メディアグランプリ

小さな野心、大きな野心


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記事:平良みか(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「来世で行けたらいいな」
5年前の私は、本気でそう思っていた。
 
フランスに、ジヴェルニーという田舎町がある。パリから電車で1時間程の距離だ。
日本で言えば、上野から常磐線に乗って土浦あたりまで行く感覚だろうか。都会から郊外へ、ちょっとした小旅行。でも日帰りも余裕。そんな距離感である。
 
ジヴェルニーには、画家クロード・モネが晩年を過ごした家と、モネの代表作である「睡蓮」を描いた庭がある。この庭を見に行きたいと思った。
 
行きたいと思ったのは5年前だ。Facebookに誰かが写真をUPしていて、世の中にそういう場所があると知った。
モネの絵は好きだ。好きな画家が描いた風景を見られる。それは何だか素晴らしいことに思えた。
写真の風景も素敵だった。作り込みすぎない、それでいて計算された緑あふれる庭園。どこか日本を感じさせる池のほとり。
「ここに行ってみたい」と思った。
 
しかし当時の私がその次に思ったことは、冒頭の「来世で行けたらいいな」だ。我ながらひどい。来世って。来世があるかどうかも分からないのに、後回しにするにも程がある。
 
だが、フランスは遠いのだ。パリまでなら大人として頑張れば何とかたどり着けそうな気はするが、その先は想像もつかない。お金も心配だが、命の危険がないかも心配である。フランスの田舎町でスリに遭って一文無しになったら? 誘拐されたら? 言葉も通じない。何といってもフランス語は「こんにちは」と「ありがとう」しか分からないのだ。無事に帰って来られるわけがない。
 
だから「来世で行けたらいいな」と思いながらそのまま月日を過ごした。
 
転機は2019年の年初めだった。とあるオンラインサロンに入り、そこで「週末野心手帳」に出会った。
 
「週末野心手帳」はその名の通り、「週末の野心」を叶える手帳だ。はあちゅうさんと村上萌さんがプロデュースをしている手帳で、ご存知の方も多いかもしれない。ピンクとブルーの表紙が目印だ。ちなみに私はブルー派である。
 
週末にやりたいことを書く「WEEKEND PLAN」という欄があるのが特徴だ。
 
友人との約束を除けば週末の予定を手帳に書いたことがなかった私は、そこに「小さな野心」を書き始めた。
「カフェに美味しい朝食を食べに行く」とか、「パンケーキを焼く」とか、可愛らしい小さなことだ。
しかし、なかなか油断ならない。小さすぎて、意識しないとあっという間に「やらなければならないこと」に塗りつぶされる。
ふわふわのパンケーキを焼く予定だったのに、賞味期限が迫った焼きそばやうどんがランチになったことも数知れずだ。
 
書いたことのいくつかは叶わなかったが、いくつかは実現することができた。
日曜の朝に早起きして憧れのカフェで朝食を食べることが出来たときには「私、けっこうやるじゃん!」と自画自賛した。自分で自分をVIP扱いしているような、くすぐったい気分にもなった。
 
こうして小さな野心を叶えているうちに、ふと、気づいたのである。
「もしかして、ジヴェルニーにも行けるんじゃないか?」と。
 
その年は曜日まわりが良く、夏休みが少し長めに取れそうだった。そして6月に支給されたボーナスが、慎ましいながらも予想よりも少しだけ多かった。
旅行に必要な「時間」と「お金」が揃った。
 
通帳に記帳されたボーナスの振込額を見るやいなや、HISに飛び込んで飛行機とホテルの予約をした。3泊5日。ヨーロッパ旅行としては最短である。飛行機はもちろんエコノミー。空港からホテルまでは路線バス。ホテルは食事無しで泊まるだけ。その代わり、ジヴェルニー行きの電車が発車する駅の目の前だ。
 
それから、インターネットを駆使して、パリからジヴェルニーへ行く電車の時間を調べた。Googleの翻訳機能に助けられながら、休日を2日ほど潰してようやく、往復の電車チケットとモネの庭の入場チケットを購入することができた。
 
そして、私の大きな野心はあっさり叶った。
 
チケットを購入したら、あとは寝坊しないように起きて、チケットを忘れずに持って出かけるだけだ。私は寝坊することもなく、忘れ物をすることもなく、ジヴェルニーにたどり着いた。
そして、念願の庭を満喫し、スリにも合わず、誘拐もされずに無事に帰ってきて、今もこうして生きている。
 
おそらく、人間の野心は「ポイント制」なのだ。小さな野心を叶えていくと、ポイントが貯まって、大きな野心も叶えることができる。
そして、「ポイント」は「自分への信頼」だ。自分がやりたいことを自ら叶える。すると、自分への信頼度が上がる。そうすると、もっと大きな、やりたいことが叶えられる。
 
今のご時世は、我慢しなければならないことも多い。人様に迷惑をかけるわけにはいかないから、家の中でじっとしている時間も長い。
 
でも、その中にも自由はある。野心を抱けるすき間はある。
例えば朝食にフレンチトーストを食べることや、TVをつけずに音楽をかけて本を読むことや、次に旅したい土地を調べて妄想することだ。そういう小さなことも、立派な野心である。
 
私は今日も、小さな野心を叶えてポイントを貯めている。いつかまた、大きな野心を叶えるために。
 
 
 
 
***

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2020-05-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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