メディアグランプリ

天使のはしごから、また美術館へ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:渡辺 彩加(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
私には、ずっと、ずっと不思議でたまらなかったことがある。それは、
みんな、美術館とか、博物館で何をどうやってみてるの?
どこに着目して、どこに感心しているの?
ということだ。
私はどこに着目をして、どこに感心したらいいのか、全くわからなかった。
一体、どこをみたらいいんだろう。
 
両親は美術館や博物館が好きで、よく連れて行かれていた私は、いつも困っていた。
 
何をみたらいいのかわからない。つまらない。
 
困った私が、その状況を打破するためにしたことがある。
まず一つ目は、「音声ガイド」を借りることだった。
場所によって有料と無料、それぞれあるが、企画をしている美術館など、いろんな場所で音声ガイドの貸し出しは行われている。イヤホンを耳につけて、壁に書いてある番号を入力すると、解説が始まる。作者のこと、その作品を作った時の社会情勢、塗料のこと、などなど。耳からの情報と、目からの情報で、なんだか自分が知識人になった気分である。
 
へぇ、そうなんだ、ほー、そんな背景があるんだ
 
心の中で相槌を打ちながら、進んでいく。しかし、残念なことに、私は、美術館から出たら、その得たはずの知識を全て忘れてしまった。
 
あれ、どんな絵があったっけ? なんか、こんな社会情勢があって、あれ、忘れた……
 
その場では、すごくたくさんの知識を手に入れたつもりになっていたが、イヤホンを外すと、たちまち忘れてしまう。どうやら「音声ガイド」、私にはあってなかったようだ。
 
次に試したのは、全部絵を見るのを理解するのは諦めること。さっと一通り絵を見て、気に入った絵の前に戻って、それをじっくり見る方法だ。進行方向が決められていなかったり、進行方向を逆にすすむのが禁止されていなかったりするところでは、前の絵の前に戻ることができる。
とりあえず、一つ一つ見ていく。
 
あぁ、この雲の感じ好きだな。この絵からは何も感じないな。
 
一通り観た後で、お、と思った絵の前に戻る。好きだと思わなくてもいい。何か引っかかる、なんとなくいい、そんな小さな心の動きでもいいから、戻ることにしていた。
そんなことを繰り返していくうちに、私は人物が描かれている絵より、自然や風景が絵描かれている絵の方がより心が動くことがわかってきた。
 
中でも、空の面積が多い絵ほど、心が動く。
 
「雲の隙間から、光がさしてるのをさ、天使のはしごっていうらしいよ! 」
ある時、友達と美術館に言った時、友達が言った。
 
へえ、誰がつけた名前なんだろう。少なくとも、天使ってことは、日本人が考えた名前じゃないだろうな。こんな分厚い雲から光が差し込む絵、結構見たことあるなぁ。ヨーロッパとか、そういう地域で見れる景色なんじゃない?実際、見たことないし。
 
と思って聞いていた。
 
年齢があがるにつれて、だんだんと生活が忙しくなってくる。なかなか、美術館や博物館に行く時間が取れなくなってきて、絵をゆったりと眺める心の余裕もなくなってきた。毎日、しなければならないことに追われ、バタバタと過ぎていく。そんな中、朝、バスを降りて、目を見張った。圧倒された。言葉が出なかった。
 
ええ、これが天使のはしご? すごい、すごすぎる。
 
数秒間、見つめていた。人が通り過ぎていき、我に返った。カメラを構える。パシャ。
私の目の前にあったのは、とても大きな分厚い雲。そして、光が差している光景だった。心が動いたなんてもんじゃない。心が奪われた。神々しい、何かとてつもなくいいことが今から起こるような、そんな気持ちにかられた。
これはどこかで観た絵に似てる。こんな絵、見た気がする。いや、これは絵じゃない、現実なんだ。本当に天使のはしごってあったんだ。
 
そうか、描かれている風景って実在していたのか。描いた人は、どうしてその風景の絵を描こうと思ったんだろう、その人も風景を見て心が動いたんだろうか。カメラで撮ることができない時代、心に焼き付けて、それを思い出しながら描いたんだろうか。
 
天使のはしごに心を奪われた私は、描いた人の心の動きにも興味が出てくる。
 
きっと描いた人も、天使のはしごを見て、心奪われたはず。そうか、本当なら、このタイミングで「音声ガイド」を借りるのか。なんだか、順番が逆だったみたいだ。
 
自分で自分に笑いつつ、見つけた発見に嬉しくなって、胸が高鳴っていた。自分でも気づかないうちに、小走りで駆け出した。
 
今度は、風景の絵を描いた人の作品がある美術館に行こう。もし音声ガイドがあったら、借りてみよう。もしなかったら、気に入った絵を覚えておいて、帰ってから調べてみようかな。その人はどんな生活をしていて、どんな気持ちの時に絵を描いたんだろう。
 
また、美術館に行きたいと思った。
 
 
 
 
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2020-04-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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