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お寺が私にくれたもの


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:谷田初音(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「1番でないと意味がない!」
「100点じゃないと!」
「なんでできひんの?」
私がかけられてきた言葉だ。
 
2歳年下に、双子の弟妹がいる。
彼らとは、仲が良い。
一緒に笑いながら、喧嘩しながら、育ってきた。
 
そして、もうひとつ。
彼らのほうが賢い、というのは小学生のときからなんとなくわかっていた。
(ちなみに運動でもかなわなかった)
 
「ごめん、今日は勉強しないといけなくて…‥」
私がときには友達の誘いも断って、うんうんうなりながら毎日進めていたZ会も、彼らの手にかかれば一瞬だった。
 
「こんな点しかとれへんの? 全然できてないやん!」
父に怒られた。
Z会は難しかった。
私が苦手で30点しかとれない数学も、彼らは余裕で90点、100点をとっていた。
 
そんな私は、中学生、高校生になっても、たぶん傍目にみると少し狂気的なくらい勉強していた。
「えらいね、初音ちゃんは勉強頑張ってて」
そんなことも言われた。
 
勉強は、嫌いじゃない。
新しいことを知るのも、世界が広がるのも、楽しい。
成長したい。そんな、純粋な気持ちもある。
 
でも、こわい。そんな気持ちもあった。
勉強していないと、不安だった。
かっこわるくて言えなかったけど、負けたくなかったのだ。
 
時は過ぎ、高校3年生の春。
私は京大に合格した。
ほっとした。
「よかった。これで、私はいてもいい」
 
とりあえずの自分の中での合格ラインを突破し、安心した。
ひとり暮らしをはじめた。ひとりは、自由だった。
インカレサークルに入った。親が嫌っていた、”インカレサークル他大女子”は、みんな(いや、だいたい)良い人だった。良い人とというか、今まで出会ってきた人と何も変わらない人々だった。素敵な人たちだった。
 
大学には、色んな人がいた。
ペットボトルのキャップで野球をする人。
毎日ふんどしで過ごし、ふんどし啓蒙活動に邁進する人。
京都駅の大階段でグリコをする人。
毎日麻雀に明け暮れ、留年する人。
体育会で部活を頑張る人。
 
旅もした。
タイで酔っ払って大笑いしている大人。
給食室の折れ曲がった黒板で、イキイキと授業を受けている、カンボジアの子どもたち。
 
出会ったことのない人と出会った。
見たことのない世界が広がっていた。
彼らはみんな、楽しそうに笑っていた。
 
ひょんなことから、「やりたいことでお金を集めてカンボジアに学校を建てる」という団体に入った。
仮面舞踏会やら、カフェやら、「ただ、やりたい」だけでいろんなことをして、お金を集めて学校を建てた。
 
やりたいことをやっている人は、キラキラしていた。
誰かのやりたいことを一緒にやるのは、楽しかった。
 
この世界にはいろんな人がいて、いろんなことをやっている。
彼らはみんな素敵で、最高だった。
 
学歴も、性別も、性格も。
「みんなちがって、みんないい」
それは、たぶん本当なんだろう。
 
妹が東大に合格しても、弟が京大医学部に入っても、もう劣等感なんて沸いてこなかった。
曇りのない、100%の、
「おめでとう! よかったね!!!」
が言えた。
 
彼らが合格したことが、100%、嬉しかった。
 

 
外出自粛をしていると、どうしても運動不足になる。
徒歩圏内にお寺があるので、散歩がてら、毎日通っている。
 
ぶらぶら気ままに歩いていくと、鳥居が見えてくる。
お辞儀をして、くぐる。
 
ここからは、聖域だ。
澄んだ空気を吸い込み、一歩一歩踏みしめる。
お手水で手を清めたら、仏様に手をあわせにいく。
 
何をお願いするわけではない。
ただ、目を閉じて手を合わせる。
 
鐘を鳴らすわけだから、仏様はこちらを見ていてくれる。
失礼のないように、一瞬一瞬に集中する。
 
不思議だ。
お寺の清浄な空気を吸うと、一瞬一瞬に集中しないことが、失礼なことに思えてくるのだ。
 
日常に戻ると、忘れてしまいそうになる。
 
楽しい気持ち。
ワクワクする気持ち。
相手の幸せを喜ぶ、素直な気持ち。
 
比較。
嫉妬。
そんな感情も、まだ残っている。
 
人も、仏様と同じだ。
”目の前の相手”。
彼らといるとき、
自分のこと。過去のこと。不安な、未来のこと。
 
他のことを考え出してしまうのは、きっと、失礼なのだ。
 
今日より、明日。
明日より、明後日。
 
もっともっと、目の前の相手をまっすぐに見たい。
 
相手の幸せを喜ぶ気持ち。
相手を純粋に尊敬する気持ち。
100%に近づくように。
 
私はまだ、発展途上だ。
 
 
 
 
***
 
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2020-05-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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