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依存心


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:澤田敏仁(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「髪の毛、乾かしてよー」
「もう中学生になったんやから、自分でやりなさい」
「めんどくさいー、けちー」
 
私と中1になる長女との会話だ。小さい頃からめんどくさがりで、風呂上がりに長女の髪の毛を乾かしていた私は、中学生になったのを機に、乾かしてあげるのをやめた。
 
理由は、先ず、めんどくさいこと。男の私には経験したことがなかったが、シャンプーで濡れたロングヘアを乾かすの思った以上にめんどくさかった。小学校に入るまでは、髪の毛が細く、短い時間ドライヤーをあてるだけで、すぐ乾いていたが、小学校に入ったころから、髪質が変わり、なかなか乾かなくなった。
もうひとつ、これが大きな理由だが、そろそろ自立させたかった。他の人はどうかわからないが、最初の子には早く成長してほしいと思ってしまう。反対に、末っ子にはいつまでも小さく、可愛らしいままでいてほしいと願ってしまうのだ。
そういえば、小さいころから、「お姉ちゃんだから、自分で着替えようね」とか「もう幼稚園だから、一人で寝ようね」などと常に言ってきた。
 
だが、長女は家族の中でも、いや同い年の子供の中でもトップクラスのめんどくさがりだった。自分でやらなくていいことは、必ず誰かに頼ろうとする。依存心が強いのだ。
例えば、小学校の宿題の内容を連絡帳に書き忘れたとき、「宿題どこかわからへんー」「そんなん、友達に訊きなさい」「めんどくさいー、お母さんやってー」といった感じだ。ここで「同じクラスのお母さんに訊いたげるわ」といったものなら、次からも毎回訊かされることになる。
小学校の高学年になっても、変わらずで、夜、暗くなったら怖くて仕方ないので、階段や廊下の電気はつけっぱなしだ。「消しなさい!」と注意したら、「私が部屋に入ったら電気消してなー」と寝ている私を起こすようになった。
 
こんな話を妻が友達に話したら、「引くわー、育て方間違えてるんちゃう」と言われる始末だ。
 
生まれてからずっと、こんな感じで育ってきたのだが、さすがにこのままでは、将来に不安を感じて、長女に自立を促すことにした。その第一歩が“風呂あがりのドライヤー係をやめる”ということだった。
大体、中学生の女の子が父親に髪の毛を乾かしてもらう、ということは一般的なことではないだろう。長女は激しく抵抗したが、2週間後にはあきらめて、自分で乾かすようになった。
 
しかし、「塾に行くのめんどくさい」や「寝るの、私を最後にしたら、怖いから先に寝ないで!」などと言う。塾に行かないのは困るので、徒歩10分の塾にクルマで送って行ったり、長女が寝るまで起きていたりと、依存心は変わっていなかった。
 
時が経ち、高校受験になったが、上昇意欲もそうなかったので、自転車で15分の高校に進学した。志望理由は家から近くて、朝ゆっくり寝ていられるからだった。相変わらず、めんどくさがりで、依存心が強く、朝は自分で起きられない。何度起こしても起きないのだが、毎朝「もっと必死に起こせ」とか「起こし方が悪い」と罵倒する。結果、朝8時に起きて、ご飯を食べ、歯を磨き、なんとか身だしなみを整え、自転車に乗って、8時30分の始業にギリギリ間に合う毎日だった。
考えてみれば、中学生になったときに、ドライヤー係はなくなったが、高校生になっても他のことはあまり変わっていなかったのだ。
 
そんな長女が高校2年になったとき、「塾に行かせてほしい」と頼んできた。
今まで、できるだけ面倒なことは避けてきた長女が初めて自分から厳しい道を選択したのだ。正直驚いた。「お金が掛かって申し訳ないけど、このままでは成績が厳しいので、なんとかお願いします」と言ってきたのだ。確かに高校入学当初はそんなに悪くなかった成績が、気が付けば下から数えた方が圧倒的に早くなっていた。自分の中で何かが変わったのだろう。塾はまだいいかな、と思っていたが、彼女の真剣な願いに行かせることにした。
 
それから、長女は変わった。学校、部活、塾、目の回るような毎日になった。泣き言は言わなくなった。特に3年生になってからは、毎日学校が終わってから塾に行き、授業や授業のない日は自習室にこもって、夜10時の閉館まで勉強する。土日も塾に行き、やはり閉館まで勉強の日々。ほぼ学校か塾にいるので、家族で食事をすることも減り、長女の食事は、勉強の合間に食べるコンビニのおにぎりになった。家族の時間が減ることは寂しかったが、頼もしく感じた。
 
今年の2月、とうとう志望校に合格することができた。そして普通なら、4月に入学式を迎えるのだが、今年はコロナウイルスの関係で、入学式はYouTube中継だった。5月になり、オンラインで授業が始まったが、一度も大学に行けず、友達や先輩もいない。不便な学生生活だが、文句一つ言わず、朝からパソコンを立ち上げ、授業を受け、課題をこなし、アルバイトに出かける。めんどくさがりで依存心の固まりの長女はもうどこにもいない。
 
長女が生まれてから、ずっと早く自立してほしいと願っていたので、最近の成長した姿はとても喜ばしい。しかし頼られることがなくなったことを、少し寂しく感じてしまう。もしかしたら私が依存していたのかもしれない。
 
 
 
 
***

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2020-05-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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