メディアグランプリ

就職活動に、定食を選ぶ気持ちを。


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記事:フジタシン(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
「〇〇商事の面接で1番大事なことは、いかにリーダーシップがある学生であるかをアピールすることなんだ!」
 
先日、都内の大学構内にある病院に用事があり、学生食堂で遅い昼食をとっていたときのことだ。隣のテーブルに座る学生たちの会話が聞こえてきた。
 
「自分の強みを作るためには、サークルだけじゃなくてビジネス系のイベントに参加して、その経験を1分で喋れるように準備しておくといい!」
 
どうやら、その6人組のうち1人は就職活動を終えた4年生で、残りの5人はサークルの後輩である1,2年生のようだ。
 
「今のうちに自己分析や業界研究も進めておくといいよ。この参考書がおすすめ。こういう準備が、就活の勝者と敗者を分けるから。」
 
就活カリスマは、そう断定した。カリスマの言葉をありがたくメモする信者たち。
数年ぶりに食べた学食の日替わり定食はとても美味しかったが、隣のテーブルで繰り広げられるセミナーの内容には首をかしげてしまった。
 
私は、「新卒一括採用」制度が好きではない。
大学生の頃、憧れの企業の採用説明会に参加したことがあった。その年に採用される学生はわずか10名程度。そこにたどり着くには、書類審査の後、2回の面接、グループワーク、最終面接という関門を潜り抜ける必要があるらしい。
 
めまいがした。
全国から集結するギラギラした就活生たちをなぎ倒し、最後の10名として生き残るのは、無謀な挑戦だと悟った。まず書類審査で通るために、数千人の書類の中から選んでもらえるような何かが必要だ。その後の面接でもキラリと光る何かが必要だろう。グループワークという名の討論バトルでは、頭の回転とトーク力が必要だ……。
結局私は、就職活動自体を諦めてしまった。
 
この「一発勝負・トーナメント戦」的な新卒採用の形は、多くの会社が取り入れている。社会人になって今度は採用する側の立場になってみると、この方法は効率で非常に便利であることが分かった。本当は候補者一人ひとりとじっくり話し合ってあげたいのだが、そんなことをしている時間も人員も足りない。
 
さらに、社会人になって気づかされたことがある。それは、採用の合否を大きく左右するのは、会社の文化に合っている人格の持ち主かどうか、ということだ。優秀な経歴の持ち主であっても、「うちの会社では長く働けそうにないな」と思われたら不採用になることが多い。逆に、内定をたくさん獲得してきたような人でも、会社文化にフィットせずに早々に辞めてしまうこともある。
 
結局「会社文化」という、その会社で働いている人にしか分からない要素で合否が左右されるのであれば、就職活動の対策を頑張る意味はあまりないのでは、と思ってしまう。「〇〇商事に入りたい」「人気企業に入りたい」というようなモチベーションで対策を頑張ったとしても、努力に見合った結果が出る確率が低い。専門知識や技術が評価されるような職業ではない、いわゆる「ポテンシャル採用」枠に合格するためには、運要素がありすぎるのだ。
 
就職活動の中で、自分の人生を振り返ったり、文章が上手になったり、議論が上手になったりすることは、今後の人生の糧になるだろう。しかし、就職活動のテクニックを磨くための大学生活は本当に有意義なのだろうか。
 
ちなみに、就職活動の闘いに真っ向勝負できないと判断した学生の頃の私は、数か月インターンとして働かせてくれる会社を探し、それをきっかけにして採用してもらう道を選んだ。数か月一緒に働かせてもらって評価をして貰えれば、面接一発勝負よりは合格の確率は高いと思った。この戦略は功を奏し、正社員として雇ってもらえることになった。
 
その後、その会社で培った経験を糧にして、別の会社に転職した。中途採用市場は、新卒入社ではなかなか難しい企業であっても、社会人としての経験と実力が評価されれば、入社できる確率は高い。「学生時代リーダーシップを発揮して他者を巻き込んだ経験はありますか?」とかいうような雲をつかむような質問は、中途採用の面接では聞かれない。
 
もしあなたが大学生で、目の前にある就職活動に怯えていたり、上手く行かずに悩んでいたりしたら、少し広い目で考えてほしい。この先、日本でも新卒から定年まで同じ会社に在籍し続けるような時代ではなくなるだろう。転職市場が活発になれば、学生時代よりも社会人として何を経験してきたか?という方が圧倒的に大事になるはずだ。もし最初に入った会社がビミョーだと思っていたとしても、そこで何をしたかで人生はまた変わっていく。
 
そういえば、その日の学食の日替わり定食は「A:カルボナーラ」「B:和風ハンバーグ」「C:カツカレー」だった。私はCを注文したが、遅い時間だったので売り切れだといわれた。しかたなくBを選んだ。すると配膳担当のおばちゃんが、
 
「売り切れててごめんね、これサービス。」
 
と言って、菜の花が入った小鉢皿をハンバーグの横に置いてくれた。これがとんでもなく美味しかった。生ハムとマスタードが利いた洋風なレシピであった。私の頭の中には、菜の花といえば「しょうゆ味のおひたし」しかなかったので、感動した。そういえば、家にふるさと納税の返礼品として届いた菜の花がある。どうやって作るのだろうか。
 
就活セミナーは続いていたが、ハンバーグを食べ終わったので席を立った。食器の返却口に先ほどのおばちゃんがいたので小鉢のお礼をした。ついでにレシピを聞くことができた。思いがけない良い学びがあった。
 
会社だって、就職した後に思いがけない出会いがたくさん待っているはずだ。あまり気負わず、定食を選ぶような気持ちで就活に臨んでみてはどうか。
 
それはそうと、次に学食に来るときには、カツカレーにリベンジしたい。
 
 
 
 
***
 
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2020-06-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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