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貴方のあがり症は一生そのままです!


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:石見由起(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
胃が痛い。
胃が痛い。
胃が痛い。
手が震える。
喉が詰まる。
変な汗が流れる。
心臓はバクバクと音を立て、半径10mに鳴り響いている気がする。
私の名前が呼ばれ、ステージに上がる。
 
この後の20分間のことを、全く覚えていない。
私は重度のあがり症なのだ。
 
「お前、どこか身体で悪いところ、ある?」
20分のプレゼンが終わった後、会社の上司が話しかけてきた。
「昨日のリハーサルは良かったのに、今日はどうした?」
心配するのは良く分かる。ビデオを見ると、顔色は青ざめて蝋人形のようだ。
おまけに最初の3分は言葉を発していない。
プレゼン開始1分のところで会場が騒めき出し、2分で軽く野次が飛び始め、3分後には上司がステージに上がってきた。
結局90%を説明したのは上司だった。
 
どうしていつもこうなんだろう?
人前で話をしようとするたびに、手が震え、喉はカラカラ、悲しくもないのに涙目になる。
頭の中は真っ白。
この繰り返しだ。
 
どうすれば上手くいくんだろう?
そう思って今までも沢山の人に相談してきたけれど、役に立つ助言は得られなかった。
役に立たなかった助言その1。
「緊張しても仕方がない、って思うのよ!」
いや、思ってますから。ずーっと、ずーっと思ってますから。心臓にタトゥーが入るくらい思ってますから! 解剖したら解剖医が読めるくらいに刻み込んでますからぁぁぁ!
……と、心の中で言う。
そして夜、布団を被って泣く。
 
役に立たなかった助言その2。
「慣れれば治るよ」
慣れたら大丈夫に決まってるやろー!
それが出来ないから困ってるの!
一番難しいところを飛ばすなー!
……また布団を被って泣く。
 
何をやっても誰に相談しても、私のあがり症は治らなかった。
そして鬱々と悩んでいるときに、衝撃の出会いがやってきた。
 
その人の名前は今井純さん。彼は役者で演出家でもある。
私は彼のワークショップに参加していた。
テーマはずばり“緊張を取る”。
私にピッタリではないか! 今度こそ私のあがり症は治るかもしれない。
藁にもすがる思いだった。
 
「……え?」
ワークショップの最初で、私は言葉を失ってしまった。
純さんは飛び切りの笑顔で説明していた。
“即興芝居”をやりますよ!
二人一組になって、協力して即興で物語を作りますよ!
台本は無いですから、もし相手に「お父さん!」と呼びかけられたら、即座に“お父さん”になって答えて下さいね~。
 
即興?
台本が無いのにお芝居するの?
練習やらないの?
 
自分のミゾオチがだんだん冷たくなってくるのが分る。
私と組んだ相手は笑顔で話しかけてくれるけど、声が段々と遠のいていく。
水の中? 私、水の中に居るの? というくらい声がボワボワと響いている。
出てきた言葉はこれだけだった。
「ウ…… ウ…… ウ……」
 
休憩時間に鏡で見た自分の顔は、やっぱり蝋人形のようだった。
ションボリとうなだれている私の傍に、純さんがやってきた。
相談してみよう、せっかく参加したんだから。
あがり症を直すには、どうしたら良いんでしょうか?
 
衝撃的な答えが返ってきた。
「貴方のあがり症は、一生そのままです」
 
じゃあこの“緊張を取る”っていうテーマは詐欺じゃないか!
……と心の中で言った。
 
彼は続けた。
「あがり症は治すものじゃないよ。受け入れるものだよ」
あがり症を克服する、なんてよく聞くけどね、間違いだよ。
あがり症は病気でも怪我でもない。性質なんだから。
人間の性質は変わるものじゃないから、受け入れて生かす方法を考えなさい。
あがり症を受け入れたら、緊張も取れるってこと。
 
あがり症を受け入れる……
思わずオウム返しにつぶやいていた。
それからも何度も何度も、口に出してみた。
 
あがり症を受け入れるなんて、一度も考えたことが無かった。私にとって“あがり症”は恥ずかしいモノだったから。人に気付かれてはいけない、隠さなければいけないものだった。出来る事なら外科手術のように、切り取って捨ててしまいたかった。
 
その反面、あがり症は私そのものであることも確かだ。
怖がりで人見知り。すぐ緊張して、すぐパニックになる小心者。
今まで嫌いでたまらなかった部分だが、それも自分であることに変わりはない。もう少し、愛情を注いでも良いのかもという気分になってきた。
 
今まで可愛がってやらなかったから、不安になって暴れているのかもしれない。
あがり症を弱さと取らずに繊細さと解釈してやろう、うん、そうだ、そうしよう。
 
あれから数年たっても、未だに私はあがり症で、人前で話す時にはいつも手が震える。
ただ一つ変化があったのは、あがり症を隠さなくなったことだ。
手が震えたら、手が震えると観客に言ってみる。
声が震えたら、あ、いま声が上ずったかなと観客に言ってみる。
隠そうとしなければ、あがり症も一つのキャラとして認知されるものだ。いまでは緊張で記憶が飛ぶようなこともない。
 
純さんが言ったとおり、私のあがり症は一生そのままだろうと思う。私はこの“あがり症”と一生を共にすると決めた。受け入れてしまえば結構カワイイところのある奴だ。
 
だから全てのあがり症の人たちへ愛をこめて言いたい。
「貴方のあがり症は一生そのままです!」
 
 
 
 
***
 
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2020-05-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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