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第二の人生を見つける旅のすすめ

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:ヤマモトマサコ(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
飛行機から見下ろした大草原に、キリンが二頭、悠々と走っていた。
「ついに、来たんだ」私の胸は一気に高鳴った。
 
私は初めての海外旅行先にタンザニアを選んだ。東アフリカにある国で、サバンナが大部分を占める野生動物の王国だ。一人で行くと宣言すると、「アフリカなんて危険じゃないの?」と皆に心配されたけど、私は初めての海外や一人旅の不安よりも、果てしない大自然と野生動物が生きる異世界を体験してみたいという好奇心の方がとにかく強かった。
 
きっかけは、動物写真家である岩合光明氏の奥さんの著書『アフリカポレポレ』だ。岩合氏の撮影に同行して、3才の娘も一緒に家族三人でタンザニアのセレンゲティ国立公園のロッジに一年間住んだ記録が書かれた本だ。生物科目の教師で動物が大好きだった父の本棚から拝借したのだが、当時中学生の私にとってページをめくるたびに目から鱗の世界が広がって、「いつか私も行ってみたい!」と思いながらボロボロになるまで読んでいた。
 
地方から大学入学で上京して2年が経ち、学校にも慣れてきてなんだか刺激が薄れた毎日を過ごしていた時、私はふと『アフリカポレポレ』を読んだ時の高揚感を思い出した。
「そうだ、アフリカに行こう!」
思い立ったら、さっさとツアー会社を申し込んで時間はかからなかった。
 
右も左も分からないけど、まあなんとかなるだろうと甘く見ていた私は、空港からトラブル続きで飛行機の乗換やビザ申請に半べそをかきながら、周りに助けを求め、優しい人に助けられて、なんとかタンザニア行きの飛行機に乗りこんだ。
そんな苦労も、どこまでも広がる大草原と、テレビの画面越しではない本物の野生のキリンを目の前にして一気に吹き飛んでしまった。それくらい、タンザニアという土地は、私が今まで経験してきた世界とは全く異次元の魅力を放っていた。
 
私は4日間、国立公園の中をジープで移動しながら、サバンナの真ん中に立つテントやロッジに転々と宿泊し、野生動物たちを観て回った。晴れた草原いっぱい群れるヌーの中をジープで駆け抜ける瞬間、朝靄に濡れた早朝の草原を歩いて足元の草花とそれを食べるシマウマを眺めた瞬間、どこまでも続く地平線の向こうに沈む夕日とゆっくり横切っていく象の親子を見つけた瞬間。一瞬一瞬が素晴らしい景色で胸がいっぱいだった。それに加えて、何より嬉しかったのが、出会う人々が皆、私のことを歓迎し心配してくれて、別れるときには必ず「また来てね」と笑顔で言ってくれることだった。
 
傍から見たら、周りはスワヒリ語で会話する現地の黒人の人ばかりで、日本人の私は明らかに異質で浮いていた。マッチョな黒人男性のツアーガイドとサバンナの真ん中でハエに集られながらサンドイッチを食べ、wifiは全く繋がらず、シャワーも節水のため少ししか水が使えず、今までの生活から比べるとびっくりするほど不便でイライラすることもあった。でも、総じてとても幸せな時間だった。
 
私はタンザニアの草原で、東京に出てきたばかりの頃を思い出していた。部屋を借りて、初めての一人暮らし。同じ地元の知り合いもおらず、0から友だちを作っていく。緊張するけど、今までの自分がリセットされて第二の人生が始まるようで、なんでもない日常に毎日ワクワクしていた。
しかし、いつの間にかそんな日常に疲れてきてしまっていた。部活もバイトも学校も、新鮮で楽しかったはずなのに、いつの間にかストレスに変わっていた。
実は、このタンザニアへの旅行は部活の練習をさぼって来ていた。「なんて自分はダメなんだろう、他の皆は頑張っているのに」という後ろめたい気持ちも少なからずあった。部活で長い間スランプに陥っていて、失恋してしまったことも重なり、とにかく今の日常から逃げだしたかった。
 
最終日、4日間案内をしてくれたガイドと分かれる時に、私は空港で泣き出してしまった。自分でもなんでだか分からないが子どものように涙が止まらない私を、ガイドは優しく抱きしめてくれた。
「また来てね」その言葉を聞いて彼と別れた。
泣きながら空港のロビーでお土産にもらったリンゴをかじった。この4日間が終わってほしくなかった。この4日間が永遠に思えるくらい私はタンザニアで過ごした時間に救われたのだった。
 
きっかけになった本のタイトルにもある「ポレポレ」は、スワヒリ語で「ゆっくりゆっくり」という意味だ。違う環境で飛び込むことは緊張もするけれども、今まで気にしてきた人間関係や雑多なことから離れ、何も気にせずゆっくりのんびり生きる自由な感じがした。
 
もちろん友達と過ごしたり気晴らしにお酒を飲みに行ったりすることも楽しいが、全て忘れて新しい自分になることは、私に予想もしない力をくれた。今でももやもやした時に一人で旅に出ると、元気を取り戻して帰ってくることができる。初心を取り戻す原動力をくれるのは、誰も自分を知ることのない世界で見つける新しい自分や第二の人生なのかもしれない。
 
「また来るね」帰りの飛行機の中で、遠のいていく大草原のキリンに私は約束した。
 
 
 
 
***
 
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2020-06-18 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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