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メディアグランプリ

愛はどこにある?


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:三谷 智子(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
習い事先にて講師の先生が、半年前より犬を飼い始めました。名前をユメちゃんと言います。ポメラニアンとプードルのハーフで、ふわふわした黒い毛並みが特徴です。わたしの膝の上に、すっぽりおさまる小型犬です。黒めがちな、うるうるした瞳をしています。見た目からして、愛くるしいです。ペットショップに居たゆえか、ヒトへの警戒心は薄く、人懐っこいです。人見知りをしません。ユメちゃんとは、初めて会ったその時から、とっても仲良しです。ユメちゃんは、遊びたい気持ちがいっぱいです。くるくる動き回り、愛想をふりまいてきます。ますます可愛いいポイントです。
 
レッスンの始まる前に私がお手洗いへ行くと、遊ぼうよと言わんばかりに、ぶんぶんしっぽを振ってきます。私のことを覚えてくれてると感じ、私のテンションはだだ上がりします。手早くお手洗いを終えて、ユメちゃんをひたすら愛でます。触れてその温かさを感じます。どこに触れると楽しそうか、ユメちゃんの様子を探ります。私の心の中は、あぁー可愛い!! とハートマークになっている瞬間です。ユメちゃんもどんどんテンションが上がり、動きが大きくなります。前足をちょいちょいと動かし、まるで手招きをしているようにじゃれてきます。どの仕草をとっても、可愛いいの一言に尽きます。ユメちゃんの登場により、習い事がますます楽しい時間となりました。
 
そんなユメちゃんですが、1か月くらい前から元気がありません。元気がないというか、ユメちゃんらしくありません。可愛さのエネルギー放出の仕方が、なんかおかしいのです。
 
ワンワンと吠えます。警戒しているのかと思いきや、むしろどんどん私にやってこい。私に遊べとねだって吠えていました。なーんだと思い触れるも、ぎこちない仕草をします。まるで、私がちゃんと遊ぶか探っているようです。いつもと変わらず遊びますよ。大丈夫よ。そんな心でしばらく接するも、ユメちゃんの調査は続きます。ぎこちないままで、時間は過ぎていきます。
 
レッスン開始時間が迫り、遊びを止めようとすると、離すまいとばかりに噛んできます。ワンワンと鋭く吠えます。どうしたの? 何があったの? 私は何も変わらずいつも通りなのに、何がこのユメちゃんを駆り立ててるんでしょう。遊びの時間も、ユメちゃんにとって楽しい時間だったかしら。オーバーな言い方かもしれませんが、疑心暗鬼タイムだった気がしました。
講師の先生へ理由を尋ねてみました。講師の先生いわく、
「コロナのせいで、レッスンへ来る人が減っててね。集団でのレッスンはなくなったの。たまに個人レッスンがある程度。ユメと遊ぶ人が少なくなった。遊んでくれる人に、目いっぱいぶつけてるみたい」
私はユメちゃんの変化に納得しました。
ユメちゃんには、コロナゆえに世の中が大きく変わっている、そんな理由は分かりません。目の前の自分に起こっていることを、その小さな体で全身に感じ、変化に対応しようとしているのでしょう。理由が理解できない分、恐怖も大きいと思います。きっとユメちゃんなりに、懸命に考えているのです。
 
でも、ユメちゃんはもったいないことをしてる、とも思いました。
ユメちゃんは不安の気持ちがいっぱいで、私のユメちゃんと遊びたい、楽しみたい気持ちに気づくことが出来ていません。そして、ユメちゃんの不安な気持ちは行動に表れています。何も知らなかった私も戸惑い、不安になってしまいました。
不安をちょっと置いとくことが出来たら、ユメちゃんとめいっぱい遊びたい私が目の前にいることに、気づくはずです。するといつもの楽しい時間が始まります。大盛り上がりで遊んで、お互い幸せいっぱいの満足を味わう時間となります。
ユメちゃんの心持ちひとつで、ユメちゃんと私の遊んでる時間をどう感じるか、大きく変わります。
 
ふと思いました。はたしてこれはユメちゃんだけでしょうか。
私もユメちゃんと同じように、自分の心持ちから見えなくなっていることが、あるのではないでしょうか。
例えば、私には、「誰も私のことを大切にしてくれないんだ。愛してくれないんだ」 という衝動があります。
私が「愛はない」 と強く信じているから、愛が見えていないのかもしれません。疑ってかかることにエネルギーを費やし過ぎて、力尽きているのです。なんともったいない。
 
疑うことをちょっと置いといて。どうも私のそばには、愛があるらしい。そんな前提に書き換えれば、私の目の前の現実も変わりそうな気がします。
そこにある愛を探すぞ! と気持ちが変えた今この瞬間から、ワクワクした気持ちになってきます。この気持ちの変化だけでも、今までにない十分な変化です。きっと色んな事が、今までと違うように感じるんじゃなかろうか。予感がします。
 
愛はどこにある? とても身近に、実はずっとあったことに、私が気づいていなかっただけかもしれません。
 
 
 
 
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2020-05-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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