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生理前のニキビに学ぶ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:竹下優(ライティング・ゼミ平日コース)

 
 

「くっそ、今月もできたか…」
顎にぷっくりと現れた、赤黒いニキビを触ってみる。
かゆいような、痛いような、ズンっと鈍い感覚に顔がゆがむ。

 

大学を卒業した頃から、ほとんど毎月と言っていいほど
生理前になると、赤黒いニキビが顎にできるようになった。
ストレスのせいか、お酒の飲みすぎか、はたまた夜中のポテチのせいか。
ひとたび現れたが最後、触らぬ神に祟りなし。
分かってはいるけれど、ついつい潰して、化膿させてしまったことも数知れない。

 

何か良い手立ては無いものだろうか。
通勤中、スマホで調べていたところ、ある一文が目に飛び込んできた。

 

「10-20代のニキビは“思春期ニキビ”、30代からのニキビは“肌老化”です」

 

うっわ、もう“老化”とか言われる年齢になったのか。
いつまでも若々しく! なんて思ってはいないけれど
現実を突きつけられたら、多少は辛いものがある。

 

ため息まじりにスマホから顔をあげると、リクルートスーツに身を包んだ男女が仲良くおしゃべりをしていた。

 

「私は“老化ニキビ”だけど、この子はきっと“思春期ニキビ”だなぁ…」
羨ましいような、微笑ましいような。
思わず次の駅に着くまで、頬にプチっとニキビのある笑顔を見つめてしまったのだった。

 

とはいえ、“思春期ニキビ”だって、当事者だった頃には十分に憂鬱の種だった。
就職活動中は、「肌がキレイだと、それだけで明るく清潔に見える」と教えられ
ニキビができるたびに、必死でコンシーラーを塗りたくったものだ。

 

完全無欠でいなきゃ、自己ベストで臨まなきゃ。

 

自分を追い込み、奮い立たせ、会社の門をくぐる日々。
毎回、リクルートスーツという鎧を着て、戦場へ赴くような気持ちだった。
 

あれから10年。
採用面接を受ける側よりも、面接官として学生を迎え入れる側に年齢が近くなり、
大学生の“模擬面接”に付き合う機会も増えてきた。
 

「あなたの長所と、短所を教えてください」

 

想定問答集によくある質問だが、これが実に興味深い。
ほとんどの学生が長所と短所を述べた後に、短所を改善するために努力している事を付け加えるのだ。
 

「長所はリーダーシップがあるところ、短所は猪突猛進、走り出すと周りが見えなくなるところです。
これを改善すべく、物事を進めるときには必ず、友人や仲間にアドバイスを求めるようにしています」
「長所は几帳面なところで、小学校から高校まで無遅刻・無欠席です。
短所は保守的なところですが、最近は周りに勧められたことには積極的にチャレンジするようにしています」
 

確かに、数ある就職活動のノウハウ本にはそう答えるように書かれている。

 

けれど…何というか、短所ってもっとこう、“生理前の顎ニキビ”みたいなもんじゃないだろうか。
なおそう! と思って、どうこうなるもんじゃない、というか。
 

普段は忘れているけど、ふとした時に表に出てきて悩まされる。
「あの時の、あの行動が悪かったのではないか」と、思い出して後悔するも、既に手遅れ。
隠そうと上辺を取り繕っても、早く治そうと触りすぎても、かえって悪化するばかり。
“ある”ということを受け入れ、それ以上酷くならないように、うまくやり過ごすしかないのだ。
 

偉そうに語る私も、就活戦線で戦っていた頃には“完全無欠”を目指し、彼らと同じような回答をしていた。

 

「長所は好奇心が旺盛なところ、短所は飽きっぽいところです。
飽きっぽいおかげで、様々な事に出会い、挑戦できたのですが、
社会人になるにあたり改善しようと思い、1年前から新聞スクラップを始めました。
毎日、気になる記事を切り抜き、そこに自分の考えや思いを書き込んでいます」
 

確かに新聞スクラップは、就職活動が終わるまで続けたものの、内定通知と共にサヨナラしたし
“飽きっぽさ”は10年経っても未だ健在である。
 

さらにこの短所、“改善の努力”ありきで考え出したものなので、
山ほどある短所の中でも、人に言っても恥ずかしくない、差し支えないレベルのものに留まっている。
 

本当の私は、見栄っ張りで、嫉妬深くて、傷つきやすくて、
傷つけられるのが怖いから、先に相手を攻撃することもあるし
“傷ついていないフリ”をして、強がったり、ガサツで大雑把な部分を主張したりすることも多い。
 

そんな一面が首をもたげるたび、猛烈な自己嫌悪に陥るし、自分で自分を持て余してしまう。

 

だから、言えなかった。
友達にも、恋人にも。
ましてや鎧を着てがっぷりおつで向かい合う、面接官になんて。
 

今もなお、自分の短所をおおっぴらに見せるなんて出来ないし、
いつだって“私はちゃんとしている”と思いたい。
 

けれど、それは無理。残念だけど。
“ちゃんとしていない”自分もいるのだと認め、
短所が首をもたげた時には、最小限の被害で済むよう、なんとかやり過ごせるようにはなってきたと思う。
 

だから、思春期ニキビ諸君。
“完全無欠”なんて目指さなくて良い、頑張り過ぎなくて良いのだ。
 

え?そう思うのは老化しているからだって?
いや、そこはせめて、“老成”って言ってもらえませんかねぇ。
 
 
 
 

***
 
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2020-04-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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