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絵を買うならオーダーメイドが「コスパ最高」な理由


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:香山せの(ライティングゼミ・平日コース)

 
 

この前、生まれてはじめて絵を買った。
でも、まだその絵はわたしの手元にない。というより、まだこの世に存在していない。

 

頼んだのは、アーティストに自分のために描いてもらう、オーダーメイドの絵なのだ。

 

ちなみにわたしは、家に高い壺が並んでいるような豪邸のご令嬢でもなければ、審美眼鋭い業界関係者でもない。芸術の知識なんて全くない、ごく一般的な会社員である。
まさか、自分の人生で絵を買うなんて思いもしなかった。
 

彼女の絵をはじめて見たのは、若手アーティストの絵を販売するインターネットのサイト上だった。趣味の美術館めぐりができないご時世になってしまい、暇をもて余してネットの波に流され辿り着いた先だった。

 

それは、もう一目惚れと言ってもよかった。
夢と現実の境界線のような世界観のなかに、深海魚がユラユラと漂う、そんな絵だった。
 

今まで、おそらく何百という絵画を見てきたけれど、こんなに心にすっと入ってきて、どうにも離れない絵ははじめてだった。
思わずスクリーンショットを撮って、気がつくとふとした瞬間に何度も眺めていた。
サイトに書いてあった彼女のプロフィールをストーカーばりな検索して、SNSのアカウントを突き止め(別に隠していないと思うが)、彼女の絵のあるサイトを一日に何度ものぞく日が続いた。
 

世の中の状況はどんどんと悪くなり、ついに美術館どころか、会社にも行けなくなり在宅時間が異常に長い毎日になった。
不安をあおる内容が続くテレビを見るのもげんなりするし、SNSもいろんな人のいろんな思いが滲み出てくるようでちょっと疲れる。飲みにも旅行にも行けないので、食費以外のお金は減らない。
 

ということで、本来ならばゴールデンウィークで一瞬にして飛ぶはずだったお金だと思い、収束後の経済なんてどうなるかわからないひ知らねぇよという若干の自棄も手伝って、もうしばらくお目にかかれないかもしれないボーナスをパーっとはたいて、彼女の絵を購入することにした。

 

そうと決めたら、居ても立ってもいられない。
すぐさま彼女の絵を取り扱っているサイトに連絡した。掲載されていた絵は、わたしの狭い家には大きすぎるのと、さすがにそれを買ってしまうと生活できなくなってしまうお値段だったので、オーダーメイドのサービスがあるという文言を見て、それを頼もうと思ったのだ。
 

結論から言うと(といってもまだ絵は出来上がっていないが)、オーダーメイドにしたのは、大、大、大正解だった。
この沈んだ雰囲気の世の中で、こんなにワクワクして楽しい気分にさせてくれるなんて、まだ絵が届いていない時点で、すでにコストパフォーマンスが最高だと感じている。(わたしにとっては高い金額を出したにも関わらず)
 

オーダーメイドの絵画という最高のエンターテイメントを、おうち時間の過ごし方の選択肢のひとつとして提案したい。

 

現時点で感じているオーダーメイドのいいところは3つ。

 

まず、依頼するときには、中学生が好きな人に告白するときのようなピュアなドキドキ感を味わえる。
オーダーメイドは、こちらが買いたいといえば買えるものではなく、仲介サイトを通じてアーティストに制作可否を確認するというステップがある。
サイトに申し込むときには、すでにこちらの心は決まっていて、テンションは最高潮に高まっている。断られたら、この気持ちはどこにぶつけたらいいんだと思いを募らせて返信を待ち、何度も携帯のメール画面を起動するという、ワクワクと不安が入り混じる懐かしいドキドキを体験することができる。
 

わたしの場合は、土日を挟んだので3日ほどかかった。
待ちに待ったメールを開くときの高揚感と、OKの文字を見たときの安堵感は、何物にも代えがたい。まさにエンターテイメントである。
 

2つ目は、デザインスケッチがもらえるのが超お得なことだ。
依頼の仕方にもよるが、わたしの場合は、絵のモチーフを彼女が得意な深海魚で何か提案してほしいとオーダーしたので、鉛筆書きの3種類のスケッチが届いた。
ハイギョ、サンキャクウオ、ピラルク。深海魚ずきのわたしから見て、最高すぎるチョイスである。
ここでどれにしようか迷うのがまた楽しい。さんざん悩んでピラルクにすることにした。
もちろん、スケッチは全部保存して、夜な夜な見返してその後も楽しんでいる。
 

最後に、ただ絵を買うだけではわからないアーティストの人柄が伝わってくることだ。
メールのやり取りは、仲介会社を通して行うが、転送されてくる彼女の言葉の端々に、あぁこの人に頼んでよかったなと感じさせてもらえる部分がたくさんある。
個人的なやり取りなので、この場で公開するのは控えるが、自分に向けた絵を描いてもらうというのは、単なる「デザイン」だけでなく、こちらの要望を汲み取ろうとしてくれる姿勢や提案の仕方も含めたすべてが付加価値となるのだ。
 

出来上がった絵は、数ヶ月後に送られてくるらしい。
スケッチを見返したり、まだ見ぬ完成品に想いを巡らせたりしている間も、わたしのワクワクは続いている。
そう思うと、やっぱりこの絵は本当にコストパフォーマンスがいい。
 

アートやエンターテイメントが不要不急といわれる世の中でも、やっぱり芸術は人の心を明るくする偉大なものだとあらためて実感する。
 
 
 
 
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2020-04-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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