マトリョーシカという名の沼
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:金澤 鮎香(ライティング・ゼミGW集中コース)
皆さん、マトリョーシカはご存知だろうか。カパっとお人形のお腹をあけると一周り小さいお人形が出てきて、更にその子から小さい子が出てきて……、入れ子状になっているロシアの工芸品である。雑貨店やお店等で飾られているのを見たことがある人もいるかもしれない。
私はこのマトリョーシカが好きで5年ほど前から地道に集めている。マトリョーシカは只のお土産物とあなどるなかれ! 知れば知るほど嵌ってしまう沼の世界なのだ。
特に私が愛してやまないのは「アーティスト物」と言われるマトリョーシカ。いわゆるお土産物として不特定多数の人によって大量生産されるマトリョーシカと違い、アーティストさんが1つ1つ、デザインから仕上げまで一個の作品として創り上げる作品としてのマトリョーシカである。
こう聞くと「なんだか難しそう・・・・・・」「お高いんでしょう?」と思われる方もいるかもしれない。いやいや意外とそうでもないのである。
私が思うアーティストマトリョーシカの沼ポイントは以下の3点だ。
①作家さんのちょっと個性的なストーリー
マトリョーシカを扱っているロシア雑貨店に行くと、直接作家さんからマトリョーシカを買い付けたバイヤーさんから作家さんのお話を聞くことができる。
例えばガモアさんという作家さん。一番小さな子までびっしり丁寧に描きこまれた絵柄でファンも多い。ただこの作家さんかなりのお歳でもうおばあちゃん。加えて超が付くほどのヘビースモーカー。
「いつ死んでもおかしくないから、買うなら早めに買っといた方がいいよ」とバイヤーさん。
どんな商売文句だよ! と突っ込みつつも、もしかしたらもう二度と出会えないかも……。そんな不安でついつい買う気になってしまう。
「最近は、ガモアおばあちゃん、もう年でド田舎に引っ越しちゃったから、買い付けに行くのも大変なの、正直もう行きたくない」
どんなバイヤーやねん! と思わないでもないが、そんな遠路はるばる私に出会うために来てくれたなんてありがとう。とお買い上げしてしまうこともしばしばだ。
これはほんの一例で、マトリョーシカ作家さんは、それぞれけっこう癖が強いので面白いエピソードが沢山聞けるのだ。
アーティストさんの性格やエピソードを聞きつつ、マトリョーシカを吟味する時間は至福の時間である。
②全て手描きのオンリーワン
アーティストさんによってデザイン、下書き、絵付けまで全て手作業で心をこめて行われる。何が楽しいって同じデザインだとしても微妙に顔の表情が違ったり、風合いが違うところ。マトリョーシカの女の子の表情に個性がでるのである。
「この子はちょっと強気そうな顔してるな」
「他の子に比べて優しくて性格良さそう!」
「グループアイドルのセンターなみにオーラがある顔立ちや……!」
どの子も魅力があって、全く同じデザインのマトリョーシカ数個を前に小一時間うんうん悩むのも楽しい。
悩みに悩んで決まった子が「やっぱり一番かわいい!」となるのもお決まりのパターンだ。
③中々市場に出回らないレア性
アーティスト物マトリョーシカは作家さんが作る量にも限りがあり、取り扱っているロシア雑貨店も限られているため、「出会い」が全て。
特にアーティスト物になるとコレクターも多い。コレクターは中々マトリョーシカを手放そうとしないから、ネットにもあまり出回らず、好きになった作家さんの過去の作品を集めることはかなり難しい。
正直私はそこまで頑張りすぎなくてもいいと思っている。お店でその時見つけた気になる子との「出会い」を大切にする。その子を大事にしているとひょんなきっかけで新しい子と出会えたり出会えなかったり。
最近は何でもインターネットで検索すれば手に入る世の中だけど、「ネットでは手に入りにくいもの」と「出会う」この感覚はマトリョーシカ好きの醍醐味だと思う。
以上、マトリョーシカの沼ポイントであった。
「でもお高いんでしょう?」
こうなると気になってくるのはお値段かもしれない。
アーティスト作品なのでもちろん作家さんや大きさにもよるが、安いものだと3,4千円~15万円くらいまで幅がある。多いのは1万円~3万円代。
これを高いと取るか安いと取るかは人によるかもしれない。
だが、同じ様にアーティストさんの絵画を買うことを思うとちょっとお得だと考えている。なんせマトリョーシカは立体だから360°頭のてっぺんから裏側までアーティストさんの作品を楽しめる。その上、中にもたくさん入っているのだ! 一番外側の子だけでなく中の子もそれぞれ個性があり、とってもお得な気分になれる。
あと大きさも大体は両手に収まるサイズが多く、作家さんのこだわりを手の上でじっくりと楽しめる。
マトリョーシカといえども、作家さんの芸術作品。
手のひらで頭をなでたり、裏側をひっくり返したり、触ったり、楽しみ方は人それぞれ。手の上で芸術作品を楽しむことができる贅沢なお人形なのだ。
もしちょっと気になったなと思った人はぜひネットで「ロシア雑貨店 マトリョーシカ」と調べてみてほしい。もし住んでいる地域にお店があったらぜひネット上だけでなくお店に足を運んでみてほしい。それがマトリョーシカ沼の入り口である。
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