メディアグランプリ

小さな行動をするだけで


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:クエ(ライティング・ゼミ GW集中コース)
 
 
私は、何年経っても同じ失敗を繰り返している。学んでいないのか、学ぶ気がないのか、変えたいのか、変える気がないのか、自分は本当の間抜けだと思う。何度反省を繰り返しても、自分を変えることができない。あまりにも成長しないから、私は発達障害かもしれないと父の前で呟いたら、「今の若者は、何でも病気のせいにしたがるんだな」と、全く耳を傾けてもらえなかった。そぅ、ただの甘えだ。何かのせいにしたかっただけだ。
 
自分の行動で人生は変わるという。確かに、小さい行動で失敗の次の出来事が、前向きなものに変わっていった。
 
これは約10年前、私がヨーロッパにバックパッカーで一人旅した時のこと。私は大学時代、アメリカに留学をしていた。大学時代の夏休みの思い出として、日本から行くよりもはるかに近いヨーロッパに行こうと決めた。そして、イギリス、フランス、スペイン、イタリアを電車で縦断しようとユーレイルパスを購入した。ユーレイルパスとは、EU圏内31ヵ国の国鉄乗り放題の鉄道パスのこと。ワクワクしながら、出発日を待った。
 
出発日当日。いつものように少し慌ただしく家を出た。空港に到着し、手続きを済ませ、ロンドン行きの飛行機に乗り込んだ。飛行機が離陸し、落ち着いた頃、ショルダーバックを開き、ゾッとした。
 
「え? もしかして、私、ユーレイルパス忘れた!? 朝、持ち物確認した時、机の上に出した! その後、戻してない! 忘れた、やばい!! 」
 
とっさに、どうすれば良いか考えていた。ユーレイルパスの購入履歴を見せれば何とかなったかもしれない。しかし、私の頭はそこまで回らなかった。
そこで私は行動に出た。私は、持参した地球の歩き方を開き、「イギリス」のページを何度も見返した。この飛行機で、とりあえずロンドンまでは行ける。その先の予定は全て無くなるけど、せっかくの夏休みを無駄にしたくなかった。ロンドンは両親が出会った場所だし、大好きなビートルズの町リバプールもある。その他はあまりよく知らないけど、イギリスを縦断しようと決めた。飛行機がロンドンに着くまでの間、寝る間も惜しんでどこに行くかを徹底的に調べた。
 
イギリスでの私の旅は最高のものになった。旅の途中、イギリス人旅行者から「あなたは私たちよりもイギリスのことを知っているわね」と言われ、少し誇らしくなった。あの時、飛行機の中でユーレイルパスを忘れたことばかりに気を取られ、気持ちが沈み、悶々として何も動かなければ、イギリスでの思い出や出会いは私の人生に影響を及ぼしていなかっただろう。
 
あれから10年。今となってはあの失敗は良い思い出になっていた。たまに笑い話として家族の話題になったりもする。
 
社会人になってからも夏休みはあった。2年程前、長期休暇をもらい、九州一人旅に行った時のこと。友人宅を訪問したり、一人観光したり、温泉巡りしたりしながら、熊本、宮崎、鹿児島をレンタカーで周遊しようと計画していた。初日は熊本に泊まり、翌日の早朝からレンタカーを借りて阿蘇山・大観峰を越えて高千穂まで行く予定だった。
 
次の日、予約をしていた熊本駅近くのレンタカー屋に車を取りに向かった。レンタカーの受付担当者に名前を伝え、免許証を出そうと財布を取りだし、急に思い出した。私が、出発前に自宅で免許書をコピーしたことを。長期休暇で家を留守にするから、今できることはやっておこうと、特に急ぎではない何かの手続きを済ませる為に免許証をコピーしていたのだ。
 
「何で余計なことするの、私……」
 
明日は宮崎で友人と会う約束をしている。絶対遅らせられない。そして、行動に出た。
 
レンタカー屋を出て、家に急いで連絡した。
 
父:「もしもし、無事に着いたか?」
私:「お父さん、今熊本に居るんだけどさ、実は免許証を忘れたんだ。コピー機の前に置いてあるから、これから伝える住所に速達で送ってくれないかな?」
父:「何やってるんだ! そんなこともできないのか! レンタカー借りるのに、免許証忘れるなんて聞いたことないぞ! 」
私:「分かってる、迷惑かけるけど、とにかく送って」
 
免許証がレンタカー屋に届いたのは、正午前だった。ありがとうお父さんと心の中で呟いた。
10年前のデジャブだった。
急いでエンジンをかけ、宮崎に向かい、友人宅には予定通り到着することができた。もちろんそのネタを酒のつまみにしながら、みんなと私の間抜けさを笑い飛ばした。あのまま何もせず、父へ電話をかけなければ、この時間はなかっただろう。
 
10年前と全く変わっていない自分がここにいた。誰かのせいにしたくても、できない。10年経ってまたデジャブ。10年前は飛行機の中で予定変更。今回は車に乗ってルート変更。
 
ただ、一つ言えるのは、起きた結果に対してどう動くかで、その後の流れがいくらでも変えられたということ。大それた行動なんかではなく、本当に小さな行動で変わった。起きた結果に対して、自分がどう動くかで、その後の人生が前向きなものになるか、暗い物になるか、やりたいことができるか、できないかが決まる。そこで、やりきったか、やりきらなかったかで、自分を認めてあげることも、否定することもできる。すべては、行動で変わる。
 
 
 
 
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2020-05-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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