メディアグランプリ

『危機に際し、即決即断で行動できる幹部社員を育てる方法』

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:酒井英之(ライティング・ゼミGW集中コース)
 
 
「まったくこんなことやって何になるんだろうね」
 
小学校のとき、年に1度必ず避難訓練を体験しました。
このつぶやきは私がそのたびにぼやいていた言葉です。
「訓練・訓練、給食室で火災発生」という
嘘のサイレンとアナウンス聞いて、
階段をみんなでゾロゾロ上履きのまま校庭に歩いていく。
それは正直言ってかったるいものでした。
私にとって避難訓練とは、
積み上げられた木材の炎が豪快な放水で消されていく、
ショー見物でしかありませんでした。
 
が、その後の人生の中で、避難訓練の大切さを
思い知らされる出来事をいくつか体験しました。
その一つが東日本大震災です。
 
多くの犠牲者を出したこの震災でも、
犠牲者をほとんど出さなかったエリアがあります。
釜石市の小学校の子供たちの生存率はなんと99.8%です。
これほど高いのは、先生たちが地震の発生直後に
避難所に走ることを子供たちに指示したからです。
 
この時、子供たちは三陸に伝わる「津波てんでんこ」に従って走りました。
「津波てんでんこ」とは、てんでバラバラで走るという意味です。
整列して点呼し、それから全員で行動するのではなく、
「とにかくバラバラで避難所に走れ!」これが指示だったのです。
 
随分いい加減な指示のように見えますが、
釜石市では、年に3回避難訓練をやっていたといいます。
したがって子供たちは避難所はどこにあるか分かっていました。
 
そして避難所までたどり着いた時、
ここではまだ土地の低い波に襲われるかもしれないということで
さらに高台に全員で上がりました。
素早く行動したから、時間の余裕があったのです。
これによって「釜石の奇跡」と呼ばれる生存率を実現したのです。
 
このような報道に触れ、私は経営でもまた
危機に瀕して何をするべきか訓練をしておくことが
とても重要なことだと思うようになりました。
 
私はこの道30年の経営コンサルタントです。
これまで幾度もクライアントの危機的状況に直面してきました。
そのたびに、その危機を見事に乗り切る逞しい経営者たちを見てきました。
彼らの行動に共通しているのは、危機に際して自分どうするべきか、
即決即断で動いたことです。
 
では、どうしたらそのような即決即断力が養われるかと言えば、
これはもうケーススタディしかありません。
避難訓練のように、場面を想定し、
「こんな時に、あなたならどうする?」と問いかけ、
シミュレーションするのです。
そして、「こんな時はこうする」と、予め決めておくのです。
 
それは、例えば次のような研修です。
クライアントは大手工作機械メーカーで、
受講生は次世代を担う若手の幹部社員です。
 
同社はブラジルに現地法人を持っていました。
この現地法人は日本や北米工場で生産した機械を仕入れ、
ショールームに展示し、そこから現地の企業に販売をしていました。
 
そのブラジルの現地法人が1998年、通貨危機に見舞われました。
ブラジルレアルが大暴落してしまったのです。
この時ブラジル現地法人の社長として日本から赴任していたA氏は、
現地法人を守るために三つの行動に出ました。
 
第一は手元に資金を作りました。
ショールームにあった機械を全部売りました。
早く振り抜けなければインフレ段がどんどん上がってしまい、
現金化することはほぼ不可能になってしまうからです。
 
次に現地に勤務するもののうち、
北米と日本からの出向者は自分を除いて全て帰国させました。
人件費負担を減らすためです。
 
そして残った現地で採用した数名の正社員スタッフに
あることを命じました。
ここで受講生たちに問題を出します。
「さてそのあることとは一体は何でしょう?」
 
この問いに若手の幹部たちは狐につままれた顔をしました。
彼らは、それまで先輩社長の武勇伝を、
映画を見る客のように聞いていました。
が、ここから先はあなたが主人公になって考えてみなさいと
突然ボールを投げられて、皆必死で頭を回転させました。
 
その後、幹部候補生達は自分の意見を発表しました。
しかし誰も正解できません。
答えはものすごく単純なことなのですが、正解が出ないのです。
 
それはまさに釜石市の津波「てんでんこ」と同じでした。
「津波てんでんこ」は避難の指示としてものすごく単純です。
しかし皆、それよりも良いやり方があるのではと探してしまいます。
危機の時の力強くて、効果のある正解は、訓練でしないと身につかないのです
 
皆が辿り着けなかった正解は、次のようなものでした。
「これまで買っていただいたお客様の機械のメンテナンスをせよ」
 
工作機械は、お客様の会社にとって財産そのものです。
もし、逃げ出してしまえば、あのメーカーは、
自分たちを置いて逃げたなんて言われかねません。
信用を繋ぎとめるには、どんなことがあっても現地に残る。
これが、この会社の選択だったのです。
 
この正解を知った幹部候補生達は一様に深く頷きました。
そして自分達の危機に際して何をしなければならないのか
1、 資金を作る
2、 固定費を最小限にする
3、 お客様を守る
を順番で理解したのです。
 
こうしたケーススタディは、
今回のようなコロナショックを迎えた時でも、
社員一人ひとりが自分で考え自分で行動する上で
とても役に立っています。
 
経営の避難訓練に当たる危機突破のためのケーススタディ。
あなたの会社でも是非取り組んでみてください。
 
 
 
 
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2020-05-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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