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メディアグランプリ

レジ前アイスとブランド服


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:松尾 恵実(ライティング・ゼミ通信限定コース)

 
 

「それ、期間限定のですよね?」

 

ある日、職場の休憩室で、昼休憩をとっていた時のこと。
同僚にそう声をかけられた。

 

「そうなんですよ。見たらつい買ってしまって」

 

その日の仕事は想定外のアクシデント続きで疲れていたんだと思う。
昼食に食べるお弁当は家から持参していたが、何か甘いものが食べたくなった。

 

疲れた時には糖分をとるとちょっと幸せになれるはず。

 

そう思って売り場をふらふらと歩いていると、冷ケースの中に入っているアイスが目に入った。
日本人なら誰しも知っているだろう。
手のひらにちょこんと載るサイズ。
赤茶色の蓋がトレードマークで一個300円弱のあのアイスだ。
アイスの中では紛れもなく高級品。ブランド品ともいっていいアイスだ。
その定番商品であるバニラ味の隣に、見たことない味の商品が置いてあった。
期間限定品だろう。
気になる。

 

「でも、期間限定品かぁ」

 

期間限定の味のお菓子ってよく失敗するんだよね。
期待して買って、好きな味じゃなかったときのがっかり感は相当なもの。
疲れて癒しを求めている今、そのショックは耐えがたい。
好きな味じゃなかったら嫌だなぁ。
そして、アイスの中では間違いなく高級品なのだ。
好みの味ではなかった時のショックは、他のお菓子を失敗して買った時の比ではないだろう。

 

でも……。

 

このブランドだったらどんな味でも美味しい気がした。
いつもなら決まってバニラ味を選ぶ私だけど、先日初めて食べたグリーンティー味もかなり美味しかった。
それに期間限定なら、今買わないと、もう二度と食べられない気がする。
後悔するのも嫌だし、よし買ってしまえ!

そんな流れで買ってしまった期間限定味のアイス。
気になるお味の方がどうだったかというと。

 

「めちゃめちゃ美味しい……!」

 

「まじっすか? 後で買いに行こうかなぁ」

 

「これ食べたほうがいいですよ。栄養ドリンクみたいに、喝が入りますよ!」

 

興奮して同僚に力説することになるほど美味しかった。
その後、その同僚はその商品を大人買いして帰ったそうな。
 

わたしが高級アイスを食べるなんて、意外すぎる。
大きな成長だよなとさえ思う。
なぜなら、以前の私はいわゆる「ブランド」というものに、嫌悪感を抱いていたからだ。
 

自分らしくしなければならない。
人と違うことをしなければいけない。
みんなが選ぶブランドではなく、人と違うものを選ばないといけない。
 

そう言った類いの言葉を母はよく言った。
母は、オーダーメイドの洋服を作る職人の祖父母の家で育った。
その影響で、当時は売っていなかったようなデザインの服を祖父母の作ってもらったり、学生時代は自身で洋服を作っていたそうだ。個性的な服を着ることに強いこだわりを持っていた。
 

その母の影響を受け、私の中で、ブランド品とは、みんなが選ぶ無個性なもの。よくないものというイメージが固まっていた。
ブランドを敵のようなものだと考えていた。
 

その考えが変わったのは、社会人になって数年目。洋服選びのコンサルティングを受けたのが大きかった気がする。
当時、仕事がうまくいかなかったりと自信の持てなかった私は、自分を変えるために、思いつく限りのことを何でもやった。洋服のコンサルティングも、洋服を変えたら望む自分になれるかもしれないなんていう気持ちがどこかあって申し込んだのだった。
 

洋服を選んでもらっている最中、予算の範囲内で、自分の買ったこともないブランド服も試着した。
選んでもらわなかったらたぶん着ようと思わなかったブランド服に、心にどこかひっかかりを持ちつつも袖を通した。
 

結構いいかもしれない。
あんなに毛嫌いしていたブランド品だけど。
試着した自分が映る鏡を見て、ふとそう思った。
 

洋服はなりたい自分を実現させるために使う道具だと思う。
どんな風に装いたいのかがわからないと、買うものを選ぶことはできない。
そして、そのブランドのファンを裏切らないような商品を作り続けていく。
 

人と違うことをしなければならないじゃない。
そうだ。自分がどうなりたいか決めてから、選べばよかったんだ。
みんなが何を選んでたっていいんだ。自分が何を選びたいかを先に決めればよかったんだ。
そう決心した人にとって、このブランドは期待を裏切らないはず、という安心感大きい。
それは、信頼できる病院を受診することと似ている。
 

長引く風邪を早く治したい。そう思った時に私が受診する病院の先生はいつも的確な診療で、早く治る手助けをしてくれる。
困った時にここならば助けてくれるだろう。ここならば私の望みを叶えてくれるはず。そういう安心感がブランドにはある。
 

あの高級アイスも、私の期待を裏切らなかった。(期待を裏切るほど美味しかったけど!)

 

期待を裏切らずにありつづけるということがこんなに心強いことだとは思わなかった。
最近は特に実感している。
不要不急の外出ができないから、いつも当然のように行っていたお気に入りのカフェにもいけない。
いつもそこにあり続けてくれたありがたに、それがなくなってから気がつく。
 

いざという時に頼りになる病院も、そこで働くスタッフが、日々そこにいてくださるから、困った時に受診できるのだ。
有名ブランドだって、そこにあるのが当たり前のように感じるけど、多くの人の、血に滲むような努力があって、その地位が維持されているのだと思う。
でなければ、日々登場する、新しい商品やブランドに簡単に追い抜かれてしまうに違いないから。
 

予想をしないようなことが立て続けに起きて、今までの当たり前が多くの人の力に支えられて成り立っていたことに気づく。

 

昨日は、病院で働く親戚からLINEが入った。
お互い、感染に気をつけて頑張りましょうねと。
今日も多くの医療従事者の方が、精一杯働いている。
 

先日の仕事帰りも、最寄駅のコンビニの横を通った時に、またあの高級アイスを食べたくなった。
このコンビニでは買ったことはないけど、間違いなく売っている。
 

どうしょうか。

 

そう思ったけど、やっぱりやめた。
まだ大丈夫。まだ私は頑張れる。
 

今週を乗り切ったらまた食べよう。
その時も、きっとコンビニのレジ前の冷ケースに陳列されているはずなのだ。
今週がんばったら自分へのご褒美に、週末に買おう。
そして、コンビニを横切り、私は帰路についた。
明日からも、自分のできることを精一杯やろう。
 
 
 
 

***
 
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2020-04-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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