覚って、新鮮ですよね」
 
普段のコミュニティとは別に、もう1つの居場所を持つこと。教育指導要領という定められた道筋に沿いながら、終わりの見えない苦しさの中で頑張る子どもたちにとって、どれほど気持ちを楽にしてくれるきっかけになることだろう。わたし自身、学校生活に閉塞感を覚え、人間関係でうまくいかないことがあると、世界が終わったような感覚だった。今でも鮮明に覚えている。あのとき、部活一筋だったわたしにとって、居場所はそこにしかなかった。
 
学校は、決められた時間枠の中で、複数人で行動する訓練の場であると思う。社会で暮らすことに慣れないうちは、先々どのように暮らすかは別として、ある程度強制的に枠組みにはめられながらも「きちんと過ごす」練習をすることは、とても重要なことだろう。しかしそこに居場所がないと感じてしまった子どもたちに、緩やかに繋がれるもう1つの居場所。話を聞きながら、あのときの自分を思い出し、オンラインでのつながりに、大きな可能性を感じた。
 
これからの時代、子どもも大人も、オンラインでのつながりは、さらに一般的なこととなるだろう。学校でしか学べないことももちろんある。しかし、学校以外でも学べることもある。それはオンラインでのコミュニケーションもしかり、対面でない場だからこそ、気を付けなければならない最低限の作法などは、当然学校では教えてくれない。
 
「オンラインでのつながりは、これからの社会を生きていくのに必要な力だと思うんです」
学校に行かないという選択肢をあたたかく見守り、向いた方向に優しく背中を押す姿は、今後の社会を見据え、一歩も二歩も先に進んでいるように見えた。
 
子どもたちだけでない。わたし自身、各地のメンバーとオンラインでつながり、より広くPRするための取り組みに関わることで、これからの生き方を考える大きなきっかけとなった。対面でコミュニケーションすることが当たり前の時代は終わり、これからは場面によって、対面・非対面のコミュニケーションを使い分けるようになるだろう。そんな時代において、自分はどのように働き、暮らしたいか。
オンラインでのつながりは、これからのわたしにも、選択肢を与えてくれた。
 
 
 
 
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2020-04-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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