メディアグランプリ

オンライン里帰りは、人生を巡る旅


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記事:ヒライシカナコ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「オンライン飲み会、やってみると意外と楽しい!」
 
新型コロナの影響で自粛生活を余儀なくされ、このように思った人は、少なからずいるのではないだろうか。実際に、私もその1人である。ここ数カ月でオンライン飲み会に始まり、オンライン誕生日会、オンラインライブ鑑賞、オンラインドラマ鑑賞会、オンライン読書会、オンライン講座……などを楽しんできた。そして、それがある日常が、少しずつ当たり前になりつつある。あらゆるオンライン〇〇〇のなかでも、特に面白かったのが、先日友人たちとやってみた「オンライン里帰り」である。ゴールデンウィーク前に政府が推奨していた、テレビ電話などを使って地元にいる家族や友人と顔を合わせて話すという「オンライン里帰り」とは、全くの別物である。さながら、旅行気分が味わえて、参加者のことをより深く知ることができるというものだ。
 
ここでいうオンライン里帰りとは、端的にいうと、自分の地元とそこで過ごした思い出の場所をグーグルマップ上で巡り、参加者たちをガイドするものである。そのため、地元の友人たちと行うよりは、大学などの進学先や社会に出てから知り合った人たちと行うことが望ましい。出身地がバラければバラけるほど、コンテンツとしては盛り上がることも付け加えておきたい。
オンライン里帰りに特にルールはないが、実家~保育園・幼稚園時代~小学校~中学校~高校~専門学校・短大・大学~社会人になって住んだ場所というように、時系列に沿って案内すると、その人の人生の歩みを辿ることができてより面白い。しかし、なかなかこの通りには進まない。話し手にとっては馴染みがあるゆえ気にもしなかったこと──たとえば、面白い(らしい)公園名や店名、読み方がわかりにくい地名、その土地の繁華街など──に聞き手が質問をしてくれるので、話が脱線してしまいがちなのである。それもまた一興であり、オンライン里帰りの醍醐味だ。何より、友人たちが自分の地元に興味・関心を持ってくれるというのはやはり嬉しいもので、地元民しか知りえないようなことなどをついつい事細かに説明してしまうのだ。
 
先日、友人たちと5人で開催したときの参加者の出身地は、栃木、東京、神奈川、京都、鹿児島だった。みなさんが、これらの都府県を聞いて思い浮かべるものは何だろうか。日光東照宮、都会の街並み、寺社仏閣──など人それぞれだと思うが、そのようなものはオンライン里帰りには出てこない。あくまでも、自分の地元とそこで過ごした思い出の場所を巡るものだからだ。そう考えると、各地を旅行してその土地を知った気になっても、それはほんの一部であることを思い知らされる。そして、オンライン里帰りを体験する中で、比較的付き合いが長く、仲が良いと思っていた友人たちのことを知ったつもりでいたけれども、実はそうではなかったのかもしれないとも思うのだ。人それぞれに事情があるので、たとえば生い立ちだったり、家族や親戚の話だったりなどは聞かれない限り話さないし、普段そのようなことを話す機会はほとんどない。しかしながら、このオンライン里帰りでは、そのようなことも自然と口に出す人が多かったのだ。みんなもういい大人なので、それについて深く言及することもなく、けれども、しかと受け止めながらガイドの話に耳を傾けていたことも印象的だった。
 
自分が生まれ育った場所だったり、実家に誰かを連れて行ったりというシチュエーションは、よっぽどの親友か結婚を前提にしている恋人でない限り、なかなかないと思う。けれども、オンライン里帰りは、間接的にそれをすることができる稀有なエンターテインメントと言えるのではないだろうか。そして、その人をより深く知ることができる時間にもなり得ると思う。新型コロナ以前の世界では、誰かのことをもっと知りたい、仲良くなりたいと思ったら「飲みに(ご飯に)行きましょう」という魔法のような言葉で誘うことができたが、このご時世、しばらくは難しそうな雰囲気がある。そのようなときに、この「オンライン里帰り」を提案してみてはいかがだろうか。個人情報をかなり提供することになるので、ある程度信頼できる人に限られてしまうが、きっとお互いにとって、これまで知り得なかった一面を知ることができることだろう。話し手側としても、他人から見た地元の特徴や面白さを再発見でき、自分の人生の歩みを振り返る豊かな時間になるはずだ。
 
 
 
 
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2020-06-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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