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メディアグランプリ

なにも自分で決められなかった私へ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:渡辺 彩加(ライティング・ゼミ通信限定コース)

 
 

「ええ、どうしよう、どうしたらいい? どっちにしたらいい?」
これは、私の口癖だった。自分一人で何も決められない。どれが正しいかわからない。
大学に進学し、一人暮らしを始めた後でも、何も自分で決められず、実家の両親によく電話やメールをしていた。
 

「バイト先ってここでいいと思う?」
「運動靴がいるんだけど、送った写真のどっちがいいと思う?」
 

細かいことから、大きなことまで、全部全部聞いていた。
その気持ちの根底にあるのは、失敗するのが怖い、周りの人に見放されるのが怖い、これで正しいのかわからない、といった負の感情だった。人生は、一歩踏み出せば、穴だらけで、その穴にはまったが最後、周りの人からバカにされると思っていた。
 

だから、踏み外さないように、慎重に。慎重に。
正しい道を教えてもらって、進もう。
 

自分で考えることをせず、助言を聞き踏み外さないように、間違えたら周りのせいにして、踏み外したとしても、自分のせいじゃないと言い聞かせて過ごしていた。それでなんとかなっていた。
 
一方で、自分で何も選べない自分がコンプレックスになっていた。一緒にショッピングに行っても、自分でなんでも判断して、決めていく友達のことが、とても眩しく見えていた。
 
なんで、そんなすぐ決められるの?
どうやって選んでるの?
なんで、自分ってこうなんだろう……。
 

どんどん自信を失って、何が正しいのかわからなくなる。両親に電話する回数が増えていった。
 
何をしたらいいのか、わからないのは、買い物の時だけではなかった。部屋の中にあるものも判断できない。
これは捨てていいの? でもまだ使えるよね、これってどうしたらいいんだろう……。
そんなことを繰り返していくうちに、部屋のものは増え、片付けすらできず、どんどん部屋の中は汚くなっていた。
 

なんとかしなきゃ、なんとかしなきゃ。
焦るばかりで、どうしたらいいか何も思い浮かばず、苦しい気持ちだけが膨らんでいった。
 

ある日、友達と一緒に花火大会に行くことになった。花火が上がるまで、近くのショッピングセンターでみんなで買い物をしよう、ということになり、集まった。
 
「なんか、いつも変な服着てるよね、選んであげるよ!」
と言われ、一緒にきた友達全員でなんと私の服を選んでくれることになった。
「私、デブだから、これ着れないって、似合わないよ」
「いいから着てみな!」
友達たちに圧倒され、試着室に大人しく入った。自分では選ばないショートパンツやノースリーブの服を試着した。
 

あれ、着れたじゃん、着れるじゃん。
 
着れた自分にびっくりしつつ、試着室のドアを開けた。
「ええー! いいじゃん! それにしなよってか、もうそれ着てきなよ! そんないうほど、デブじゃないよ、大丈夫!」
またもや、友達に圧倒され、服を購入し、着替えて花火大会に行った。
 

えええ、ノースリーブ着てるよ、私。
えええ、ショートパンツ履いてる、私。
 

自分で自分の服装に驚きつつ、でもどこか心がふわふわしているのも感じつつ、花火を見ていた。
 
思い切って、友達に聞いてみた。
「ね、ねぇ、どうやって服とか選んでるの?」
「は? どういう意味」
すぐに返された。
 

「いや、迷ったりしないの? どっちがいいかなぁとか」
「あんまりない。自分が好きなの選んだらいいじゃん。わかんなかったら、試着したらいいんだし」
さっぱりしている友達である。でもでも。
「試着って怖くない? 店員さんとかにどう思われてるんだろ、とか考えない? あと、自分が、どれが好きってどうやってわかるの?」
「え、考えないけど。向こうもなんとも思ってないでしょ。 は? 好きなの選べばいいんだって。考えすぎ」
 

私は考えすぎなのかなぁ、いや、それとも聞いた友達がすごい決断早い部類の人で、参考にならないとか?
 
「あのね、いうけどさ」
友達が言った。
「あなたが悩んでいることなんて、小さいことだし、私にとっては、どうでもいいの。あと、夜悩むのは良くないよ、悩むなら、朝!」
 

寄り添ってくれるかと思いきや、バッサリ切り捨てられた!
でも全然嫌みたらしくなく、さっぱりと切り捨てられた。こんな風に切り捨てられたの、初めてで戸惑う。
 

「好きなもの着たらいいし、好きなもの食べたらいいじゃん。悩みすぎ。誰もそんなに考えてないよ〜」
友達は花火を見たまま笑って言った。
 

なるほど、誰も気にしてないのか。でも確かに。自分がどう見られるかは凄く気にするけど、他の人が何着てるか、そこまで気にしてないかも。かわいいとか、似合ってるとかは思うけど。あ、そっか。
 
一気に、肩に入っていた力がなくなった気がした。心を囲っていた壁が取っ払われて、風通しが良くなった感じ。
とはいえ、すぐには自分が何が好きか、わかるわけではなかった。
 

「どっちがいいか、自分で決めな!」
という友達のもと、自分で決める練習を繰り返した。買い物に行き、何が好きかを考える。迷っても、自分で決める。買い物一つに4時間かかる時もあった。でも、根気強く、練習に友達は付き合ってくれた。
「何時間かかってもいいから。自分で決めなよ」
悩んでいる間は悩みすぎて汗ダラダラである。それでも、自分とひたすら向き合った。練習を続けていくうちに、友達がいなくても、一人で選べるようになっていった。自分の中で、ぼんやりとした「好き」が見えてきた。
 

「好き」の輪郭がわかってきたあと、最初に勤めたバイトを辞めて、別のバイトを始めた。部屋の中にある、私が好きじゃない服、着ない服を全部売った。読まない本を整理した。いらないものを全部出した。一歩踏み外したら、落とし穴だらけと思っていた考えも、いらないものと一緒に外に出した。
 
花火大会から6年以上経った今でも、まだ正直悩むときはある。でも、4時間悩むことは、もうない。買い物に付き合ってくれた友達に大感謝だ。口癖も、気づいたら変わっていた。
「ようし、決めた!こっちでいこう!」
 
 
 
 

***
 
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2020-04-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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