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セーラームーンになることを諦めたら楽になれた

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:Aya Fukuhara(ライティング・ゼミGW集中コース)
 
 
誰かになりたいと思ったことはあるだろうか。
私は子どものとき結構本気でセーラームーンになりたいと思っていた。
明るくて元気で優しくて、誰からも愛されて、地球を守れるくらい強い。そういう人になれたら楽しいだろうなと。
でも病弱で外で遊ぶより本を読んでいる時間のほうが多かった私が、セーラームーンキャラにはなれることは決してなかった。
 
中学、高校生時代に洋画にハマってからは、将来は映画翻訳者の戸田奈津子のように活躍したいと思うようになった。彼女が卒業した大学で勉強すれば翻訳者になれるだろうと安易なことを考え、都内の大学の英文科に行くことを決めた。
高校3年生の1年間で受験勉強を詰め込みなんとかその大学に入学したものの、得意だと思っていた英語は帰国子女だらけの英文科の授業では歯が立たず、すぐに落ちこぼれた。せめてキャンパスライフを楽しもうと飲み会とバイトばかりの大学生活に勤しんで、英語ができない劣等感を誤魔化して過ごしていた。
 
そのまま就職活動をしなければならなくなるころには、特にやりたいこともなく、就職氷河期の中で唯一採用してくれた小さい広告代理店に入社した。
その会社では、斎藤さんという30代の女性が取締役として活躍していた。美人でスタイルが良く、管理職でありながらも営業としてもトップの売上を誇り、メディアでも取り上げられる絵に描いたようなキャリアウーマン。
安易に人に憧れる私はすぐに「この人を目指そう」と決め、斎藤さんのようになるために毎日彼女と同じように働いた。
毎日終電か2時か3時頃にタクシー帰り。クライアントからの電話には24時間365日対応。
それが日常になってくると、疲れも麻痺してきて、なんとなく仕事を頑張っている自分が輝いていると錯覚した。
目の前の仕事をなんとかこなすだけで精一杯、社内で目立つほど良い業績は挙げられず、いつも睡眠不足で、毎日レッドブルを飲んでいた。
 
そんな生活が3年ほど続いたある日、仕事の関係である人のインタビューに立ち会うことになった。
その女性はアリアナ・ハフィントン。世界最大級のオンラインニュースサイトを立ち上げ、フォーブス誌の「世界で最も影響力のある女性」に選出されて、カリフォルニアの知事選にも出馬したことがあるとにかくすごい女性だ。
そんな人の来日インタビューが間近で聞けるということで、私は興奮していた。
インタビュー当日、若い記者が彼女にこんな質問をした。
「悩みを抱えながら仕事に打ち込んでいる、日本の20代の若者にアドバイスをお願いします」
その答えはシンプルなものだったが、なぜか雷で打たれたような衝撃を受けた。
「1日8時間以上睡眠を取ること。仕事を含め人生を楽しむこと。何より自分自身を愛してください」
 
この言葉が頭から離れず、ずっと自問自答していた。
最後に8時間も寝たのはいつだっただろう。
私は本当に仕事を楽しんでいるだろうか。
自分を愛せているだろうか。
 
どんなに頑張っても斎藤さんのようには仕事ができなかった。
がむしゃらに働いてなんとか自分の中の劣等感を誤魔化していただけだ。
 
翌週私は斎藤さんに相談の時間をもらい、退職したいことを伝えた。
斎藤さんは驚きを見せたものの、退職届を受理してくれた。
 
次の就職先も決めないまま退職届を出してしまい、3ヶ月ほど無職の期間を過ごした。
旅行に行ったり、就職のために英語の勉強をしてみたりしつつ、この間に自分を見つめ直そうと、
「やりたいこと100リスト」をリストアップしてみた。
世界中を旅したい、グローバルに働きたい、本を沢山読みたい、デートする時間がほしい……etc.
 
数日かけてリストを眺めているうちに、やっと気がついた。
セーラームーンになりたいとか、戸田奈津子になりたいとか、斎藤さんになりたいとかは結局本当になりたい自分ではなかった。
自分ではないものになろうとして、その差に落ち込んで勝手に劣等感を育てていただけだった。
 
もちろん彼女たちに憧れて得たものは沢山ある。正義感と道徳観はセーラームーンを見て培ったものだし、戸田奈津子の翻訳に憧れなければ英語の勉強はしなかった。仕事の基本は全て斎藤さんに叩き込んでもらった。
 
でも、私は彼女たちではない。
格好が悪くても、評価されなくても良い。自分が楽しいと思えることに打ち込もう。
 
そう思えるようになってから、自然に次の就職先が決まった。
ワークライフバランスを重視するその会社では、年に数回休みをとって旅行に行く余裕ができ、海外出張に行く機会もある。
当時作った「やりたいこと100リスト」にはいくつもチェックマークがついた。
セーラームーンみたいになれなかった自分が、やっと肯定できるようになれたと思えた。
 
 
 
 
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2020-05-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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