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サウナとは、「合法的なドラッグ」だ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【4月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:大杉祐輔(ライティング・ゼミ特講)
 
 
皆さんは、サウナに入るだろうか? 私は入る。週に一回は必ず入る。疲れた体が、サウナを欲しているのがわかる。ほぼジャンキーである。
しかし、そんな習慣が身についたのも、ごく最近の話である。それまでの私は、「サウナなんておっさんを蒸すための道具」くらいにしか考えていなかった。あんな暑いところに入ってわざわざ苦しい時間を過ごすなんて、苦行以外の何物でもない。何が楽しくて、人生の貴重な時間をそんなことに使うのか? そんなアンチ・サウナ派だった私を改心させたのが、ある一冊の本との出会いだった。
「『なぜサウナに入るのですか?』 と聞く人がいるけれど、逆に『なぜサウナに入らないのですか?』と聞きたくなる。『あなたは、サウナで『ととのう』必要もないくらい、恵まれた環境で生きているのですか?』」
そんな挑発的な書き出しから始まるのが、「人生を変えるサウナ術 なぜ、一流の経営者はサウナに行くのか?」(本田直之・松尾大 KADOKAWA)だ。なんでも、いま一流の経営者の間ではサウナが流行っており、日本には空前のサウナブームが訪れているらしい。確かにテレビや雑誌でもサウナをもてはやす声が散見されるような気がするが、そこまで言うほどのものなのか、サウナというやつは。私の中に無数のクエスチョンマークが浮かぶ。
まあ私には関係のない世界か……、と閉じようとしたその瞬間、作者の名前に目玉が飛び出た。そう、あの本田直之氏である。レバレッジ勉強法やレバレッジ時間術といった数々の名著には、私も中学時代からお世話になってきた。彼が言うなら、まあ一度は試してみるか……。そんな思いで、本を手に取りレジに向かった。今思えば、これが私の「サウナ道」の始まりだった。
この本には昨今のサウナブームの経緯や日本各地のおすすめサウナ情報など、サウナの魅力をこれでもかと書いているのだが、肝心の「サウナの入り方」についてはわずか1章分しか割かれていない。それでいいのか? と半信半疑で読み進めると、本質的なサウナの使用法は以下の3点のみだ。「サウナ・水風呂・外気浴」。これである。この3つのサイクルを2~3回繰り返すだけで、あなたは至福の境地に達するだろう……。これがこの本で紹介されている、サウナ使用法の神髄である。
正直な話、うさん臭いと思った。これだけでそんなに気持ちのよい体験ができるなんて、はなはだ疑問である。しかもその気持ちよさときたら、「両手に美女をはべらせているのと同等か、それ以上のレベル」だという。ほんとに? 身体を温めて冷やして外気にあたるだけで、そんな麻薬レベルのガンギマリ状態に入れるの? またしても、私の中に無数のクエスチョンマーク。まあものはためしということで、まずは入ってみようじゃないか。私は近所の温泉施設に向かい、書かれた通りのサウナメソッドを実践してみることにした。
まずはいつも通りシャワーで身体を洗い、温泉に入る。真のサウナ好きはシャワー後すぐにサウナに直行するらしいが、私はやっぱり温泉も楽しみたいという欲張り派である。温泉でさっぱりしたら、タオルで軽く体をふき、いざサウナへ。
しかし、重たいドアを押し開けた瞬間から、軽い後悔の念が頭をよぎる。とにかく熱い。熱気が身体を包み、呼吸もままならず、目も開けられない。部屋の中央部のストーブが悶々とした熱気を発し、おじさんたちが機械的なニュース番組を無言で聞いている。こんな空間で、ひたすらに耐えるなんてやっぱり苦行じゃないか……。私はもう出てしまおうかと考えたが、本田氏の言葉を信じてしばし耐えた、しばらくすると、汗が身体中から吹き出し、ダラダラと流れる。ここで、持参したスポーツドリンクをひとくち。熱い体に、冷たい液体が胃を滑り落ちるのがわかる。さらに発刊が促されている感じだ。
さすがにもう限界……! という瞬間が来たら、潔くサウナ室から出て水風呂へ。この時点でも、私の後悔の念が募る。激しい体温の変化で、風邪をひいてしまうのでは? そんな恐怖を押し殺し、まずはかけ湯で汗を流して、水風呂へイン。めちゃくちゃ冷たい。どんより曇った日の小学校のプールぐらい冷たい。もう嫌だ……!! と思ったが、しばらくするとなぜだか冷たさをかんじなくなる瞬間がやってくる。あ、これはなんだか気持ちいかも? そう、これがサウナ愛好家たちの間でいう「羽衣」状態だ。身体の熱が皮膚のまわりの水をいい感じに温め、バリアのような状態になる。これは確かに気持ちがいいかも……? そんな思いを胸に、水風呂を出て今度は露天風呂へ向かう。ラストを飾る「外気浴」である。
水風呂で適度に冷やされた裸体を、12月の冷たい風が包み込む。これだけ聞くとただ辛いだけのように聞こえるが、ところがどっこい、めちゃくちゃ気持ちいい。冷たい風が肌を駆け抜け、敏感になった肌が脳に快楽をビンビン伝える。まさに「地球に愛撫されている」感覚。ほとばしる快感に、脳がなんともいえない状態になる。スポーツのあとの覚醒状態というか、寝起きのぼんやりしたリラックス状態というか、その間のような感覚なのである。そう、これがいわゆる「ととのう」というやつだ。サウナを通して得られる究極のリラックス状態。サウナ愛好家たちは、これを目指して足しげくサウナに通うのである。私はこの瞬間、サウナのとりこになった。
しかしサウナの効果はこれだけでは終わらない。むしろ、サウナに入った後の身体のポテンシャルが上がることが、とても魅力的なのだ。スポーツのあとのように頭の中の雑念が消え、思考がポジティブになる。身体感覚が強化されたからかごはんがいつもより美味しく感じ、身体もぽかぽかですぐに眠りに入れる。仕事における集中力が上がり、ストレスなくものごとに取り組める。これがサウナの持つ破壊力であり、人生のすべてをいい方向に持っていってくれるのだ。
サウナは人生を好転させてくれる、合法的なドラッグである。「ととのう」悦びを一度知ってしまうと、もう抜けられない。ストレス社会を生きるあなたにこそ、合法的トビ方を進めたい。
 
 
 
 
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2020-04-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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