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メディアグランプリ

占いがつないでくれたもの


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:ながはら なおこ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「あー……、これ依存してるかもな」
 
そんな風に自分を客観視していた。
 
昔から占いは好きだった。
星座、四柱推命、手相、姓名判断、風水……
 
自分の過去を言い当てられたり、未来が予測されたり
そのワクワク感や不安感
占いって一体何なんだろう???
 
お金を出して初めて占ってもらったのは確か大学生の頃。
初詣か何かの帰り道、道端に出店されていた占い師さんが目に付いた。
友達と「占ってもらおうか?」と軽いノリで占ってもらう事になったのだが、こころは結構真剣だった。
 
当時なかなか彼氏ができず悩んでいたため恋愛相談をした。
「いい人に出会えますか?」
結果は「半年後に出会えますよ」と言われたと思う。
私はそれを信じて待っていた。
半年後、出会えなかった。
今思うと、自分は何もしなくてもジッと待っていれば飼い主がえさを与えてくる犬かのように、いい男性が現れるのをジッと待っていた。
(それで現れるわけなんてないのに……)
 
そこから「よく当たる占い師がいるらしい!」と聞けば占いに行くようになっていった。
当初はただ、占いが楽しかった。
自分のことを何も話していないのに言い当てられたり
未来の自分に期待を持たせてくれたり。
 
それがいつしか自分の選択を占いに委ねるようになっていった
 
「寝る方向が悪い」と言われれば部屋の間取りに合わない向きにベッドを変え
「枕元に水晶を置くといい」と言われれば、水晶を買い、毎週塩で浄化し
「このブレスレットが切れたら願いが叶う」と言われれば毎日必死に
ブレスが切れかけている個所がないかチェックしたり。
 
完全にイニシアチブを取られていた。
 
そんなある日職場の人から「めちゃくちゃ当たる占い師がいる! 実際私も占ってもらってめっちゃ当たっててん!」との話を聞き彼女にその占い師の詳しい情報を教えてもらった。
聞けばその方の占い場所はホテルの一室で、価格設定もそれなりの値段。
「これはかなり期待が持てる!!」と思い、さっそくその占い師さんを紹介してもらい予約を取った。
 
場所は神戸の高級ホテルの一室。
部屋の外で少し待たされ、ほどなくして招き入れられた。
テーブルにつき名前と生年月日を書かされ、あとは無言で待つ。
そして彼女は私にこう告げた。
 
「あなたの恋愛がうまくいかないのは、お母さんが水子の供養をしていないからよ。ちゃんと供養した方がいいわね」
 
一瞬、わけが分からなかった。
私には2つ上の兄がいるだけで、他に兄弟がいたという話を聞いたことがなかった。
でも、他の話は当たっている。
ほんとうなのかな……?
 
後日、実家に帰り母に聞いてみた。
すると、私の下にもう一人新しい命を授かっていたと話してくれた。
ただ、「家の事情でどうしてその子を産めなかった」と、母はとつとつと語ってくれた。
にも関わらず、私は母の気持ちを推し量ることもなく、「あの占いは当たってたんだ!!」という想いで完全に支配されていた。
そして母にお願いをしていた。
 
「この前占いに行ってね、私の恋愛がうまくいかないのはその子の供養をしていなからだと言われたの。お母さんその子の供養行った? もししてないなら一緒に行って供養してほしい」
 
母はそんな私を否定するでもなく、怒るでもなく、あきれるでもなく
私の言葉をそのまま受け入れてくれた。
そして、後日母と共に水子供養に行った。
供養をしてもらっている間も私は心のどこかで「これでうまくいく」と思っていた。
 
そして新しい出会いをずっと待っていた。
でもやっぱり何も変わらなかった。
相変わらず恋愛は上手くいかず、新たな占いを探し求めていた。
母があの時味わった想いや気持ちを置いてけぼりにして。
 
そうやってネットサーフィンのごとく占いサーフィンをやっていたある日ふと
 
「あー……、これ依存してるかもな」
 
と自分を客観視することができた。
自分がどれほど占いに振り回されていたのか
自分がどれほど自分の人生を占いに委ねてしまっていたのか。
 
そこから占いは一切やめた。
自分の人生は自分で創ろうと決めた。
そしてもう占いはこりごりだと思った。
 
そうやって占いから遠ざかってずいぶん経つのだが、
先日ふとTVで「突然ですが占ってもいいですか?」という番組を見た。
 
夜の歓楽街で占い師の方が街の人に突然を声をかけ占いをする。というもの。
その日はシングルマザーの方が占ってもらっていた。
占い師の方から息子さんとの絆、息子さんからお母さんへの想いを告げられ
そして、「一人で息子さんのために頑張ってこられたんですね。それは息子さんもちゃんと見てますよ」と告げられた時に涙されていた。
 
その時、あの母との光景が思い浮かんだ。
私があんなに自分勝手な思い込みに捕らわれ、占いに振り回されていても
何も言わず思い通りに付き合ってくれた。
ここで初めてその時の母の愛情を感じることができた。
 
占いって何なんだろう?
もちろん未来への指針を示してくれるものではあるが
それだけではなく、
大切な人の想いに触れることができる機会を与えてくれているのかもしれない。
 
また久しぶりに占いに行ってみようかな……
 
 
 
 
***
 
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2020-05-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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