心がつらくなってしまったあなたに
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:ヤマモトマサコ(ライティング・ゼミ通信限定コース)
「自己肯定感が持てません」
人生で初めてお悩み投稿掲示板に書き込みをした。60歳の母と二人暮らし。コロナにかかったら大変だから、と一週間に一回買い物でしか外に出ない。確かに、母の年を考えたら、私がむやみに外に出て感染したときに、危ないのは母の命だ。それは、とても良く分かっている。私もかかりたくないし移したくもない。だけど、1kのマンションで一日中ずっと母と一緒にいると、気が狂ってしまいそうになるのだ。自分だけの時間がないと、私は心がつらくなってしまうのだ。
元々ネガティブに考えてしまう癖があると思う。自信が持てなくて落ち込むこともたくさんあったけど、美味しいものを食べたり帰宅途中に一駅分散歩したり、なんだかんだ気分転換してストレスを解消していた。
でも、今コロナが恐ろしい状況のなか、家の中だけで気分転換することが、私にとってはとても難しい。筋トレしたり映画を見たり、色々紛らわせることはできるけど。でも、隣には母がいて話しかけてくる。一人より誰かといる方が好きという人はたくさんいると思うが、私は一人の時間がないとダメなタイプだ。家族とはいえ、ずっと一緒にいると自分のパーソナルスペースがどんどん侵されているようで、心が死んでいくような気持ちになってしまった。もう、限界かもしれない。自分の心の中だけでは、感情が処理しきれなくなっていた。スマホでこっそり、こころの相談窓口を検索した。「2020年おすすめの掲示板」まとめサイト。普段だったらネットへの書き込みは不特定多数の人に見られるのが怖くてしないが、今はどこでも良かった。とにかく吐き出したかった。
友達に電話することも考えたが、今まで対面で相談して理解してもらえたと感じたことがない。私は悩みを話すのに、とても勇気がいる。全部は話しづらく、かいつまんで話してしまうこともある。そうすると、親身に答えてくれた友人には本当に申し訳ないのだが「そうじゃないんだよな……」と、結局思ってしまう。中途半端に分かった風な答えがきて、がっかりというか、私は分かってもらえないんだ、と逆に傷ついてしまう。私にそもそもきちんと伝えられないせいなのだが。だから、心の根っこの部分に関する悩み事ほど、あまり人に相談することをしてこなかった。
掲示板への投稿文を書くのには、とても時間がかかった。何度も何度も書き直した。これだ、と思える言葉を一つずつ探していった。考えて考えて、いざ投稿するときには不思議と満足感があった。「これが、私の気持ちだ」となんだか自信を持って誰かに読んでほしいと思えるほど、自分の内面をさらけ出して伝わる表現できたのは初めてだった。書いていくなかで、もやもやと形にならなかったものが言葉に変わり、自分ではっきりと見えるようになって、気持ちが整理されたからだと思う。誰かに答えをもらわなくても聞いてもらえなくても、自分でちゃんと声を聴いてあげることができれば、私は救われるのだ。書くことで、自分で自分を救ってあげられるのだ。
投稿文に書いた悩みは、「自己肯定感が持てません。もう何を頑張ってもダメな気がする」という、とても暗い内容だった。でも、それを書き終わったころには、「あ、私そういう気持ちで悩んでたんだ」とすっきりして、不思議と自信が湧いていた。
話して伝えようとすると、相手の顔色を窺ったり「こんな暗い話をして嫌われないかな」とか不安になったりしてしまう。一度口から発してしまった言葉は、それがあまり納得できていない言葉だったとしても直に相手に伝わってしまう。人見知りで口下手な私は、それが何より怖かった。でも、文章なら、何度も自分の中で考えて選んだ言葉を送りだすことができる。それは必ずしも人に見せる必要はない。自分との会話の中で安心できる答えが見つかれば、それでいい。もし人に見せることができれば、それは他の誰かの支えになれるかもしれない。
投稿文を真剣に書いたからか、冷やかしのコメントはなかった。むしろ、かなり真剣に返してくれる人がいて嬉しかった。そして、身近な人よりも的確なアドバイスが返ってくることに正直驚いた。時間があって、悩みに答えたい人だけが返事をくれるので、相手への負担が少ない。私も、顔の見えない相手だからこそ、フラットに受け止められるという側面はあるのだと思う。
もちろん、ネットへの書き込みは良い面と悪い面、両方ある。でも、今逃げ場のない人、周りに頼れる相手がいない人は、発信して誰かに伝えて共感してもらうだけで、楽になる可能性はあるんじゃないかな、と思う。
「書くこと」は、自分の気持ちと向き合う手段であり、自信をくれる魔法だ。
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