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記事:村井 美月(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
そういえば、去年の父の日、父親に何をプレゼントしたかな……。
 
母の日は、同性同士なこともあり、私が気に入っているものをプレゼントすれば母親は喜んでくれる。それに母は、こちらから聞いたりリサーチしたりせずとも、自分の好きなものを自ら発信してくれるので、だいたい欲しそうなものが予測できる。
 
それに対して父親は、何が欲しいのかさっぱりわからない。
迷った挙句、結局、お酒など無難に喜んでもらえそうなものを毎年渡している気がする。
 
先日、父を持つたくさんの女性たちから、「毎年父の日に何をプレゼントしているか」を聞く機会があった。
私が勤めている会社で父の日向けのギフト商品を販売することが決まり、商品を購入するターゲットである女性(娘)たちにインタビューをして、そのヒアリング内容を商品販売に活かすことになったからだ。
 
以下、その際にインタビュー相手とお話しした時の様子である。
 
私)「去年は、お父さんに何をプレゼントしましたか?」
 
相手)「うーん、なんだろう。確か、うなぎ……」
 
私)「なぜ、うなぎをプレゼントされたのですか?」
 
相手)「お父さんって、何をプレゼントしていいかわからないんですよね。
昔は服とか、物とか渡していたんですけど、一度も使っているのを見たことがなくて。
最近は、お酒とか食べ物をプレゼントすることが多い気がする。
母の日のプレゼント選びと比べると、圧倒的に選ぶ時間が短い(笑)」
 
私)「母の日は、じっくり選ばれるんですか?」
 
相手)「お母さんは自分の好みをたくさん伝えてくれるから選び甲斐があるし、何より、渡した時にすっごく喜んでくれるんですよ! 渡し甲斐もあるから、毎年時間をかけちゃいますね」
 
私)「お父さんは、喜んでくれないんですか?」
 
相手)「うーん。お父さん、何をあげてもあんまり喜んでくれている様子がないんです。
あっ、でもこの前、久しぶりに実家に行ったら、十年ぐらい前にプレゼントしたものを使っていたんですよ! プレゼントした時には全然喜んでいなかったのに。
そういう気持ち、お母さんみたいに素直に言ってくれれば、父の日のプレゼントもお母さんと同じ熱量で選んでいたかも……」
 
私)「今回、食べ物の中でもうなぎを選ばれたのはなぜですか?」」
 
相手)「お父さんに何を渡せば喜んでくれるかわからないので、お母さんに、お父さんが何が欲しそうか聞いたら、お母さんが食べたいって言う、うなぎになっちゃって(笑)。
まあ、私が家を出てから家にはお父さんとお母さんだけだから、二人が家で楽しんでくれるような、普段食べない豪華な食材がいいかな、と思ったこともあって」
 
私)「父の日当日は、会ったり、電話したりして、直接感謝の気持ちを伝えていますか?」
 
相手)「実家に住んでいた時は、プレゼントは渡していましたけど、普段の食事の延長という感じで、あんまり父の日感がなかったですね〜。
今は家を出たので、お母さん経由でLINEメッセージを送っていますね。お父さん、LINEよくわからないみたいなので。
電話はたまにしますが、お互い会話が途切れて、すぐ切っちゃいます(笑)。私が反抗期の時、お父さんとはほとんど喋らなかった時期があって、それ以降、なんだか気恥ずかしくてきちんと二人で喋っていないですね」
 
私)「お父さんと、仲はいい方ですか?」
 
相手)「今では仲はいいし、もちろん好きなんですよ! この年齢になったからこそ、お父さんに聞いてみたいこととか、話したいことはあるんですが、なんだか気恥ずかしいですね」
 
実はこのインタビュー相手、特定の人物ひとりではない。
 
今回インタビューを実施した女性の意見のほとんどが、ほぼ同じ。
「うなぎ」や「LINEメッセージのやりとり」など詳細部分は異なるものの、父親との関係性や、父親に対して抱いている気持ちは、全員がほとんど同じだったのだ。
 
かくいう私も、みなさんの意見を聞きながら、「そうそうそうそう!」と頷いてしまったその一人。
 
ここで私は思った。
この事実は、娘代表として、なるべくたくさんの世のお父さんにお伝えしなければならない!
 
「娘からの父の日のプレゼント、毎回なんだか代わり映えしないなあ」
「去年の父の日ギフトは俺も嬉しかったけど、母さんの方が喜んでいた気がするよ」
「父の日ぐらい娘と一緒に話したいのに、贈り物だけ届いて、なんだか寂しいなあ」
 
そんなふうに感じている全国のお父さん方。
 
娘が自分を理解していない、または心を開いてくれていない気がしたら、もしかしてそれは、お父さんの方も気持ちを伝えきれていないのかもしれない。
 
今年の父の日は、娘さんからプレゼントを受け取ったら、喜びの気持ちをいつも以上に表現してみては?
 
私は今回、娘の立場でも、学ぶことがたくさんあった。
多くの娘さんたちの話を聞くうち、自分の父親の気持ちが想像できたのだ。
 
<娘の反抗期以降、幼い頃と比べると距離が開いてしまい、今、仲は悪くないが、どんな距離感で娘と話していいかイマイチわからない。反抗期の時に話しかけて関係が悪化した記憶があるから、あんまり踏み込んだ話をすると、また娘に嫌われるんじゃないか。娘からもらったプレゼントは嬉し過ぎて保管しているだけで、使っていない訳ではない。でも、それが喜んでいないように思われているかもしれない。とはいえ本当は、プレゼントにはゴルフグッズとか、自分の趣味で使えるものの方が嬉しいが、趣味のゴルフの話をしても煙たがられるだろうし、まあ特に話さないでおこう。>
 
これは私の想像で、父の心のうちは違うかもしれないが、今回第三者として娘の話を聞くうち、今までわからなかった父親の気持ちが、ちょっと想像できた気がした。
 
父も娘も、あの時から勝手に距離があいてしまっている。
今年の父の日は私の方も、気恥ずかしい気持ちを押し殺して、父親に聞きたかった話を聞いてみようと思う。
 
そして最後に、あの時からずっと思っていた気持ちをきちんと伝えたい。
「お父さん、いつも本当にありがとう」
 
 
 
 
***

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2020-05-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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