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メディアグランプリ

三日坊主の功名


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:渡辺悠香(ライティング・ゼミ通信限定コース)

 
 

「あなた、何かを最後まで続けたことがないでしょう」
赤の他人に言われて傷ついた一言トップ5に、しばらくランクインしていた言葉である。

 

私は飽きっぽい。
イラストを描けば、顔だけで飽きる。
段ボールや紙の工作は、いつも未完成の姿でゴミになる。
ピアノを弾けば、ミスが増えたところで練習終わり。
ショッピングモールに行けば、3店舗目くらいで帰りたくなる。
乾杯のビールが進まず、2杯目が頼めない。
部屋には常にやりかけの何かが、それなりの面積を占めている。

 

幼い頃は年末の大掃除でさえ自分の部屋の半分を掃除したら飽きていた。
掃除に飽きた後にしていたことは、綺麗になった側の机で取り組む絵本作り。
だがこの絵本も4~5ページも書けば飽きてしまい、最後まで書けた試しはない。
物心ついてからは漫画家を夢見て最低限の道具を集めたが、人物の描写は顔だけで飽き、ストーリーも書き起こしている途中で飽き、作品を仕上げることと夢を諦めた。

 

何かを諦めたり妥協したりしながら、なんとか社会人になった。
ようやく仕事にも慣れ余暇時間ができた私は、久々に何かに挑戦してみようと考えた。
購入したのは、ギター。
大好きなロック歌手のように、かき鳴らしてみたかった。

 

何かに挑戦する機会が久しかったので忘れていたが、私はすぐ飽きる人間である。

 

まず、運指がなかなか覚えられず、ドレミファソラシドすらまともに鳴らせない。
もうやめたくなってくる。
でもまだ始めたばかりだし……と、1度は思い留まる。
とにかく何かしらの曲を弾けるようになれば、逆説的に音階やコードが覚えられるのではないか?
新しい作戦を思いつくとわくわくしてくる。
早速好きな曲の楽譜を探す。
ギターの弦は6本で、「ジャーン」とコード(和音)を鳴らすには6本それぞれの正しい位置を押さえる必要がある。
コード表を見ながら弦を押さえてみる。音が鳴る。
でも、すっきりしない。
一体何の音を押さえているのか全くわからないのだ。
違うコードも試してみる。鳴っている音が正しいのかもわからない。
指が届かなくて、手首が変な角度になる。
弦が指に食い込む。痛い。
よくわからない。難しい。全然弾ける気がしない。
向いていないのかも……。
 

その後数回挑戦してみたが、楽しみを知る前に練習をやめた。
部屋の片隅に立てかけられたギターは、痛々しいインテリアと化した。
 

1年後。
今度はベースを手にすることになる。
思い描くものだけは飽きもせず憧れのロックスター。
和音が難しいなら単音で楽しめる楽器にしたらいいじゃないか!
という、少々不純な動機である。
コードの混乱が減った分、私にとっては馴染みやすい楽器であった。
2~3回の練習で、楽譜を見ながら音を出すことができるようになってきた。
こうなってくると、楽しい。
しかしバンドを組むとか弾きたい曲があるとかそういう目標がないため、ある程度音を追えるようになると飽きがくる。
プロの演奏を見ている方がよっぽど楽しい。
楽器に触れる時間が目に見えて減っていった。
非常に順調に、ベースもインテリアと化した。
 

悲しいことに、他人に指摘されて少しへこんだくらいでは根本的な部分は変わらないのである。
私は飽きっぽい。何を始めても長続きしない。
 

けれど今、冒頭のあの一言はランキング圏外に去っている。
「飽きっぽいですが、それが何か?」と開き直ることができるようになったからだ。
 

飽きてしまった2つの楽器の話には、続きがある。
楽器ケースが埃を被り始めた頃、不意に余暇時間が多くとれる機会ができた。
新型コロナの感染拡大による、大規模な外出自粛期間である。
ライブ活動ができなくなったアーティストが、SNSを中心に音楽を発信してくれる。特に弾き語り動画を見る機会が増えた。
再び「こんな風にかっこよくギターを弾いてみたいな……」という思いが生まれる。
1度挑戦した経験があったからだろうか。
プロの弾き語り動画を見る時にどのコードを押さえているのか、運指をどうしているのかに意識を向けるようになっていた。
意外と指の派手な移動が少ない、こんな動かし方もあるのか……。
一人試行錯誤していた時には気付かなかったことに、少しずつ気付きだす。
試してみたい。
 

久しぶりにギターを抱えてみると、コンパクトなサイズに少し驚く。
ギターが少し可愛く見えてくる。
何度も見たプロの運指を、見様見真似でそれとなくやってみる。
以前よりもすんなりコードを弾くことができた。
1度ブームが去ってからなんの練習もしていないのに、である。
相変わらず何の音かよくわからないけれど、前よりは弾けるのでちょっと楽しい。
もう一度練習を始めた。
 

ギターを何度か練習していると、「ベースも好きなんだよな~」という曲に出会う。
明日はベースにしようかな、と考えて楽しい気分で練習を終える。
弦を押さえてヒリヒリ痛む指も、ちょっと嬉しい。
 

1度経験があったからこそ、プロの動画がエンターテインメントにも教材にもなった。
楽器や道具が手元にあって、もう一度試したいときにすぐ再挑戦できた。
初めて挑戦する時よりも、圧倒的にハードルが低い。
これは怪我の功名ならぬ、三日坊主の功名そのものだと思う。
 

飽き性でない人に比べたら何かを成し遂げた経験は少ないかもしれない。
けれど、一度楽しさを知った好きなことは、放っておいてもどうせまたしたくなる。
したいと思ったその時にまたできたら、それはそれで贅沢ではないだろうか。
もしかしたら、2度目、3度目に挑戦した時は深みにハマって極めてしまう可能性だってゼロではないだろう。
 

飽きっぽい性格も、きっとそんなに悪くない。
今はそんな風に思っている。
 
 
 
 

***
 
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2020-04-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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