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映画「感染列島」は12年後の予言だった


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記事:川瀬健二(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「この映画、食事中はやめて!」
妻の声を聞いて、僕は慌ててチャンネルを変えた。
 
緊急事態宣言が発令されて最初の週末、アマゾンプライムは今までになく盛況だっただろう。何度も繰り返しお勧めされる映画「感染列島」を思わず観てしまったのは、僕だけではなかったかもしれない。
 
物語の始まりは、東京都いずみの市立病院に真鍋という男性患者がやってくる。妻夫木聡が演じる医者の松岡が診察にあたるが、風邪と診断してその日は帰してしまう。しかし容体が悪化した真鍋が、翌日に再び運び込まれてくる。目や鼻から出血した真鍋の応対をした救急救命医が、顔面に吐血を浴びてしまう。その映像があまりにリアルで気味が悪かったために、妻が思わず叫んだのだった。
 
翌日の夜、僕は一人でこの映画を再び見始めた。吐血を顔面に浴びた救急救命医は、その後ウィルスに感染して亡くなる。「え!? ちょい役?」と僕は思わずつぶやいた。救急救命医を演じるのは日本を代表する名優、佐藤浩市だが、なんと開始わずか15分ほどで死んでしまうという衝撃的な幕開けだった。
 
病院での院内感染が広がる一方で、日本各地でも吐血する人が増え、新型ウィルスはものすごいスピードで拡散していく。真鍋が亡くなってから3週間後に感染者数4000人、死亡者数2000人となり、政府は非常事態宣言を出す。市民はあっという間にパニックに陥り、スーパーでは買い占めが横行する。やがて医療崩壊が始まり、人工呼吸器が不足していく。
 
この映画では、ウィルスが世界各国へ拡散していくわけではない。どうして日本国内に封じ込めることができたのかという疑問が生じるが、誰も為す術がないまま最後は感染列島の感染者は4000万人、死者1000万人まで増えてしまう。
 
「いや、怖すぎるだろ……」
危機的な状況の中で、恋人や家族がメールをする携帯はスマホではなくガラケーだ。そう、この映画が製作されたのは2008年なのだ。もし僕が昨年この映画を観ていたら、単なるパニック映画としか思わなかっただろう。しかし今となっては、この新型コロナウィルスを12年前に予言していたのかと思うほど、リアルに描かれていることが怖かった。
 
この結末はぜひ映画を観てほしいのだが、日本中で苦しむ人たちの様子が描かれているわけではない。舞台となるいずみの市立病院で新型ウィルスと闘う松岡をはじめとする医療従事者が繰り広げる物語だ。絶望的な状況の中でも決してあきらめず最後まで立ち向かう姿が、観る人の心を打つ。
 
新型コロナウィルスは映画の世界ではなく、今まさに起きている現実だ。一つのウィルスでここまで世界中が揺らぐということを、十万人を超える多くの尊い命を失われていることを、僕らは目の当たりにしている。今まで経験したことのない緊急事態に、不安と恐怖が世界中を駆け巡っている。
 
外出自粛はいつまで続くのか?
ワクチンはいつ開発されるのか?
世界中に広がる感染はどのように収束するのか?
残念ながら、今は誰にもわからない。
 
休校、そして時短出勤、時差出勤やリモートワーク。
安倍総理は、職場への出勤者を最低7割減らせと言う。
残念ながら今の僕らにできることは、避けることだけなんだ。
大切な人たちを守る術は、それしかない。
 
一方で、報道ばかり見ているとクラスター感染した病院が後を絶たない。だからちょっとした痛みや不調でも、病院に行くことのほうが感染のリスクがあるとすら思ってしまう。正直、今は病院に行くことすら避けたいと思う自分がいる。
 
事実、そうかもしれない。でも今こうしている間も、治す薬がないウィルスに立ち向かっている医療従事者の方々がいる。怖くても、辛くても、泣きたくても、逃げずに患者さんと向き合っている方々のことを、僕らは決して忘れてはいけない。彼らなくして、僕らの未来はないのだから。
 
その事を改めて気付かされた映画だった。
 
 
 
 
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2020-04-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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