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「指令! ひと月60万円の、店舗の赤字を改善せよ!」


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:落合明美(ライティングゼミ・平日コース)
 
 
「いいかい? 落合さんと私の二人三脚で、毎月赤字60万円の店の売り上げを改善させるんだ!」
「……はい?」
 
とんでもないところに派遣されてしまった。
 
今から、12年も前のことだ。当時から、各コンビニエンスストアは「フランチャイズ店舗」のチェーン展開が、とても流行っており、そのオーナーになれる条件は、『コンビニR』の場合は、二つだった。
『350万円程度の開業資金を用意すること』と、
『夫婦二人で店を経営すること』だ。
 
そうして、7年間。夫婦二人で、神楽坂の駅近くで、『コンビニR』を経営していた、前オーナー夫妻は、1年前に離婚。奥さん自身も病気で身体を壊して、店を辞めることになった。
前からのパート、アルバイトの数人に店を託した彼女の店は、売り上げがどんどん下がり、翌年には、とうとう、一カ月に60万円もの赤字を出すようになってしまった。
 
限界を悟った彼女は、店を手放す手続きを済ませ、そうして、今回。
店舗の立て直しにと、派遣されたのが、コンビニ会社R直営店の正社員、嘉門店長と、某派遣会社から出向となった一社員の私。の二人だった。
 
「先ずは、落合さん。この毎月の赤字の原因を探ることが先決なんだけど、私は先週、それを暴いたよ」
嘉門店長は、私より1週間も前から、店舗に入っていた。
彼は45歳。顔立ちと体つきは、どことなく狸に似ていて、温和だったが、頭の回転はとても早い人だった。
「嘉門店長。凄い! ……で、赤字の原因って何だったんですか?」
 
嘉門店長は、無言のまま、私を促して、「ドリンクコーナーのバックヤードの冷蔵庫」に連れて行った。
 
「うわっ、これは酷い」
私にも、その光景を見た瞬間に、赤字60万円もの原因が飲み込めた
 
ドリンク補充棚の上には、ズラッと飲みかけのジュースの残骸。数えてみたら、実に40個以上もあった。
深夜アルバイトの大学生4人の仕業だった。
 
彼ら4人は、ジュースの他にも、菓子や弁当など、当たり前のようにレジを打たずに食べていた、
 
嘉門店長と、私は早速、深夜の時間帯のテコ入れに掛かった。
深夜には男性の嘉門店長。そして、私は朝6時からシフトに入り、彼らが悪さをしないように監視しだした。
やがて、彼らは、「自分たちの天下の、極楽バイト」で無くなったことを悟り、1カ月後には立て続けに辞めていった。
そうして、代わりに、新しく採用した、真面目な大学生4人と、午前と午後のパートに主婦の2名で、店舗の経営改革をしていった。
元凶がいなくなった店は、どんどんと活気を取り戻し、顧客が増えて、3か月後には、すっかり赤字を無くすことに成功した。
 
嘉門店長と、私は、かなりの手応えを感じていた。
 
或る日、神楽坂の同じフランチャイズ店舗で、全国3位の売り上げを誇る店の評判を聞いて、
二人で夕方に偵察に行った。
 
果たして、全国三位には、その店の秘密がしっかりと現れていた。
「落合さん。綺麗だな」
「そうですね」
店の商品は、すべてがとても綺麗にフェイスアップ(※商品を陳列棚の手前に引き出して、取りやすく、見栄えがするように並べること)されていた。
店員の愛想も良く、活気にあふれている。
そして、ある一角のコーナーに、色鮮やかなポップと、見慣れない商品が並んでいた。
 
その商品の一つを、私は手に取った。「雪下人参ジュース」とラベルに書かれた、オレンジ色の液体の瓶のジュースだ。
嘉門店長と私は、目を見張った!
「「Rミール! これだ」」
Rストア独自の冷蔵の商品だ。「クリームパン」「ケーキ類」普通の店舗では、取り扱いのない一風変わった、拘りの商品が50種以上もある。
 
急遽、まったく発注していなかった「Rミール」を毎日、10種類以上。パン、デザート類を中心に、入荷しだした。
 
効果は、てきめんだった。
 
目新しい商品に魅かれたお客さんが、一般商品より高めの「Rミール」のパンや、ケーキをどんどんと買うようになった。
毎日2万円もの売り上げを誇り、私と嘉門店長は、ワクワクしだした。店の売り上げは、どんどんと上がっていった。
店長は、私を、「副店長」に任命してくれた。
 
……ところが、二週間ほど経った或る日のことだ。
あれだけ、売れていた「Rミール」が全く売れずに残り、「廃棄」が2万円ほど、出た日があった。
その日の翌日も、同じように2万円の廃棄。
嘉門店長は、頭を抱えていた。
 
そう、店舗に来るお客さんが、「Rミール」にすっかり飽きてしまったのだ。
無理もない。
神楽坂の駅前に来るお客さんは、毎回、だいたい同じ顔ぶれだ。
 
「美人は三日で飽きる」というが、いくら美味しいものでも、二週間も食べれば、そりゃあ、飽きてくるだろう。
 
私達は、解決策をまったく思い浮かべないままに「Rミール」の撤退を決めた。
 
ただ、半年以上。嘉門店長とタッグを組んでやっていて、私は彼に尊敬の念と好意を抱いていた。なので、他に店の売り上げで出来ることを、派遣会社の社員として、一生懸命に提案して実行した。
 
当時、コンビニRでは「外への営業活動」を進んではやらないとの事だったが、私は
「飛び込み営業のたたき上げ」の経験があった為、嘉門店長を引き連れて、1本250円の恵方巻の御用聞きで、近所の「印刷会社」や「カメラ屋」「時計店」などを回って50本以上の注文を取った。
だんだん、得意先になってくると、今度は1件5千円の「お中元のビール」等を、私は
売り込みだした。
 
一方、店舗では、廃棄になって、『豚の餌』になってしまう、弁当や、デザートをひと口大に切って、店内で『試食販売』をしだした。
 
効果は、徐々に表れ、うちの神楽坂店は、全国の売り上げで100位以内に入るようになった。
 
そして、一年後。嘉門店長は、私を、今度東京に新しく出来るという、『新〇ビルのオフィスフロアナイン店』の、『店長』へと推薦してくれたのだ。
嬉しい反面、流石に怖気づいた私。
「嘉門店長。無理……。私、マネージャー試験受けてないもの」
「あ、それ。話通したから大丈夫。 店に行ってから受けてもらうから」
 
こうして、私は「R店の店長の資格」を受ける前に、〇ビル店の初代店長になり、1か月後に約3日間の研修に通った。
そして、そこで、私は「Rミール」の対策方法を知った。
 
講師をしていた、部長は言った。
「皆さん、クローバー活動は必ずやりましょう。そうして、どんどんと新しい顧客を増やしましょう」
 
「そうか、そうだったんだ」クローバー活動とは、日々の近所への飛び込み営業の事だ。
あの時、私は嘉門店長と、季節のイベントの時だけ。と、「飛び込み営業」をしたが、これを毎日、違う地域にお薦めしながら、新規開拓していけばよかったんだ。
 
すぐさま、私は、神楽坂の嘉門店長に電話で伝えた。
 
残念ながら、この3か月後。
R店の会社が創業21年目にして、初の赤字を出してしまい、私達、派遣会社はその余波で、撤退を余儀なくされ、私の「初代店長の肩書」もわずか、数カ月で終わってしまった。
 
しかし、私はかけがえのない財産を、R店から、スタッフから。そして、嘉門店長からいただいた。
スタッフの皆が、最終日にサプライズで買ってくれた、色とりどりの大きな花束。
そして、そんな
素晴らしい人材と店創りのコツを学んだ、あの時の苦労と経験という大きな宝物だ。
 
 
 
 
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2020-05-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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