歩いた歩数分だけ得たものがある。だから、後悔なんか、しない。
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
【4月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:三上縁(ライティング・ゼミ日曜コース)
「あなたの退職が引継ぎで上がってきてね、寿なのかなぁ? 違うとしたら世の男どもは何をしてるんだ、って話になったんだよ」
令和2年3月31日。
最後の挨拶にお邪魔したら、こんな言葉をかけてもらえた。
照れくさくって、
「一職員の退職が引継ぎで話題に上がるなんてね~」
と返してみたが、彼は笑ってくれなかった。真剣な顔で、
「あなたがいてくれて、みんな本当に助かったんだよ」
と返されてしまった。
11年間務めた職場を去ることにした。
いつ退職するか……、それだけを10年間考え続け、年度当初に今年で終わらせる、と決めて1年間働いた。
専門職だけど、専門知識から離れるためにはどうすればいいかを考えているような毎日だった。
それでも、後ろ向きな気持ちだけで働いてきたわけじゃないと自負している。それなりに頑張ってきたはずだ。
「辞めてから後悔できたら幸せですよね」
なんて強がりみたいなことを言いながら、でも本気でそう思ってきた。隣の芝生は青く見える、というけれど、それは自分の持ち場を離れたからこそ気づけるものだ。元の持ち場が良かったと気づけたならば、そこで過ごした時間は幸せなものだった、と思える。無駄じゃなかったと知ることができる。それだけで十分幸せじゃないか。
退職するまでの最後の2年間、人と関わるのが苦手で、自席とトイレの往復以外動くことのなかった働き方が一変した。電話で呼ばれれば、即はせ参じ、自席に戻ってみたら、今の今まで作業していたそのフロアからの呼び出しメモが置かれているので、元居た場所近くまでとんぼ返り……、そんな日常だった。
人生でこんな毎日を過ごすことはないだろうと、歩数計機能が装備されている携帯電話を常にポケットに忍ばせ、歩数をチェックする日々だった。通勤と合算すると18,000歩を超える日も少なくなかった。
前の職場でお世話になった方々のところへ挨拶に伺うと、「退職するなんてもったいない……」という言葉とともに、「痩せちゃって……」という言葉をいただいたりもした。褒められたんだと思う、きっと……。
毎日呼ばれた。
毎日歩いた。
毎日たくさんの方に「お疲れ様です」と声をかけた。
毎日笑顔で反応してくれる方を探していた。
歩いた分だけ、顔見知りの方も増える。
名前を憶えてくださる方が増える。
わたしを見つけて、声をかけてくれる方も増える。
笑顔を向けてくださる方も増える。
退職することを伝えると、いろんな方が、いろんな言葉をくれた
「辞めるなんてもったいない……」
「疲れたんでしょう。ゆっくり休みなさい」
「今日イチのショックです」
「頼りにしてたのに!? いなくなっちゃうの!?」
「たくさんお話ができてうれしかったです」
「あなたなら何かできると思う」
「みんな、その笑顔に癒されてたんだよ」
「本当にお世話になりました。ありがとうございました」
「一緒に働いてみませんか」
退職するということは、定職についている状態を手放すということ。
手放せば何かを得られるだろうと、漠然と感じていたが、もちきれないほどのギフトを、たくさんの方からいただいた。
これからのわたしに対してのギフトだけではない。
これまでのわたしに対してのギフトもたくさんいただいた。
何もしないわたし。
甘ったれのわたし。
成長しないわたし。
褒められないわたし。
自己評価がとても低いわたしに対して、そんなことないよ、と気にかけていただくことも多かった。
そんな中で、みんながわたしを見てくれていて、あなたがいてくれて本当に良かった、と声をかけてくれた。
わたし自身をダメ人間と評価していたのは、わたしだけなのかもしれない。
こんなに認めてくださる方がこんなにもたくさんいらっしゃるのに、気づいていなかった。
これからは、わたしに、わたしを称える言葉をかけてくださった方々に恩返しをしていかなければならない。……ねばならない、と考えると笑顔も逃げていってしまうので、恩返しをしていきたい、と想い続けよう。
結局、最後の出勤日、挨拶に回っていたものの、回り切れなかった方も多い。なんて失礼なやつなんだ、と思わせてしまったら申し訳ない。ここでの挨拶に代えさせていただく。
2年間、そして11年間、お世話になりました。
まだまだ芽を出したばかりの新生活ですが、皆さんのおかげで、今日のわたしは、楽しいです。
きっと明日のわたしも楽しいです。
皆さんの日々が、もっと楽しくなるように、自分ができることに全力で取り組んでいきます。
次お目にかかるタイミングまでに、もっと笑顔であふれるわたしを準備します。
流れているニュースはとても楽観視できるものではありません。毎日刻々と状況は良い方へ悪い方へと激しく変化していきますが、どうか皆さんのまわりに笑顔があふれていきますように。
本当にありがとうございました!!
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