時間泥棒を逮捕せよ!
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:宮前純子(ライティング・ゼミGW集中コース)
「私、実は時間泥棒なんですよ」と言ったらビックリするだろうか?
まぁ、正確には過去の話。
今は、きれいサッパリ足を洗っているので、ご心配なく。
私には、小学生の頃から、早くて時間ギリギリに到着、うっかりすると遅刻という悪い習慣があった。
準備は早く終わっているはずなのに、家を出るときにはなぜか遅刻ギリギリなのだ。
その習慣は大学生になっても抜けなかった。1人暮らしを始めて、遅刻ギリギリでもせかしてくる人はいない。おまけに東京は、田舎と違って電車の本数が桁違いだ。1本逃したところで、次はすぐにやって来る。こんな状況では遅刻グセが治るわけもない。
さらに、大学生になり、待ち合わせをする回数がめっきり減った。
友達と遊ぶのは、大学の授業が終わった後。
バイトの友達と遊ぶのは、バイトの後。
待ち合わせをしなくてもいい条件がそろっている。
待ち合わせしないということは、私の遅刻グセもそれほど目立たない。自分に遅刻グセがあることもすっかり忘れていた。
そしてもう一つ、これが一番大きな理由かもしれない。
大学に入ってから、携帯電話を持つようになったのだ。
携帯電話があるという安心感からか、待ち合わせの場所も時間もハッキリとは決めないことが多くなった。着いたら連絡するね。が待ち合わせ時間の代わりになった。
そうすると、何となく、後から到着した方も、遅刻という概念が薄らいでいく。これまた私の遅刻グセを忘れさせるのにはちょうど良かった。
ある日、私は友達と待ち合わせていた。しかし、待っていてもその友達は来ない。連絡しようかなと思ったタイミングで、友達の方から「ちょっと遅れる」というメールがきた。
「ちょっと」っていったい何分のことなのか?
5分?
10分?
皆さんなら何分くらいを想像するだろう?
10分ほど待ってみたが、それでも来ないので、近くのカフェに入った。
注文を終え、ようやくドリンクを受け取ったところで
「ごめん! 今着いた」
せっかくコーヒー買ったのに、持って出られないじゃん。
そして、コーヒーを飲んでいる間、今度は私が友達を待たせる。
結局、待ち合わせ付近で落ち合ったのは、約束の時間を1時間以上も過ぎた頃だった。
コーヒーを飲みながら、自分に遅刻グセがあったことをようやく思い出した。
そして、そんな自分が、ミヒャエル・エンデの『モモ』に出てくる時間泥棒のようだと思った。
『モモ』というのは、時間泥棒に奪われた時間を、主人公の少女が取り戻しに行くという、ごくごくシンプルなストーリーの童話だ。
この童話は、大人向けの哲学書かビジネス書ではないかと勘違いするほどメッセージ性が強い。少女が奪われた時間を取り戻しに向かう道中で、様々なキャラクターが登場する。そのやりとりを通して、「時間の大切さ」や「生きるとは」など、答えのない問いについて、読者に考えさせるのだ。
私が、この物語の中で、最も怖かったのが、時間泥棒たちが町の人から時間を奪っていくやり口だ。
彼らは、「時間を銀行に貯金しておけば利子がつく。人生はもっと長くなる」と言葉巧みに町の人をだまし、次々と彼らの時間を奪っていく。現代版、オレオレ詐欺とでも言えるかもしれない。
もちろん時間は貯金もできないし、利子なんてつかない。
失われたものは、失われたまんま。
もしかしたら、私も誰かの時間を奪っていたのかもしれない!
人の時間を奪うことは、こんなに罪深いことなんだ!
時間警察がいたならば、被害届を提出されていたかもしれない!
そう思うとゾッとした。
それからの私はというと、時間警察に逮捕されたくない一心で、できるだけ早く到着して、現地で時間をつぶすという先回り方式を採用している。
これならば、よっぽどのことがない限り、約束に遅れることはない。最近、増えてきたエキナカやエキチカのお店の充実ぶりも、私の遅刻防止に一役買ってくれている。
以前は、早く待ち合わせ場所についても、駅を出て別の建物に入らなければ、カフェが見つからなかった。しかし、今は駅の改札の中でも、ちょっと時間をつぶせる場所が増えた。
しかし、それでも油断すると遅れそうになる。そうすると、次の一手に出る。
それは、中途半端な時間に待ち合わせることだ。例えば、14:33分とか。普通に考えると、ありえないような待ち合わせ時間を設定する。
これはけっこう効いた。中途半端な時間なので、嫌でも意識してしまう。意識すると、行動が伴ってくる。結果、遅刻が減るというカラクリだ。
時間泥棒の話を思い出したおかげで、私は遅刻しない方法をあれこれ模索した。
今でも時々、遅刻ギリギリになることはあるけれど、遅刻はしていない。
ようやく泥棒家業から足を洗うことができたというわけだ。
あなたは誰かの時間泥棒になっていないだろうか?
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