家事は100%の完成度にこだわる必要はなく、60%程度で良い
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:安平 章吾(ライティング・ゼミ平日コース)
「いつになったらご飯ができるの? 」
妻から言われてハッとした。
慌てて時計を見ると、19時を過ぎていた。
17時からコロッケを作り始めており、気がついたら2時間以上料理をしていることになる。
久しぶりに午後から休暇が取れた。
これまで積み重なっていた仕事が一段落したので、リフレッシュするために休暇を取った。
ただ、休暇を取って何かをしたいわけではなかった。
そのため、休みは取ったものの、何をして時間をつぶせば良いのか頭を抱えた。
何もしたいことがなかったので、時間をつぶすために、家の近くの公園に車を駐め、スマホをただただ眺めていた。
時間の無駄だったことは分かっていたが、何をして良いのか分からない。
散歩している方から見れば、会社をクビになった会社員が家に帰れず、時間をつぶしているようにしか見えなかったと思う。
1時間ほどたって、ふと思いついた。
「子どもに夕食を作ってあげよう」
元々料理が好きなわけではなかったが、これまで仕事が忙しく、なかなか子どもと接する時間がなく、平日は義母が作る料理でいつも夕食を食べていた。
普段、親のご飯をあまり食べさせたことがなかったことを考えると、なぜか無性に家族に対して料理を振る舞いたい気持ちになった。
家族に対して父親らしいことができる、そう思うとすごくワクワクし、すぐに行動したくなった。
ただ、自分で料理をあまりしたことがないため、すぐにはレシピが思いつかない。
こんなことを想定したわけではないが、なんとなくインストールしていたクックパッドのアプリのことを思い出し、光り輝いて見えたアイコンをタップしてみた。
必死で子どもが好きなものを思い出す。
このときほど子どものことを振り返ったことはおそらく初めてだった。
同時にもっと子どもと積極的に接した方が良かったなと反省した。
かすかな記憶をもとに、パッとコロッケが浮かんだ。
娘がイヤイヤ期に入っているとき、唯一食べたのがコロッケであることを思い出した。
「これだ! 」
そう思ってクックパッドで急いで材料を検索し、スクリーンショットを撮ったあとすぐに近くのスーパーに車で向かい、必要な材料をすべて購入した。
家に帰ってすぐ、両手にスーパーの袋を持った状態で義母に言った。
「今日は私が夕食作るから、ご飯は大丈夫です」
何の事前連絡なく、一方的に言ったので、義母は目を丸くしていた。
そのときはすぐに納得してもらったが、後で妻に聞いた話では、すでに夕食をいつも通り準備していたようで、早く相談してほしかったと不満をもらしていたらしい。
そんなことは私には関係なかった。子どもに夕食をつくって笑顔を見る、ただそれだけの目的のために行動していた。
キッチンでスマホを近くに置き、1つ1つの行程を細かく何度も確認しながら丁寧に進めた。
ジャガイモの皮をむき、つぶしてレンジで加熱する。調味料もミリ単位で間違えないように仕事以上に気をつかった。
「ただいま」
18時になると、妻が子どもとともに家に帰ってきた。しかし私は返事をしなかった。
それどころではない。最高においしい晩餐を家族に振る舞うため、失敗は許されないからだ。
「今日は夕食作ってくれてるんだって? ありがとう 」
「お父さんのご飯、楽しみ! 」
家族の言葉がさらにプレッシャーになる。
「まぁ待っとけ」
発した言葉とは裏腹に、小さい声で若干震えていた。そしてこの時点でコロッケの種はまだできていない。
なんとか作業を進め、コロッケを揚げ始めることができた。
自分の中では達成感に満ちあふれ、満足げに振り返ると、妻がキッチンのテーブルで、頬杖をついていた。
若干イライラしたようで、
「まだ? 」
とだけ言った。
慌てて時計を見た私に、追い込んで言う。
「子どもも保育園で遊んでお腹ぺこぺこだし、私も仕事帰りで疲れているの。何か適当なものがあればそれでいいのに」
私は焦った。
そのためか、コロッケが上手く固まっていないのにも関わらず、箸でこねくり回したせいで揚げている最中に型が崩れた。
できあがったコロッケは見るに堪えない形状で、おいしそうには見えなかった。
自分の中ではレシピを完璧に再現しているはずだった。失敗する理由が見つからず、私はただただ落ち込んだ。
その様子を見て、妻が言う。
「家事はね、完璧にしなくて良いよ。気持ちだけでまずはありがたいから、100%ではなく、60%程度でこなして、早く済ませようね」
妻に言われ、深く反省した。
私はどこかで仕事と家事を同じように考えていたかもしれない。
仕事のようにミスは許されず、完璧にこなすこと、それは家事であっても大事だと思っていたが、どうやら違うらしい。
家事に関わることは当たり前ではないが、できる範囲で良い。
これまであまり家事に関わってこなかったため分からなかったことである。
今回学んだことを踏まえ、父親としてこれからも家事を少しずつやっていきたいと思う。
***
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
お問い合わせ
■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム
■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。
■天狼院書店「東京天狼院」
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)
■天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
■天狼院書店「京都天狼院」
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00
■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」
〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168
■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」
〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325
■天狼院書店「シアターカフェ天狼院」
〒170-0013 東京都豊島区東池袋1丁目8-1 WACCA池袋 4F
営業時間:
平日 11:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
電話:03−6812−1984