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それでも、成功したい?


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:長尾創真(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「決断とは、決めて断つこと。成功するためには、断つことが大事」
ぼくは、この言葉を盲信していた。
 
大学4年、12月。
ぼくは、ビジネスに、全力を注いでいた。
 
「このまま卒業して、就職していいのか」
「成功できるのか」
 
悩んでいたぼくは、30万円を払い、ビジネススクールに通った。
自分の力で、お金を稼ぐためには、どうしたらいいかを学んでいた。
 
正直、始めた時は、後ろめたさを感じていた。
 
就職しないことは、人と違う道に進むことになる。
みんなに、胸を張って、このままいけるのか。
 
本当に良いのか、迷っていた。
 
ある日、博多のカフェで、そのことをアドバイザーに相談した。
そのときに、ものすごい剣幕で、こう言われた。
 
「決断とは、『決めて断つ』こと。成功するためには、断つことが大事だよ」
 
ぼくは、その熱量と、圧力を全身で受け止め、その言葉を信じた。
真面目に、真正面から受け取った。
 
12月下旬。夜も更けて、冷たい雨の降る日。
僕は、Twitterで、ビジネスを始めたことを公表した。
 
退路を断つためだ。
 
ぼくは、大学4年間ヨット部だった。
この日まで、ありがたいことに、同期から遊びの誘いを頻繁に、もらっていた。
 
でも、あまり遊びには行かなかった。
後ろめたさを感じながら、「今日は、予定があって」とはぐらかしてビジネススクールに行っていた。
 
だから、退路を、断った。
ビジネスをすることを、公表した。
 
そして、その後。
僕は、ヨット部のみんなを突き放した。
 
自分がしていることは、まるで絶対的に正しいような雰囲気。
見せかけの強がりをした。
一緒に頑張ってきたみんなが、不快に感じる、投稿、振る舞いをした。
 
それは、一途に
 
「決断は、決めて断つこと」
 
を盲信していたからだ。
 
もちろん、そんな対応をしていたら、自分の周りからひとは離れていく。嫌われる。
 
退路を捨てたぼくは、さらにのめり込んだ。
 
「これでいい。これでいい」
 
内定が決まっていた会社に、断りの電話を入れた。
就職のとき、お世話になったひとにも、就職をしない電話をした。
 
1日15時間、ビジネスにつぎ込んだ。
お金がなくなり、一日に、おにぎりを二つしか食べない日もあった。
 
「これでいい。これでいい」
 
1月中旬。ぼくは、親に話した。
「就職を蹴って、自分でビジネスをする。学校にも、もう行かない。
ビジネススクールにいる人達のようになる。もう決めたから」
 
そう言って、言い分も聞かず、突き放した。
 
思春期に、ぼくは、反抗期もなかった。
親に切れたことは無いし、ましてや突き放したこともない。
 
初めての反抗だった。
 
成功すれば、きっといつか応援してくれるようになる。
自分のことを応援してくれる。
 
そう思い込んで、突き放した。
 
「これでいい。これでいい」
 
色んなひとと、関係を切った。
ビジネス一本で生きていく。そう決めた。
 
これで、自分は、成功できる。
 
「これで、いいんだ」
 
一週間後。
「母が、寝込んだ」と連絡が来た。
 

 
パニックになった。
 
自分のせいで、母さんが寝込む……?
 
自分がしていることは、間違ってる……?
いや、でも、きっと成功につながるはず。
自分で自分の人生は決めないと。いや、でも……
 
「これで、良いの……?」
 
そう思うと、目の前のことに手がつかなくなった。
夢中なときは、考えないことを考えるようになった。
 
自分の本当に大事なものって。何?
成功って。何?
友達、家族より大事なものって。何?
 
もう、なにも。分からなかった。
 
自分がこの数ヶ月してきたことは、間違っていたのではないか。
そう思うようになった。
 
「決断」
 
ぼくは、ひとを断ち切った。
自分の人生で、何度もなんども、助けてもらって。
一緒に苦難を乗り越えてきた人たちを。断ち切った。
 
「自分の本当に大事なものって。何?」
 
頭の中で、何度も何度も、繰り返される。
 
答えは、明確だった。
「大切なひと」だ。
 
自分がこれまで。
たくさん。たくさん。お世話になってきた、ひと。
 
辛いとき、いつも近くにいてくれた、みんな。
歓喜の瞬間、一緒にいた、みんな。
 
みんなが大事に、決まってる。
そのひと達を、全部切り捨てて進んで。なんになるんだ。
 
もう、答えは、それしかなかった。
 
だからこそ、大事なひとを失った事実に、直面した。
 
そのことに気づいて。
ぼくは、引きこもるようになった。
 
ビジネススクールには、行けなくなった。
教えてくれることは、もちろん勉強になった。
しかし、また自分が盲信するのが怖かった。
 
ヨット部のみんなに、連絡することは、できない。
 
家族には、ビジネスをやめることを伝えた。
家族は、安心していた。
しかし、実家は、山口で、ぼくは福岡に一人暮らし。
ぼくは一人、ふさぎ込んだ。
 
自分には、味方がいない。
完全に「断」ってしまった。
 
「終わった」
そう、思った。
 
ご飯を食べに出る以外は、外出しなかった。
誰にも会わず、誰にも相談せず、ただLINEや電話から怯える日々だった。
精神科医にも連絡した。
 
それから、どう復活したのかは、正直覚えていない。
留年したので、学校に行かなければならなかった。その義務感からか。
それとも、一人でふさぎ込むことに飽きたのか。
 
分からない。
でも、引きこもりはじめて、二ヶ月経ち、ぼくは外に出ていた。
 
でも。相変わらず、自分には、味方がいないと思っていた。
 
そんなとき、ヨット部の同期が、飲み会に、ぼくを誘ってくれた。
断ち切ってしまったと思っていた。みんなから。
 
怖かった。だから、返信には時間がかかった。
 
でも、このまま、仲違いしたままは、絶対に嫌だ。
「行くね」と返信した。
 
行くまでは、ずっと、胸が痛かった。
 
嫌な顔をされるんじゃないか。
許してくれてないんじゃないか。
誰にも相手にされないんじゃないか。
 
怖かった。
あんなに、ひどいことをした自分を、
許してくれるひとはいないと思っていた。
 
当日、怯えながら、飲み会の会場に行くと、
みんなは、いつもどおりだった。
 
「おー! そうま!」「よく来たな!」
そう言って迎え入れてくれた。
 
とまどいながらも、入った。
 
みんなは、いつもどおりだった。
 
もちろん、嫌なひともいたのかもしれない。
それでも、優しく迎え入れてくれた。
 
嬉しかった。
胸が、暖かくなるのを、感じた。
 
もう、裏切らない。
そう、決めた。
 
自分の大事なひとを、傷つけて。
自分の大好きな友人を、傷つけて。
自分の大切な家族を、傷つけて。
 
それで、得た、成功なんて。
ぼくには、いらない。
 
ぼくは、いま、十分、幸せだ。
 
頼って相談してくれるひとが、いる。
応援してくれるひとが、いる。
飲みに誘ってくれるひとが、いる。
 
そのひと達を。
大好きなひと達を。裏切らない。
 
大好きなひとには、大好きだ。と、言う。
尊敬しているひとには、尊敬している。と、言う。
 
失敗しても、許してくれるみんなを、ぼくは、一生大事にする。
 
決断について、改めて考えた。
 
決断とは、『断固たる決意』だと思う。
 
絶対にブレない、決意。
 
ぼくは、これから断固たる決意で、みんなを、愛します。
 
みんな。ごめん。
本当に、ありがとう。
大好きです。
 
 
 
 
***
 
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2020-05-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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