メディアグランプリ

オタクになれなかった頃のこと

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:高橋 和江(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
私にははまっているものがたくさんある。そして、そのはまっているものを突き詰めてしまいがちである。いわゆるオタクだ。
 
私はオタクが大好きだ。様々な分野のオタクの人がいる。電車オタク、ジャニーズオタク、アニメオタク、ゲームオタク、フィギュアスケートオタク、K-POPオタクなど種類を列挙すればきりがない。重箱の隅をつつくような細かいことにはまっているオタクもいれば、メジャーなものにどっぷりはまっているオタクもいる。
オタクはいつも生き生きとしている。オタクの人と話すことが私は大好きだ。人が何かにはまっている姿を見ることは本当に元気をもらえる。
類は友を呼ぶということわざ通りで、私のまわりにはオタクがたくさんいる。
小中高の友人もそうだし、今までお付き合いをしてきた人、今の夫もそうだ。最近仲良くなった人もみんなオタクだ。みんな何かにはまっていて、生き生きとしている。
 
私自身もたくさんのことにはまっている。フィギュアスケート、プロ野球、高校野球、箱根駅伝、アニメ、ゲーム、漫画と人よりも語れる分野は広いと思っている。
 
そんな私だが、何のオタクにもなれない時期があった。
 
自分が何かにはまれなくなっていたことに気づいたのは、それまで大好きだったドラマを見ることができなくなったときだった。疲れてしまうと感じたのだ。家に帰ってまで、何かに心を振り回されることを。
 
気が付くとドラマだけではなく、小説も漫画もアニメも見ることができなくなっていた。
今まで読んでいて結末を知っているものはかろうじて読むこと・見ることができたが、それでも感情の起伏の激しい場面は飛ばしてしまうことが多かった。スポーツも緊迫した場面はチャンネルを変えてしまう。映画を見に行くこともできなくなっていた。新しいものを取り入れることが全くできなくなっていた。何かにどきどきしたり、ハラハラしたりすることを拒んでしまっていた。
 
原因は仕事だったのだと思う。
 
私の仕事は医療職だ。日々がかなりドラマチックな仕事ではある。命を扱うということは、それなりにプレッシャーがかかるものだ。仕事はとてもやりがいがある。患者さんにお礼を言われるのは誇りだった。自分の仕事を成功させるために、仕事に集中するために、いつの間にか無意識のうちに願掛けのように自分の楽しみを制限していたのかもしれない。何かを楽しみに家に帰るということはあまりない、そんな状態は数年続いた。
 
自分はストレスをためない方だと思っていた。そして体もとても丈夫な方だと思っていた。
実際、体調を大きく崩して入院したりしたわけではない。しかし、体重の増減にもかなり波が生じ、便秘になり、胃痛を生じるという理由でコーヒーも紅茶も飲めなくなっていた。めまいで1日起きることができないという日もあった。
 
そんな中、転機は偶然に訪れた。研究という名目で少しの間だけ、仕事から離れることになったのだ。この研究がまた、自分には全く向くものではなかった。もともとオタク気質であるから、研究自体は嫌いではなかったのだが、自分のためというより、所属する部署のために行うということが向かなかった。
 
ここで私は私生活を充実させるという行為に走り始めた。明らかに感じ始めたストレスを発散させるべく、フィギュアスケート、少女漫画など自分の昔好きだったものからまず見始めた。見たいスポーツ番組も徹底して見た。時間には比較的余裕があったので、足を運べる試合には足を運んでみた。欲しいと思った雑誌や本は躊躇なく買うようにした。
 
止まっていた自分の中のオタクな時間が明らかに動き出した。
 
時代はオタクにとって素晴らしい進化を遂げていた。アニメ・漫画を見たいと思ったら、様々なアプリを駆使すればすぐに見ることができる。スポーツ・ドラマもそうだ。私は二次創作の分野も愛しているが、好きな絵師さんの画像はTwitterなどのSNSでたくさん見ることができた。スマホのゲームも素晴らしいものがたくさんできていた。
 
「ああ、私はこういうものを楽しんで生きていきたかったんだ」
そう、心から思った。そして、幅広い分野のオタクになっていった。
 
ほどなくして研究生活も無事に終了し、もとの仕事に戻った。正直不安だった。今まで願掛けのように自分で制限していたことを開放した状態で仕事に戻れるのかと。
 
実際は杞憂だった。むしろ以前より楽しく働くことができている。周囲には何かしら同じ趣味の人がいて情報を共有できた。たまの休みには遠征に出かけ、新しい友人ができたりした。
患者さんにも私と話していると元気になるといわれることが多くなった。家に帰るのを楽しみに日中の仕事に集中できるようになった。仕事の効率も良くなったように感じる。
 
オタクになれなかったころの必死な自分が無駄だったとは思わない。その時間があったからこそと思うこともできる。でも、もし、自分の好きなことを仕事や勉強のために制限しようとする人がいるならば、全力で阻止してあげたい。好きなことはどんなときでも自分に力を与えてくれるよと声を大にして言いたい。
 
 
 
 
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2020-04-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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