シェアの魔力
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:神本崇聖(ライティング・ゼミ日曜コース)
「今の話を聞いていて、何か気付いたことがある人、シェアしてください」
僕が3年前から参加している研修での鉄板の言葉だ。
3年間という長さもあってか、耳にタコが出来るほど聞いてきた。
ただ僕は、この言葉をなかなか受け入れることが出来なかった。
そう、僕は人にシェアすることが嫌いなのだ。
幼い頃、家族と食事に行き、僕の注文をした料理を母親が言った。
「一口ちょうだい」
この言葉が最も嫌いだった。
食べたいなら、自分で注文すればいい。
その時の僕は、嫌々ながら一口あげていた。
次第に、食事にいけば必ず言われるだろうと予想し、一口分あげる心構えをするようになった。
おそらく今思い返すと、自分が過剰にイライラしないために、先に準備しておいたのだろう。
もちろん、社会人になってからもこの嫌いな言葉「一口ちょうだい」は僕の心に刻まれたままである。
今でも友人に言われると、自分でも分かるが一瞬目つきが変わる。
イライラスイッチの発動。
もちろん平然を装おうとするも、これはなかなか隠せないものだ。
どうやら幼い頃から僕は、自分の得たものを人にシェアするのが嫌いみたい。
せっかく自分が努力して得たり、自分だけが得たものだという独占したい気持ちが強いのだろう。
そう考えると、僕の目線はいつも自分だった。
自分だけが分かっていれば、他の人はどうでもいいと思っていた。
自分とは関係ないのだからと、まるで相手のことは考えようともしていなかった。
好きな人がいても、そう簡単には好きにならない。
簡単に好きになるってのは、いわゆる動物学的な子孫繫栄のためという感情のみで行動している証拠だと思うからだ。
動物学的な欲でもない、他の誰かに理解されなくてもいい、自分だけには見える相手の良い部分があれば好きになる。
具体的かつ具体的な部分、暗闇の中で一筋の光が差し込むような小さな小さな部分でも、そこが自分にだけ分かる良さだと思うと嬉しくなるのである。
だから、なかなか人を好きになることが難しく感じてしまう。
もちろん、逆を返せばワンポイントがはまれば好きになるのも早い。
それだけ、「自分だけ」というものに強いこだわりがある。
そんな独占欲の強い僕がどうやら、あの質問を散々言われてきたことで気付くことになった。
それが、「シェアの魔力」だった。
その研修では、みんな手を挙げて自分の気付いたことをシェアする。
その姿を横目に、
「なんでいちいち自分の気付いたこととか、みんなの前で喋る必要があるんだろう?」
「みんなでしゃばりなんじゃないか?」
僕は内心そう思っていた。
「そんな気付きとか喋っても間違ってたり、上手く喋れなかったら恥ずかしいだけじゃないか」
「わざわざ恥をかくくらいなら喋んないほうがましじゃん」
僕の頭の中では、みんなのシェアに対するイライラが募っていた。
僕の嫌いなシェアをみんながしているからだ。
イライラスイッチの発動だ。
ただ、みんなのシェアを聞いていて感じたことがあった。
発言した人が自信を持ち始めているような様子だったのだ。
「俺は一匹狼だ」
ギラギラした睨みつけるような目で講師をみていた僕だったが、その後このシェアの正体を知ることになると思いもしなかった。
シェアを嫌っていた僕だったが、どうしてもシェアからは逃れることが出来なかった。
この研修では二人一組でもシェアするというワークが必ずあったのだ。
自分の気付きを喋らないといけないのだ。
一対複数でシェアするのは絶対に無理だが、一対一でもなかなかしんどい。
「意味わかんないとか言われたり、反応なかったらどうしよう」
僕の内心は、ビクビクしていた。
結局、差支えのないような気付きをシェアした。
「ん、なんだこれ?」
僕の頭の中に、不思議な感覚が宿った。
「あれなんだか悪くない、シェア悪くないぞ」
僕は、シェア嫌いの糸が少しずつほつれてきているのを感じた。
どうやらシェアの正体は、僕自身だったようだ。
シェアする内容は、僕の考えていることや気付いたことであって、僕の一部である。
シェアするってことは、「僕を知ってもらう」ということだったのだ。
「そうか、そうだったのか!」
シェアの嫌いだった僕は今まで、誰にも自分のことを話してこなかったことに気づいた。
だから誰にも理解されなくていい、自分だけに目線を向けていればいい、そうやって自分から人を遠ざけていたのか。
どおりで、人と距離を感じるのかと思っていたが、これで辻褄が合った。
僕は誰にも自分という存在をシェアしてこなかったのだな。
今もそれほど自分のことをシェアすることは得意ではないけれど、今僕はこの文章を通してあなたにシェアをしている。
シェアには魔力があるのだ。
本当の自分をシェアしたとき、見る者、出会う人を惹きつける。
さて、これから一生、シェアの旅が始まる。
長い付き合いになりそうだな、どうぞよろしく。
***
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