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すいてるからこそ多い「アレ」濃くてお得な「すいてる、宮崎」


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:半崎いお(ライティング・ゼミ通信限定コース)

 
 

よく、きかれる。
「え? 東京の人なの? なんでまた宮崎に? 結婚?」
ちがいます。結婚したのははこっちにきて5年くらいして、こちらに永住を決めてからです。
 

そして、続く言葉は大抵こうだ。
「なんにもなくてつまらないでしょう……」
そんなことはありません。なんでもあってめちゃくちゃ楽しいです。
一体何がないと言っているんです?
ほんとうによくきかれるけれど、わたしにはそれが不思議で仕方ありません。
 

田舎には、なんでもあります。むしろ、東京にはないものがたくさんありました。ひとつひとつ説明するのも億劫なほどに、なにもかもがたくさんあります。なぜかって言えば簡単。個人がとれる『“わけまえ”が多い』からです。

 

たとえば真夏の海水浴場。宮崎市街地から程近いところでも、いつでも好きなところにシートをひいて、存分に泳ぐことができます。あまり人が集まっておらずすいてますから! 景観の良い公園のベンチもいつもどこかはあいていますし、蛍の見れる川のほとりでながいこと恋人と語り合っても立ち聞きされる心配もなく、大きなマルシェであれもこれも買ってその辺の空席に座ってゆっくり買い食いと戦利品品評会をするのも当たり前です。だって混んでませんから! 最も人が集まると思われる中心市街地での祭りでも無料で使用できるテーブルと椅子がそこここに設置され、少し待てば大抵は空席が見つかります。美術館も人気の展示だとしても立ち止まるななどとも言われず、好きなものの真ん前でゆっくり鑑賞することができますし、花見に行っても座るところすらなくてさまようなこともありません。このように大抵のものを自分のペースで存分に、すきなだけ楽しむことができますので、他人の存在に邪魔をされない自分らしい濃い体験を得ることができるのです。

 

花火大会などではさすがに市街地では多少は混雑しますが、街から少し離れた町の大会ではそんなこともなく、余裕を持ってその辺に座り込み、目線よりもかなり低い位置の河原から打ち上げられる花火を目の前で楽しむことができます。そのため、腹に響くような臨場感あふれるおとを浴びながらゆっくり楽しむのが当たり前。屋台もさして並びませんので、存分に食べられますし、冷たいビールもすぐそこです。1番混雑する年末年始のイオンモールでさえ、平日昼間の新宿駅構内よりもすいています。このように人が集まるようなイベントのどれもが、他人と触れ合わずに邪魔をされずに自由に移動できるような状況で開催されています。

 

なぜこんなことが可能なのか。
単純に、人間が多すぎないからです。
人が多すぎないから、ひとりひとりに回ってくる空間やリソースのわけまえが圧倒的に多くなるのです。人間の数が多すぎないが故の取り分の多さ。都会では絶対的にとれないような、余裕と自由、そして、豊かさががここにはあります。
 

お店の対応もしかり、です。この地のひとたちは、その豊かな資源を身に浴びて暮らしているからか、とてもおおらかで人間的です。農産物の直売所などのおばちゃんたちや飲み屋のおっちゃんたちも、よく喋りよく笑い、とても人間的な対応をしてくれます。野菜を買おうとすると「これ美味しかったよ!いい目してる!」とレジで語りかけられたり、居酒屋やレストランではつってきた本人(料理人)にその魚の来歴をまくしたてられたりすることもあります(笑) カフェの数も多くありますが、よっぽどの人気店でなければ並ぶようなことはほとんどありませんので充分に空間と時間を楽しむことができます。みな、ひとりひとりのさばくべき人数や個数が少ないためか、ひとりがひとりと関われる時間の取り分が大きくなるのです。

 

時間やリソースだけではありません。こちらで仕事をしていたりして地元の知り合いが増えると農産物等の「食べ切れないからもらって」や「見た目が悪いから安く出します」にも数多く出会います。産地には消費先では選別されてしまうが故に持ち込まれないようなものが余っていたりするのです。時間が余っている年寄りたちも無駄に広い庭がもったいないと畑を作って作物を配ることを趣味としている、なんてこともよく見かけます。

 

このように田舎では、貨幣的/物質的ではないけれども「住んで生活しているだけで手に入るもの」の量が膨大なのです。余談ですけど、この土地では、食べたミカンの種をその辺に投げとくとちゃんと生えてきて木になって実をつけるらしく、そこいら中に柑橘の木があります。それを初めて聞いたときほんと、この地に暮らしていたら飢えて死ぬことはありえないんじゃないかと思いました。

 

さて、あなたが「みやざき」ときいて思い浮かべるのはなんでしょう。高千穂峡、宮崎牛、地鶏、マンゴー、サーフィン、野球のキャンプ…口蹄疫や鳥インフルエンザなどという人もいるかもしれませんが、こうやって並べてみるとよくわかります。住んでいていうのもなんですが、「宮崎にしかないもの」「宮崎でなきゃ」って言う決め手が決定的に欠けてるんです。ヒット曲のないアーティストのようなものなんですけど、アーティストと違って引退してメンバー変えて復活! とかはありえないのがつらいところ。今更ヒット曲なんてなかなか作れるもんじゃありません。でも、そんなんなくても十分楽しいのにさ、と思っている一部の人の間に最近「すいてる。みやざき」というキャッチコピーが地味に流行りだしてきています。すいてる、みやざき。どこに行っても人がいすぎない。人がいすぎないからすいてる。すいているから取り分が自然と多くなる。取り分が多いから、思うような楽しみ方をすることができる……そんな豊かさがあるのだと、わたしはここにきて初めて知りました。こんなゆたかさを体感できる豊かなこの土地の豊かな時間をこの地で知ってみませんか? 訪れ、数日過ごすだけでも感じることができるはずです。いつもはほとんどもらえない、本当は当たり前の無形のわけまえ。いつもはほとんど邪魔されてしまう、本当はこうしたいあなたの思い。都会で疲れたあなたの飢えを、きっと癒してもらえるはずです。あなたも浴びにきてみませんか?

 

ここじゃなくてもいい、だからこそ普通。だからこそ、みえてくる欲しかったもの。
すいてる宮崎では、「あなたらしさ」こそがきっと、あなたを楽しませてくれることでしょう。
 
 
 
 

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2020-04-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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