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メディアグランプリ

「刑事もの」と看護師


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記事:TOSHIE(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「看護師は推理小説を読んだ方がいいわよ」
看護学校時代、担任だった看護教員から言われた。キョトンとしている看護師の卵達を前に「推理小説には人間の心理がわかるのよ。なぜ、そんな事件をおこしたのか、嘘をついたのか、人の心の動きや行動がわかるのよ」
「なるほど」と思った。看護師の卵も2年生となると看護実習に行き、患者さんを担当し、看護計画を立てる。その時に患者さんについて情報収集を行う。情報収集はカルテに書かれてある入院に至った経緯や検査データ、医師の診断や治療方針や患者さん自身との会話やご家族との会話等から行う。それらを整理して、患者さんの治療がスムーズにいくようプラン(看護計画)を立てる。入院中だけでなく、退院後も生活に制約が出る場合、退院後の生活のどこに気を付ければよいか改善点などを考える。
だが、これがなかなかの曲者なのだ。
「看護師なんかに指図はされん」という高齢の方がいたりする。大昔の「看護師は医者の使い走りだ。ましてやその卵など」という考えから、看護学生とは話そうとしない人もいる。
あるいは、とてもフレンドリーで「看護師さんの言うとおりにしますよ」と言いながら、検査データは改善せず。「おかしい」と思っていたら陰でこっそり煙草を吸い、禁止されている食品を差し入れてもらって食べていたなんてこともある。
患者さんたちは卵達より社会の先輩であることが圧倒的に多い。卵にあれこれ言われたくはないのも、真実を打ち明けたくない人もいる。また、打ち明けられたところで、人生の経験値が少ないため推し量ることが難しい。そのため、卵達はコミュニケーション能力と観察眼を磨くことで患者さんたちの見えない部分を推測し情報を得ようとする。そこに推理の力や小説の中の登場人物たちの行いが卵たちにヒントを与えてくれるのである。
なかなか心を開いてくれない患者さんには、足しげく通い患者さんの持ち物から何に興味を持っているのか、なにを大事にしているのかを推し量り、患者さんの出身地のこと等を調べ、その会話を糸口に距離を縮めていく。真実を隠す患者さんには、シーツ交換や環境整備(ベッド周りの掃除)のときに、ゴミ箱や枕の下に何か隠していないかを観察する。また、患者さんの行動を把握するため、面会人が何か差し入れていなかったか、売店で何か買わなかったか、喫煙所でタバコを他の患者からもらって吸っていなかったかなど尾行や目撃情報を集める。もはや現場の刑事である。かといって「ネタはあがっている。吐いたらどうだ」みたいなことにはならない。「偶然ですね~」を装い、いけないことをしいてる現場を押さえたり、「掃除していたらこれでてきました~」みたいなふんわり感で相手の「これはいかん」という心を正面ではなく少し斜めから突くようにするのである。
看護師の卵からヒヨコになると、より実践の中で活かされる。怪我をした患者さんの状況が分からないときに、その観察と推理力が活かされる。傷の状態と本人の行動能力などから原因を導き出す。まるで「科捜研の女になった気分」。それで認知症の高齢者が自宅で虐待を受けていたのを保護したケースもある。
ここまで読むと「看護師怖い」と思われそうだが、患者さんのことを思ってのこと。そして、これが患者さんの意思を代弁することにつながるケースもある。それは、患者さんが何かしら医師に症状を訴えても、医師から「それはあなたの病気と関係ないですよ」「ただの〇〇ですよ」と言われるときである。確かにほとんどの場合において、医師の診断は的確で優先される。が、まれに違うことがある。誤診ではなくレアケースだ。病気には主症状というものがある。例えば、心筋梗塞なら「激しい胸の痛み」であるが、ごくまれに首を痛がる人がいる。心臓専門の循環器の医師であれば多くの心臓の患者さんを診ているため、レアケースにも気づくのだが、専門外の外科系の医師の場合など「肩こり? 寝違い?」と思うこともある。患者さんも不安に思いながらも「肩こりかぁ」とそれ以上口に出さないことがある。そのとき、患者さんを一番近くで見守っている看護師が「これはいつもと何かが違う」と「刑事の感」のごとく「看護師の感」が働くことがあるのである。
だが、これから先はちょっと様相が違ってくる。医師とのコミュニケーションがよければ、患者さんの状態について報告したあと、医師が真剣に受け止め直接診察をしたり、検査をして患者さんの不安の軽減や病気の発見につながったりする。しかし、医師に耳を傾けてももらえないとき、そんな時は患者さんの不安を解消するために推理小説の刑事でも科捜研でもなく、熱々の刑事になりきり某ドラマの刑事のように「事件は現場で起こっているんだ!」の気迫で医師に迫ったりするのである。
 
 
 
 
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2020-05-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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