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家族愛を模索するLINE


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:みさと(ライティング・ゼミ平日コース)

 
 

「あのとき、お兄ちゃん登校拒否やってなぁ」

 

何十年ぶりかに2人で散歩をしていたら
母が、そんな話を始めた。
 

夜の9時、何の目的もなく
母と2人で川ぞいを歩く。
 

57歳の母。27歳の私。

 

夜の散歩は不思議なもので
思い出話がたくさん出てくる。
 

母は「お兄ちゃんには、内緒やで」
と、話を切り出した。
 

「お兄ちゃんが中学1年生の夏休みなぁ。
宿題のドリルを全部破いてん。
お母さん、怒らへんかったけど
担任の先生に相談しに行ったんよ」
 

「登校拒否。夏休みが終わってからも、
学校に行きたくないっていうお兄ちゃんを
毎日玄関でずーっと見守ったわ。
お兄ちゃん、ゆっくーり、ゆっくーり、歩いて行くねん。
チャイムギリギリで学校に着いてるらしかったわ」
 

すっごく驚いた。
私には初耳だった。
「え!? ドリル破いた時、私も一緒におった?」と聞いた。
 

「おったよ、みさとも。ドリル破いたとき一緒に見てたよ」
 
全然記憶にない。

私が「一緒に住んでても気づかないもんやねんな」
と言うと母が衝撃の一言。
 

「え!? 覚えてないの?
あんたにも何回か、相談したよ。
そのときにあんたが、良いアドバイスくれてね。
すごい救われたのを覚えてるわ」
 

とのこと。

 

お兄ちゃんが中学1年生ということは
私が小学校6年生。
 

小学校6年生の私、的確なアドバイスできるなんて
なんて賢い子なんだろう。
 

どんなアドバイスをしたのか気になった。
でも母は内容を忘れてしまったらしい。
 

その忘れっぽい性格を受け継いだせいなのか。

兄がドリルを破いたことも
登校拒否してたことも
アドバイスをしたことも
全然覚えていない。
 

「私、すごい忘れっぽいな」と思ったが
よく考えれば、これは記憶の問題ではない。
 

私は兄に無関心すぎる。
それが問題なのではないか。
 

そして、関心のなさは
家族愛の薄さが原因なのではないか。
 

思い返せば
私は兄のことのに全然興味がない。
 

小学6年生の頃の記憶といえば
友達と毎日バカ笑いしていたことくらい。
 

毎日一緒に晩ごはんを食べていたのに
兄の表情が固かったことも、
兄が苦しんでいることにも
ちっとも気にかけてなかった。
 

母の一連の話から、
自分の兄への無関心さを
はっきりと自覚した。
 

対して、母は私と全く違う。
兄妹のことをとても大切にする。
 

母は散歩中、こんな話もしてくれた。

 

母は鹿児島の、与論島という島で生まれ育った。
田舎の8人兄妹の4番目。
 

お金はなく、服も買ってもらえない。

 

小学校1年生のときには、姉が6年使った
ボロボロのランドセルをお下がりでもらった。
そのランドセルは小学校2年生の時に肩紐がちぎれた。
それからは、手提げ袋で通ったそうだ。
 

15歳で関西に出てきて
看護学生としてバイトしながら学校を卒業。
こっちで父と結婚した。
 

関西に出てくる15歳の春、
母の母(私のおばあちゃん)がネグリジェを買ってくれた。
生まれて初めて買ってくれた服が、すごく嬉しかった。
でも大切にしすぎて全然着れなかった。
 

ざっとこんな内容を
母は散歩しながらボソボソと語っていた。
 

そんな母は家族をとても大切にする。

週に3日は、8人兄妹のうちの誰かと
長電話をしている。

甥っ子姪っ子のことをとても大切にする。

 

鹿児島の母に会うために年に2に回は里帰りする。
兄妹の分のガン保険料すら、払ってあげている。
 

私は特に家族と仲が悪いわけではない。

 

しかし兄と電話で話すなんて考えられない。
今東京で働いている兄がどうなっているのかなぞ
ちっとも興味がない。
 

もし兄が死んでも、父が死んでも、
自分が泣いている姿を想像できない。
 

両親は何不自由なく育ててくれたのに
家族愛というものが薄い。
 

だから、家族愛に溢れている
母のことがすごく羨ましい。
 

子供の頃からお金がなくて
家族で助け合っていたからこその
家族愛なのかな。と思う。
 

きっと、母が困った時、助けてくれる人は多いんだろうな。
母が亡くなった時、悲しむ人は多いんだろうな。
 

そう考えると、
本当に人生を豊かにするものは
お金じゃない。
家族や人との繋がりなんだろうな。と思う。
 

「家族愛が分からない」
と母に言うと
 

「みさとは今、自分のことで精一杯やからな。
結婚して子供ができたら、また変わるよ」
と言われた。
 

「ふ〜ん、そんなもんか」
としか言えなかった。
 

そんな経緯から、
久しぶりに兄にLINEをしてみた。
 

ちなみに兄は中学2年生から
きちんと学校に行くようになった。
今は東京でエンジニアとして働いている。
 

「そっちはコロナ大丈夫?」

 

兄から一瞬で返信が来た。
「いきてる」
 

!!
そっけな〜い。
返信がそっけない!!
 

でも、そのあと何通か
やり取りをした。
 

友達とLINEをするかのように
兄と冗談を言い合った。
 

兄妹というより
「男友達」という感じがした。
 

「兄と連絡を取り合うのも、悪くはない」

 

そう思えた。

 

兄とのLINEは新鮮だった。

 

これからちょっとづつ、暇な時に
兄にLINEしてみようかと思っている。
 

母は、こんな私でも
「結婚して子供ができたら家族愛がわかる」
と言う。
 

そんな日が来るのかな。

 

家族愛というものが、どんな暖かさで、
どんな感情を私にくれるのか。
 

私は見つけることができるのかな。
家族愛を見つることがちょっと楽しみだ。
 
 
 
 

***
 
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2020-04-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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