メディアグランプリ

心を奮い立たせるのは、アイドルの彼への嫉妬心


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:ゆりのはるか(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
かれこれ7年、ずっと好きな人がいる。
高校2年生の時から、社会人2年目に突入した今日この日まで。
 
好きで、好きで、好きで。
負けたくなくて、負けたくなくて、負けたくなくて。
好きというまっすぐな気持ちと強い嫉妬心の狭間で、わたしの感情を揺さぶり続ける人がいる。
 
その人は、大阪の劇場でCDデビューを夢見て舞台に立ち続けている、とあるアイドルだ。
 
アイドルを応援している人はこの世にごまんといるし、今さらわざわざ書くようなことではない、と思われるかもしれない。SNSを眺めていれば、好きなアイドルのライブへ行くことを楽しみに、毎日頑張って勉強したり、働いたりしている人が大勢いることはすぐにわかる。
 
でも、わたしはただ「楽しい!」「かっこいい!」「大好き!」という感情だけで、好きなアイドルのライブを観ることができないのだ。ライブを観ている最中、いつも「負けたくない」という気持ちがつきまとってくる。
 
ああ、なんでこの人はこんなにキラキラしているんだろう! なんでわたしはこんなにちっぽけなんだろう! と思い始めると、もうだめだ。
 
大好きだけど、悔しい。大好きなのに、負けたくない。アイドルでもないわたしが、いったい何を比べているのか。ばかみたいだ。
そう思いながらも、わたしはアイドルの彼と自分を比べては、長らく何も成長していない自分に絶望してしまう。
 
小さい頃からわたしは、目立つことが好きだった。キッズモデルをしていたこともあったし、新聞の小学生レポーターとか、子ども書評委員とか、表舞台に立てることなら何でもやった。それでも、いつも一番にはなれなかった。わたしよりポージングが上手い人も、わたしより文章を書くのが上手い人も、溢れるほどいた。最終的に「すごいね」と称賛されるのは別の人だった。
 
結局わたしは、それらのすべてを2,3年で辞めた。中途半端にしかできなかったのは、人から選ばれないことが辛かったからだ。わたしは自分に甘かった。
 
はじめて彼を見たとき、不器用で一番手になれないところが自分にそっくりだと思った。アイドル研修生だった彼は、劇場でライブに出演するのが主な仕事。そこまで飛び抜けて人気というわけでもなく、どちらかというと一般人に近い存在だった。
 
彼は本当に不器用で、あまり積極的に自分をアピールすることもなく、いつも端っこでニコニコ笑顔を振りまいていた。そんな彼の姿を見て親近感を感じ、なんとなく好きになった。
 
でも、それから7年経ったいま、彼はとあるアイドルグループのセンターを務めている。
 
いつのまにか彼は、数々の映画やドラマ、CMに出演するまでの存在になっていた。所属しているグループのなかで、今では一番人気のメンバーだ。
 
こんな未来があるなんて、思ってもみなかった。
 
わたしがくすぶっている間に、彼は瞬く間に成長して羽ばたいて行ってしまった。もう不器用な彼はどこにもいない。ずっと立ち続けている大阪の劇場からも、そろそろ卒業だ。近い将来、念願のCDデビューも叶うのではないかと言われている。
 
それに比べて、この7年間のわたしといえばなんだ。大学ではやりたいことがわからず、なんとなくサークルに入ってみたものの、中途半端に辞めた。社会人になってからも、好きな仕事にはつけたが、たいした結果も出せずに目の前のことに追われている。
 
端っこで笑っているだけだった彼は、まるでずっとそこにいたかのように今では堂々とグループの真ん中に立っている。それなのに、なんでわたしは。
 
そう思うと、悔しくてたまらなかった。
 
彼の姿は、なりたかった自分の姿だった。
映画やドラマ、CMのオファーが来るようになった彼は、確実に多くの人から選ばれていた。わたしも選ばれる人になりたかった。一番になりたかった。アイドルとして輝いていく彼の姿を見るたびに、情けない自分と比べて泣きたくなった。
 
ただ、彼を見ることがどんなに苦しくなっても、わたしはライブに行くことを辞めなかった。それは、彼のことが大好きだから、という理由ももちろんあるが、それ以上に強かったのは別の感情だった。
 
彼を見に行くことで、わたしは自分を奮い立たせていたのだ。
歌って踊っている彼の姿を見ると、「負けたくない」という気持ちが溢れると同時に、「頑張ろう」という強いエネルギーが湧いてくる。
 
わたしはまだ、わたしの夢を諦めていなかった。選ばれる人になりたい。わたしが一番いい、わたしと仕事がしたい、と思ってもらえる人になりたい。この期に及んでもまだずっとそう思っていた。
 
アイドルの彼への嫉妬心は、わたしのエンジンだ。
心が折れそうになった時は、彼のライブに行って気を引き締め、夢を追うことの覚悟を固める。彼に対して「悔しい」と思うことが、わたしにとっては毎日頑張れる理由の一つになっている。
 
わたしが彼を応援し続けるのは、それが自分のためにもなるとわかっているからだ。彼のことは大好きだが、それだけではない。なりたい自分を目指すためには、彼の存在が必要だった。だからわたしは今日も彼のファンでいられる。
 
嫉妬心がある限り、夢は終わらない。いつか彼みたいに選ばれる人になりたい、と今日も私は決意する。
 
 
 
 
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2020-04-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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