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歌謡曲なんて興味なかったのに


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記事:mimi (ライティング・ゼミGW集中コース)
 
 
いまどき歌謡曲?
 
おそらく、私の世代(30代)でも歌謡曲の良さを分かっている人は少ないのではないだろうか。
 
友達と歌謡曲について熱く語ったことなどないし、まず歌謡曲世代ではない。
歌で盛り上がったといえば、せいぜい浜崎あゆみとか鈴木あみの可愛さや声の高さに感激して盛り上がったくらいだ。
 
正直、今でも歌謡曲の素晴らしさや良さは分からない。
時折テレビから昔の歌謡曲が流れてきても、特に興味を持つことも、特に感動することもなく、聞き流している。むしろ歌謡曲の定義でさえ自分の中であいまいだ。
 
しかし、ある晩テレビをつけた時にたまたまやっていたテレビで、とある歌謡曲が流れていた。私はこの歌謡曲にとても感動してしまった。
 
普通の歌謡曲ではない。
最先端の技術であるAIが歌っている歌謡曲だ。
 
それもただのAIではない。
美空ひばりさんの歌声をディープランニングした、スーパーAIだ。
 
そのAIが歌うのは、生前美空ひばりさんが歌った曲ではない。
令和に作られた、完全な新曲を歌っているのだ。
 
失礼ながら、美空ひばりさんのファンでも何でもない。
生前、とても素晴らしい歌手だったらしい、という事しか知らないし、
『川の流れのように』を聞いても、ああ昔の歌謡曲だね、位にしか感じない。
 
それに、AIが歌っていると言われた時点で、なんだかちょっと興ざめする。
『どうせ、“○○ミク”とかみたいに、ボーカロイド感丸出しなんでしょう?』
と思う人もいるかもしれない。
 
だが、この新曲は違ったのだ。
 
どこか懐かしい歌声と、誰しも心の中に持っている感情をくすぐるような歌詞に、
私は涙した。
 
テレビには、美空ひばりさんのホログラムが立派なステージ上で、まるで生きているかのように新曲を歌っている映像と、観客の表情が映し出されていた。
 
美空ひばりさんの背中を追いかけてきたであろう、天童よしみさんはじめ、年配の観客がそのステージを眺めていた。
 
彼女たちからすれば、久しぶりの美空ひばりさんのコンサートなのだろうし、待望の新曲なのだろう。
もしかしたら、生前のコンサートには行けなかったけど、今回が待望の初コンサート参加なのかもしれない。
 
皆が涙しながら、ステージを眺めていた。
きっと、この歌を通して、色々な思いが去来しているのだろう。
見る人の心が動いているのだ。
 
私は、そんな人々の気持ちが動いていく、その姿を眺めて、さらに感動してしまった。
 
なにせ、本人ではない。本人そっくりのAIだ。
ステージに立っているのは、本人ではなく、映し出されたホログラムだ。
 
皆、それが分かっているはずなのに、それでも心を動かされる何かがそこにある。
 
美空ひばりさんのファンでも何でもなかった、たまたまつけたテレビ番組で見ただけの私ですら、ものの1、2分で感動して涙してしまったのだから。
 
まず、声が素晴らしい。
優しくて、艶っぽくて、それでいて、芯の強さを感じさせる、素敵な女性の声。
どこか懐かしさもある。きっと、何度も色々なところで聞いた声だからかもしれない。
 
そして、曲。
ピアノのソロから始まり、ゆったりした曲調。
曲調が全体的に柔らかく、気持ちがいい。
 
なかでも、私が一番響いたのは、歌詞だった。
 
昔、一緒に過ごした友人や、恋人のことを思い出して、懐かしいような、切ないような、
そんな気持ちにさせられる。
一方で、今頑張って生きている自分のことも、愛おしく思えるような、暖かさがある。
 
落ち込んだ時に、繰り返し、繰り返し、何度も聞きたいと思える。
誰が聞いても、文句なくいい歌詞だ。
 
美空ひばりさんの新曲は、これらの素晴らしい歌声・曲調・歌詞がすべて完璧に調和しているのだ。
 
もちろん、ホログラムもまるでそこに本人が立っているかのような精密さで、見ていて興ざめすることもない。
 
途中、美空ひばりさんが、観客に語り掛けてくるシーンがある。
柔らかな表情で、優しく語り掛けてくるそのしぐさには、神々しささえ感じられる。
 
時間にすれば、たった5分。
たった5分でこんなに人の心を動かす歌があるのだろうか?
私は他に知らない。
 
コンサート終了後の観客のインタビューがその後に流れていた。
 
「ひばりちゃんに会えて、生きててよかった」
「生きていくのに、励みになりました」
「いつまでも心の中に残る、彼女には何か特別なものがあるんですね」
「生き返ることはないと分かっていたけど、ここまで空いた時間の隙間を埋めてくれるAIの素晴らしい側面を感じた」
 
最先端の技術で、ここまで人を感動させることができる。
驚くべき時代だ。
 
私が感動したのは、きっと、美空ひばりさんの素晴らしさだけではないと思う。
 
それなら、テレビで流れる生前の歌を聴いているときにとっくに感動して、
「美空ひばりさん最高!」
「歌謡曲最高!」
と言っていたはずだ。
 
では何がそんなに私を感動させたのか?
 
美空ひばりさんという素材に、今回の新曲およびコンサートに携わったスタッフの方々の
技術や魂が加わった作品だったからこそ、私のような歌謡曲の良さも知らない者でも感動できたのだ。
 
ただの歌謡曲でも、歌謡歌手でもない。
美空ひばりさんの「あれから」は、新時代の技術が作りだした最初の名作に違いない。
 
 
 
 
***
 
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2020-05-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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