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私の家は、狭い。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:平良みか(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
私の家は、狭い。
17㎡のワンルームだ。
17㎡でぴんと来ない人には四畳半と言えば伝わるだろうか。
学生ならめずらしくもない話だが、不惑に足を踏み入れた大人(アラフォー)が住んでいるというと驚かれることが多い。ちなみに一人暮らしである。
 
家電は冷蔵庫と洗濯機、家具はデスク兼ダイニングテーブルとして使用してる横長のワークテーブルといす1脚、腰高の本棚、ベッド(マットレスのみ)。以上である。
 
私には夢があった。
 
こう書くと「ああ、この人は夢のために狭い部屋(家賃が安い部屋)に住んでお金を貯めているのだな」と思われるかもしれないが、それは誤解である。そんなキラキラした話ではない。
 
むしろ逆だ。私の夢は「目覚まし時計をかけない生活」である。
眠りたいだけ眠り、小鳥のさえずりとともに起きる。そんな生活がしたかった。
 
こんなことを夢と言ったら怒られるだろうか。しかし、考えてみてほしい。皆、本当に叶えたい夢はこんなささやかな、しかしささやかだからこそ難しい夢なのではないか。
 
人生は短い。
私は、夢を叶えることにした。
 
しがない会社員の端くれなので、何の対策もせずに眠りたいだけ眠っていたら、あっという間にクビである。
 
「目覚まし時計をかけずに起きる」には十分な睡眠時間が必要である。最低8時間。10時間くらいあっても望むところだ。
 
当時住んでいたところから会社までは、往復で3時間ほどかかっていた。私は迷わず通勤時間を削ることにした。会社の近くに住むことにしたのである。
 
アパートの更新時期が近づいてきたので、会社の隣にある不動産屋へ相談に行く。昼休みにちょっと寄ることもできるし、仕事帰りに内見にも行ける。家はあっという間に決まった。
 
ところで、家探しをする際に私は一つの決断をした。
 
会社が都心にあるので、会社の近くは家賃が高い。この問題から目を背けることはできない。
面積を狭くすれば家賃は安くなる。
しかし、家を狭くすれば今の荷物をすべて持っていくことはできない。
広さを取るか、近さを取るか。
私は、家財道具を処分することにした。
 
地上波デジタル放送に切り替わる時に買った東芝製32インチのTVを売り、そのTVが乗っていたお気に入りのインテリアショップのTVボードも売り、同じショップのソファも売った。
今までインテリアにかけてきたお金と、リサイクル店の引き取り提示金額の差額の大きさにめまいがした。しかし夢(目覚ましをかけずに起きる生活)のためである。
 
さらに、本は半分以上ブックオフに売り、着なくなったブランド服や使わなくなったカバンなど、多少なりともお金になりそうなものはメルカリで売りまくった。
 
そして私は、夢を叶えた。
 
現在の私の生活はこうだ。
 
スズメの鳴き声が聞こえる。
アパートの敷地に植えられたオリーブの木があり、木漏れ日がキラキラと降りそそぐ。
「今日もいい天気だな」と思いながら目をこすって伸びをする。
 
時間は朝8時。
お湯を沸かし、パンを温める間に顔を洗って身だしなみを整える。スマホでネットラジオを聴きながら朝食を摂る。
食べ終えたら食器を洗って拭き上げて、シンク下の定位置に戻す。歯磨きをして化粧をして、出かける準備は完了。
 
駅までは歩いて10分。坂があるので良い運動だ。
駅に着いたら電車で二駅。ドアtoドアで15分。これが私の毎朝である。
 
私は、今の生活を心から気に入っている。部屋は狭いけれど、必要なものは揃っている。
 
「あったら良いな」というものは無数にある。しかし、それらを捨てたからこそ今の生活があると理解しているから、再びお金を出して手に入れようとは思わない。
 
「何も持たない40歳」は格好悪いのではないかと思っていた。歳を取れば、歳相応に家も整えて、人を呼んでも恥ずかしくないようにして・・・・・・。
30歳になった頃から、私はそんなふうに思い、せっせと家財道具を買い集めてきた。
TVを見るのはそれほど好きでもなかったのに、一人暮らしにしては大きい32インチのTVを買った。それを載せるためのTVボードも必要になり、大きなTVを見るためには大きな部屋が必要になった。部屋が広くなると、空間を埋めるためにソファを買った。
 
40歳になって、それらを手放した。
見栄えのする家具は持っていないけれど、ちっとも恥ずかしくない。なぁんだ。
そんなもの、手放して良かったんだ。
手放したら夢が叶ったじゃないか。
 
部屋が狭いと、家事の手間もかからない。モノを圧倒的に減らしたので、失くし物を探す時間や、モノを整理する時間もほぼゼロだ。
今まで家事をしたり、なんとなくTVを観たりしていた時間で、本を読んだり、ブログを書いたり、ジョギングを日課にしたりもできるようになった。
睡眠以外の小さな夢も、どんどん叶っている。
 
私はさらに気づいた。そうか、手放したんじゃない。厳選したんだ。
 
今の空間、今の時間は、手放せるものを手放してなお、残ったものだ。空間に限りがあるからこそ、不要なものを削ぎ、必要なものを残すことができたのだ。
 
私の家は、狭い。
ああ、狭い家にして、本当に良かった。
 
 
 
 
***
 
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2020-05-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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