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あなたにとって、魅了される職業って何ですか?


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:布施 京(ライティングゼミ・平日コース)
 
 
「ぼくたちは、夜中、アルバイトで、お肉をずっと切ります。
でも、1時間1,200円だけです。先生の給料はいくらですか?」
 
日本語学校で教えていた時の、中国の学生からの質問だ。
今からちょうど20年前の話だ。
 
中国では、教師という職業は重んじられており、当時給料が高かった。
だから、学生からしたら、「僕たちは、精肉店で夜中アルバイトをして、こんな安い時給で働いているのに、先生は、僕たちに日本語を教えて、いくらもらっているんですか?」という、皮肉を込めた質問をしたかったのだろう。
 
私は、先生らしく、笑顔でこう答えた。
 
「驚くから、言えないわ」
 
学生は、「やっぱり!たくさんもらってる!」とブツブツ言いながら、帰っていった。
 
私は、苦笑した。なぜなら、学生は私の思惑通り、勘違いをしたからだった。
 
「驚くから、言えない」それは、本当だった。
なぜなら、当時、私の非常勤講師としての時給は、学生の時給1,200円のアルバイト代より100円低かったからだ。
 
その頃、日本語教師になったばかりだった私は、授業準備に相当の時間がかかった。文法書を引いたり、説明するための絵を描いたり、1時間の授業のために、1時間半以上かけて準備をするのが当たり前だった。つまり、一日4時間教えることが普通だったが、準備を入れると、10時間以上働いた。だが、準備時間は時給の対象にはならない。授業の後のテスト採点も、もちろん無償だ。お給料としていただくのは、授業をした4時間×1,100円のみ。時給に換算すると、ワンコインにもならなかった。
 
非常勤講師の場合、他にアルバイトをするか、それとも、いくつかの学校を掛け持ちするなどして、生計を立てなければならなかった。私は、慣れたところで、2箇所の日本語学校で働いた。
 
どちらの学校でも、年配の女性が多いことに驚いた。
専門学校の日本語教師養成講座に通っている時は、若い女性が多かったのに、どうしてこんなに平均年齢が上がるのか?
 
それは、もうお分かりかもしれないが、給料が安かったからだ。
教え始めて数年すると、若い人は見切りをつけて、一般就職する人が多かった。
そこで、残るのは、そこまで稼がなくても、旦那さんのお給料で暮らしていける主婦層だったのだ。
 
そして、もう一つ驚くべき事実を知った。
 
親しくなった同僚の先生が、こう教えてくれた。
「教えるのが楽しくて、日本語教師に没頭しすぎて、離婚する人、結構いるわよ。
副校長も、私も、そうだけどね」
 
日本語教師は、準備は大変だが、自分の作ったシナリオ通りに授業ができた時の快感と安堵感は、準備疲れを癒やしてくれる。そして、学生がわからなかった問題が、自分の説明でクリアになった時のうれしそうな顔を見ると、先生もまたうれしい。特に、初級クラスであれば、先生の日本語を理解しようと、一字一句聞き漏らさないで聞こうとする真剣な学生がいる。自分の話す日本語が誰かの役に立つという悦び。もちろん、夜中のアルバイトに疲れて、寝ている学生もいる。だが、必死に聞いてくれている学生がいれば、わかるように教えてあげたいと思い、準備にも気合いが入る。そして、授業準備に没頭してしまうのだ。
 
日本語教師には、お金には代えがたい魅力があった。
 
私も、日本語教師という仕事に魅了された一人だった。
私が二十代の時、日本語教師を辞めずに、続けられたのは、海外に脱出したからだった。
「時給ワンコイン」からの脱却でもあった。
 
海外で教える場合は、住まいを提供してくれる学校もあり、いただくお給料で生活が成り立つ場合が多い。
 
最近は、日本語教師の時給は、ネットで検索すると1,800円~とだいぶ上がっているが、
もし、「日本で教え続けるのは難しい…」という方がいたら、ぜひ海外に行くことをお勧めしたい。
 
海外で日本語教師をするメリットはたくさんある。
その中でも、私が経験から得た、大きなメリットは2つ。
 
一つは、「自分の存在価値がグッとアップし、自然と、自己肯定感も高まっていく」ということだ。
「自分=日本人の代表」という意識が強くなり、しっかり教えなければいけない、というプレッシャーはある。だが、学生たちや現地の人たちに認められ、受け入れられると、自分自身の存在意義を感じられるようになる。
日本では、いつも自分に自信がなかった私が、自分のことを少しずつ好きになれたのは、海外で日本語教師をした経験が大きく影響している。
 
もう一つは、異国の地で、生活にうるおいを与えてくれる様々な出会いだ。
今も続いているご縁は、私のかけがえのない大切な宝物となっている。
 
4年前、家族の強い勧めで、日本語教師を辞めて、後ろ髪を引かれながらも一般就職をしてしまった私。
 
「子どもが巣立ったら、いつか必ず、海外で日本語教師をする」
 
その思いは、今もずっと、心の中で温め続けている。
 
 
 
 
***
 
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2020-05-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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