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メディアグランプリ

美味しい料理は決断力でできている


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事: 十島 ゆり(ライティング・ゼミGW集中コース)
 
 
「女々しい人には、美味しい料理は作れません」
料理教室の先生は、教室初日にそう言った。
 
マンションの1室を貸し切って、開かれているその料理教室には
8名ほどの生徒が集まっており、全員20代そこそこの女性だった。
料理を習うことを、女性らしさをアピールする為のモテ修行の一環として
多少の下心をもって参加していたのは、私だけではなかったと思う。
 
シャキッと姿勢の良い、その先生は
最初に私たちに本日の献立を発表し、次にそれぞれの料理手順を簡単に説明してくれた。
 
今日の献立は、
揚げ焼きそば
くらげの中華サラダ
杏仁豆腐
 
早く食べたい!
と、思ったその時、先生が質問した。
 
「さて、どれから作った方が良いと思いますか?」
 
ん? どうゆうことだろう。
 
「お料理は全て、食べたいタイミングに食べられる状態で用意されていなければなりません。
レストランみたいに、食べている人と作る人が別であれば、シェフはお客様の食べるタイミングを見て料理を提供できますが、家ではそうもいきませんよね? 特に、家庭料理には段取り力が求められます。その為には、事前に手順を決断しておかなくてはいけません。さて、今日の献立はどのような順番で作るのが良いと思いますか?」
 
目が点になっている私たちを見ながら、「大丈夫よ」と言わんばかりの優しい目で、先生は私たちを見つめていた。
 
そうなのか。家庭料理とは、確かにそうゆうものだ。
私はてっきり、揚げ焼きそばの作り方と、くらげの中華サラダの作り方と、杏仁豆腐の作り方を教わるつもりでいた。
でも先生は、揚げ焼きそばとくらげの中華サラダと杏仁豆腐を同時に作る方法を教えますよ、と言って下さっているのだ。
 
なるほど。頭の回転が求められそうだ。
今日は沢山食べる事になりそうだからと、あらかじめお腹を少し空かせてから参加していた私は、最後までついていけるか急に不安になった。
 
「今日のレシピのなかで、一番作業に時間がかかりそうなところはどこだと思いますか?」
私は、さっき先生が簡単に一通り説明してくれた料理手順を思い出しながら
事前に配られていたレシピのプリントを見て考えた。
 
揚げ焼きそばも、くらげの中華サラダも、具材が多い。
豚肉、竹の子(水煮)、人参、椎茸、長ネギ、白菜、くらげ、きゅうりにハム
洗ったり、切ったりするのに時間がかかりそうだ。
特にサラダの具材は、かなり細く切る事が求められそうである。
私は、スーパーのお惣菜コーナーに並ぶ中華サラダを思い出して、思った。
 
「次に、今日のレシピのなかで、一番待ち時間がかかりそうなところはどこになりそうか考えてください」
 
くらげの中華サラダに入る春雨を水で戻すのと、具材と調味料を全て混ぜ入れて味をなじませるのは時間がかかりそうだ。あと、杏仁豆腐も冷やし固めるのに時間がかかりそうである。
 
ん?
 
杏仁豆腐が固まるのには、どれくらいの時間が必要なのだろう。書いていない。
でもプリントには、寒天や牛乳などを沸騰させてから粗熱をとって、冷やすと書いてある。
 
どうやら今日の献立のなかで、一番待ち時間がかかりそうなのは杏仁豆腐で決まりのようだ。
 
「わかりましたか? 作業時間が長くかかりそうな料理と待ち時間が長くなりそうな料理を見比べた時、どちらから先に作り始めるとより早く3品が完成するかを考えて、作業に取り掛かり始めれば家庭料理は充実します」
 
作業量が多い料理と待ち時間が長い料理って、必ずしも一緒じゃないんだと
その時、初めて気がついた。
 
今日の献立の場合、
揚げ焼きそばやくらげの中華サラダの具材切りと
杏仁豆腐の寒天が固まって冷えるのとでは
どちらがより時間がかかりそうなのかを考えればいいのか。
 
別に包丁さばきに自信があるわけではないが
どう考えても、沸騰させたものを冷やす方が時間がかかる事は明白だった。
 
よって、献立を作り始める順番は
杏仁豆腐→くらげの中華サラダ→揚げ焼きそば、に決断された。
 
揚げ焼きそばと中華サラダを談笑しながら、食べきったころには
ひし形に切られてシロップに浮かぶ杏仁豆腐は気持ちよく冷えて
食事の華を飾ってくれた。
 
美味しい料理は決断力で出来ている。
 
あらかじめ、何をどのような順番で作るかを、きちんと決めてから作り始めなくてはいけない。
そうでないと、食卓には冷えた揚げ焼きそばと、ぬるい杏仁豆腐が並ぶことになる。
 
それからも私は、その先生の料理教室に通いつづけた。
先生曰く、料理中は様々なタイミングで素早い決断力が求められるとのこと。
いつ、下準備をはじめるのか。いつ、調味料をいれるのか。いつ、火を加減するのか。
ダラダラ決断すると、焦げたり、水っぽくなったり、味が決まらなくなったりする。
だから、なかなか決断ができない女々しい人には美味しい料理は作れないのだと。
そんな男前な先生のお陰で、私の決断力はだいぶついたと思う。
 
献立をみれば、いつ何をどのようにするべきか、すぐに決断できるようになった。
おかげさまで、私の料理の腕はものすごく上がったと思う。
今なら、どんな人の胃袋も掴まえられる自信があるので、早く、好きな人に作ってあげたいと思うのだ。
 
こんな、良い事づくめの料理教室ではあったのだが、一つ思わぬ弊害が生まれてしまった。
 
恋に落ちづらくなってしまったのだ。
 
気になる男性とごはんに行っても、相手がメニューを決めるのに時間がかかりすぎると、一気に冷めてしまう。
相手が遅いのか、私が早すぎるのかは正直なところわからない。
 
でも、いいのだ。
モテの一環で始めた料理は、今では私の舌を喜ばせてくれている。
それでも、もし好きな人が現れたら、その時は全力で胃袋を掴みに行けばいいだけだ。
 
 
 
 
***
 
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2020-05-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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