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営業という仕事について、どう思いますか?


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:トモコインティラミス(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
完全歩合の営業マンとしてデビュー以来、半年経たない頃に出会った新婚のご夫婦がいる。
 
ご主人が日本最高峰の大学院出身のバリバリ理系研究者で、私と生きてきた人生が180度異なるようなタイプの方だった。
案の定初対面では「もう十分足りてるんで」と冷たくあしらわれた。圧倒的に私より偏差値が高く、社会的にも知名度の高い職業に就かれているお客様に対して、完全にビビッていた。
表面には出すまいとがんばるものの、無意識のうちに腰が引けていた。
 
しかし、諦められない私は「なんとかこのご主人と信頼関係をつくって担当に選んでもらいたい」と思い、一生懸命お二人の価値観を引き出すような話を訊き、炙り出すように丁寧に進めていった。
 
すると、どうだろう。
はじめは相当強張っていたご主人の表情が、奥様とのなれそめや家庭の話になると、少しずつほころんでくるではないか。
 
あぁ、このご主人は、本当に心から奥様のことを愛していて、大事に思っているんだなぁ……ということが伝わってきた。
 
そして最終的にはご契約をお任せいただき、長きにわたる担当として選んでもらえたのであった。
 
とても満たされた気持ちになった私は、手続きをすべて終えて、最後に書類をお届けに伺ったとき、私が大好きな、家族や夫婦の愛情を描いた短編アニメの動画を紹介した。
 
するとあろうことか、普段お話するときはほとんど喜怒哀楽を表に出さないご主人が、ボロボロ涙をこぼして号泣し始めたのだ。
 
「いやぁ……、ボクこういうの本当にダメで。でも今回、○○さん(私)に大切なことをたくさん教えてもらったと思います。自分が妻や家族を大事にしたいと思う気持ちにも、あらためて気づかせてもらいました。最初は『契約してなるものか』とかなり警戒して冷たい態度をとってしまいましたが(苦笑)。最後まで諦めずに営業してくれて、本当にありがとうございました」
 
文系学生の6〜7割が何かしらの形で従事するにもかかわらず、新卒大学生の「就きたくない職業ランキング」でかならずといっていいほど上位に食い込む職種がある。
 
それは、営業職だ。
 
学生が営業を嫌がる理由としては、
 
・ひたすら頭下げてるイメージ
・体力的にキツそう
・ノルマが嫌
 
などらしい。
 
ふむ、確かによく分かる。
なぜなら、いま現在、完全歩合制のセールスの仕事を始めて6年目になる私も、昔はまったく同じように思っていたからだ。
20代半ばまではまさか自分が、完全歩合のセールスを「天職」として一生の仕事にしているだなんて1ミリも想像していなかった。
 
しかし、もし就活を控える若者に「営業ってどう思いますか」と聞かれることがあったなら。
間違いなくこう答えるだろうというたしかな答えを、今の私は心にもっている。
 
そもそもの大前提として、営業マンたるもの、数字を達成してナンボだし、売ってナンボである。
 
我ら営業界においては、売っている人間が偉い、売れてない人間は存在価値なし、という雰囲気が少なからずある。これは確かに否定できない。
 
では一方で、「売れない営業マン」に、本当に価値はないのか。
売れない営業マンだって、入社してこのかた一度も売れていないかというと、そうではないはずなのだ。
たった一人のお客さんに買ってもらった時点で、その人は会社にとって必要な、大切な営業マンの一人だ。だってそのお客さんは、どんな形であれその商品を必要だと思い、お金を払う価値があると判断をして、その営業マンから購入したのである。それはまちがいなく会社にとって大切なお客さんであり、大切な営業マンであるはずだ。
 
ちなみにここでもし、あなたが新人営業マンで「いや私はまだ1件も売ったことがないです(泣)」という状況だとしたら、どうか希望を持って欲しい。
あなたが本気で「自分の扱う商品はお客様の役に立つはずだ、だから売りたい」という気持ちを持ち続け、お客様を訪問することを継続して諦めさえしなければ、かならずその商品は売れる。継続して1年間ずっと売れ続けないなんてことは、そうそうありえない。
これは、自信を持って断言する。
営業をそこそこやってきた人なら、同意してくれると思う。
 
たしかに営業は勇気もいるし、気も遣うし、神経をすり減らす。
 
はじめて会う人に拒絶されるのは誰だってできれば経験したくないし、どうしても毎日数字と向き合わなければならない。
 
たしかに営業マンは、つらい。
 
だけど、その扉を開いた向こう側には、自分の想像や既成概念を軽く超越した世界が待っていることがある。
 
少なくとも私は、営業の仕事以外で、冒頭のご主人に言われたような言葉をかけてもらったことは他にない。それに、このとき感じた何とも言えない喜びや、達成感や、自尊心に満ちた状態は、営業マン独特のものであると思っている。
 
まぁたしかに誰もが憧れるような、魅力あふれるキラキラした仕事ではないのかもしれないけれど。
 
それでもいま、もし私が就活を控える若者に「営業ってどう思いますか」と聞かれたとしたら、間違いなくこう答えるに違いない。
 
「営業、楽しくないこともいっぱいあるよ。むしろ、楽しくないことのほうが多いかもしれない。でも、営業っていう仕事は、多くの人にとっての音楽や、映画や、絵画などの芸術作品のように。きっとあなたの人生をこれまで以上に彩りに満ちた、豊かなものにしてくれるはずだよ。だからぜひ、一度でいいからチャレンジしてみてほしい」と。
 
 
 
 
***
 
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2020-06-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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