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「繊細さん」のものがたり


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:越前谷美佳(ライティング・ゼミGW集中コース)
 
 
あるところに、人一倍繊細で傷付きやすい女性がいた。
 
「神経質だよねー」
「真面目すぎじゃない?」
 
これまで、幾度となく言われてきた言葉である。
そして、幾度となく傷付いてきた。
 
近くに機嫌の悪い人がいると落ち着かない。
ついつい人の顔色を窺ってしまう。
一日中人といるとぐったり疲れる。
冗談でさらっと言われたことを受け流せずに傷つく。
 
これらは全部、自分の「気の弱さ」によるものだと思っていた。
ささいなことが気になるあまり、病気なんじゃないかと不安になったこともある。
そんな自分に生きづらさを感じ、どうにかして直そうと、色々なことをやってきた。
 
「ポジティブになろう」「強く生きよう」みたいなライフハック記事を読み漁った。
明るくてタフな友人になりきってみたりした。
自己啓発本もたくさん読んだ。
メンタルを強くするには身体的な強さが必要だと思い、筋トレを始めたりした。
 
だが、どれもしっくりこなかった。
 
そんなある日、Amazonからのおすすめで出会った一冊の本があった。
 
それが
『「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる「繊細さんの本」』。
 
そこにはある概念が書かれていた。
 
Highly Sensitive Person(HSP)
日本語で言うと「とても敏感で繊細な人々」。
 
病気ではなく、気の弱さでもなく、生まれながらにして持っている気質であり、脳神経の回路が人より発達していることによるそうだ。近頃認知度が高まり、関連書籍なども多数出ているらしい。
その本ではHSP気質の人々のことを、親しみを込めて「繊細さん」と呼んでいる。
読んでみると「繊細さん」の特徴は見事に、彼女がこれまで悩み、苦しんできたことばかりである。
 
思えば昔から人間関係には特に苦労してきた。「苦労してきた」というよりも、個人的に悩みこんでいただけかもしれない。
 
いわゆる「気まぐれ」「気分屋」という人が苦手だ。機嫌が顔や態度に出やすい人はなおさらである。オンとオフの差が激しく、オフの日に出くわそうものなら気が気ではない。職場では気まぐれな人に何度も振り回され、疲弊した。
 
人の気持ちが手に取るようにわかってしまう。それゆえ、相手の機嫌が悪いと「おはようございます」と出勤の挨拶をした時点で「この人今日アウトだぞ~」と気付くのである。そんな日は近くにいるだけでそわそわするが、仕事なのでどうしようもない。同僚は「そんなに気にしなくていいって~」と笑っているが、「気にしない」ということがそもそも不可能なのだ。逆に気にならない人の神経が理解できないとすら思っている。機嫌の悪い人の顔色を常に伺い、あえて機嫌を取るような言動をして心が消耗してしまう。そんな自分にも嫌気がさした。
 
ずっと、自分だけだと思っていた。
だけど、研究によればそんな人は一定数いるらしい。しかも5人に1人という意外と高い割合で。
 
彼女はこの気質について徐々に周りに打ち明けられるようになった。
「私の神経質さって性格というよりは生まれ持った才能らしいよ。笑笑」
「外側からの刺激に人よりも繊細で敏感なんだよね。音とか強い光とか匂いとか」
「ずっと人と一緒にいるとぐったり疲れるんだよね。たまにひとりきりの時間がないとしんどい」
「近くに機嫌悪い人がいるとそわそわしちゃう。自分何か悪いことしたかなって。あと急かされるのも超苦手」
 
これまでうまく言葉にできなかった自分の特性を家族や親しい友人に伝えることで、少し気持ちが楽になった。
 
それ以降も彼女はネットやSNSを通じてHSPについてよく調べるようになった。
SNSを見ていると「自分の繊細さとうまく付き合う」という趣旨のオンライン講座が開講されると知り、さっそく申し込んだ。ネットを見ていると同じようにHSPで悩んでいる人がたくさんいることを知った。
 
自分だけじゃなかったんだ、と心強くなった。
 
また、敏感・繊細であるがゆえ、繊細さんは「才能の宝庫」でもあるのだと知った。
 
感受性が人一倍豊かなので美しいものや美味しいものをじっくりと味わうことができる。
想像力が豊かなので相手の気持ちを思いやる力がある。
弱っている人に気付き手を差し伸べてあげることができる。
 
それから、自分が生きやすくなるための方法も身に付けた。
 
機嫌の悪い人とは物理的に距離をとる。
無駄な愛想笑いやお世辞を言うのをやめる。
気が進まない飲み会や遊びの誘いは断り、家で読書や映画など一人の時間を楽しむ。
休みたいときには休む。
 
それ以降、見える世界は徐々に変わっていった。
今まで生きづらいと感じていた世界が、愛にあふれているような感覚を覚えた。
強くしなやかに生きられている感覚を身に付けた。
水を得た魚のごとく、生き生きとしはじめた。
圧倒的に生きやすくなった。
あれほど息苦しかった世界で自分が呼吸をしている実感が戻ってきた。
 
「普通の人のふりをする」「どうにかして周りに合わせる」ことをしてきた彼女は自分の魅力に気付き、時に傷つきながらも、本来の自分を取り戻していった。
 
すでにお気づきかと思うが、
これは紛れもなく私自身のストーリーである。
 
あなたの周りに、心優しいけどちょっぴり傷付きやすい人はいないだろうか。
もしくはあなた自身がそうでないだろうか。
それはもしかすると、「繊細さん」である可能性が高い。
 
「繊細さん」は、ありのままの自分を取り戻すことで生きやすさを手に入れることができる。
「鈍感な世界」でも生きていくことができる。
どうか、希望をもってほしい。
 
世界は、愛にあふれている。
 
 
 
 
***
 
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2020-05-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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