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まっすぐ目をみて話せたら


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:松下朋子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「わたしの目をみて、話を聞いてよ!」
 
強い口調にはっとなり振り向くと、5歳の長女が目にいっぱい涙をためてこちらを見据えている。その哀しげな瞳と目があった瞬間、ああしまった、と気づく。
 
パソコンでのオンライン講義を夢中で聞いていた、休日の午後のことだった。
講義の内容は、子育てについて。
子どものタイプによって響く声かけが違うこと、特に叱り方には注意しなくてはならないこと。間違った声かけは子どもの自己肯定感を下げてしまいます、なんていう講師の台詞にどきどきしながら必死でメモをとっていたあのとき。
長女が何度も何度も「ねえ聞いて」「ねえねえ、ママ! ママ!」と呼びかけるのを正直少しうっとおしく感じながら「はいはい」とやり過ごそうとしていたのだった。
 
涙の奥の瞳は、強い意志と怒りを持ってわたしを見据えていた。
 
子どものおしゃべりが上手になってきた4歳頃から、こちらの物言いひとつに敏感に反応する我が子にどう声かけをすればよいのか、ずっと迷っている。少々手を焼いている、といったほうが正確かもしれない。
 
子育てはわからないことだらけだ、ということは十分理解しているつもりだし、
正解がない、ということもわかる。それでもなんとか手がかりを見つけたくて、友人の話を聞いたり、育児書を読んでは試行錯誤の毎日。読んだり聞いたとおりにはどうにもならない我が子の反応を見て、また悩む、の繰り返し。
 
折しも、今回の非常事態宣言下で世の中のオンライン化は加速し、自宅にいても、子どもがそばにいながらでも学べるコンテンツが格段に増えた。元来のポジティブな性格と、次女の育休中で落ち着かないけれども時間だけはたっぷりあるという状況があいまって知りたい、学びたい、という意欲は止まらない。休日など、まさに時間の奪い合い。朝食の席で「今日は14時から講義だから子どもたちよろしくね」と宣言し、時間になるとそわそわパソコンをひらく。
 
それはそれで、とても有意義な時間なのだ、間違いなく。
 
性格統計学によるタイプ分析、生まれ順による長子の特徴、女の子の育て方……パソコンの画面を通じて学べるコンテンツは本当に多様で、講義メモのノートには立派なタイトルがならぶ。学生時代さながら、3色カラーペンで重要な文言にラインをひく日々。各回の講義が終わると「そうか、こうすればいいんだ!」と妙にスッキリした気分にひたり、一人満足をしていたりする。
 
でも。
インプットにつぐインプット。
頭の中に知識はたまってゆく一方で、見えていなかったもの、それは。
 
じゃあ、うちではどうすればいいの?
目の前の長女には何をしてあげられるの?
 
ほんとうに大切なものは、なに?
 
強い力を放つ長女の瞳に射すくめられ、気付かされたような気がした。
 
正直に言おう。講義で聞けるのはあくまで理論で、「目の前にいる彼女と、どう向き合うのか」がすっぱり抜けていたこと。どんな講義でも、まずは子どもときちんと向き合う、子どもと話すことの大切さを説いていたのに、いつも聞き流していたことを。
 
いちばん大事な点を見失っていた自分に気づき、愕然とする。
 
ここ数日、きちんと目を見て話せていただろうか、自分は。
思い出されるのは「はいはい、ちょっとまってね」「うんうん、そうなのね」生返事をしながらのパソコンをみつめる姿ばかり。これではダメだ。
 
しゃがんで目線の高さを揃えると、まっすぐな瞳がわたしをとらえる。
 
「ごめんね」
 
間違った時は素直に謝るの、まず。
ずっと自分が言い聞かせてきたことを、今度はわたしがやってみる。
「きちんとあなたの話を聞かなかったこと、ほんとうに悪かったよ。せっかく教えてくれようとしてくれたのに。なにがあったのかお話してくれる?」
 
長女の目から怒りが消えていったような、気がした。
静寂をたたえたその瞳が「ほんとう?」と言っているように思えて背筋がしゃんとする。
 
「あのね」
 
はじけるような笑顔で、長女が話し始めた。
庭にまいたコットンの種が芽をだしたこと、わたあめができると思ったのに、普通の双葉だったこと。
「いつになったら、わたあめでるのかなぁ。ねぇ?」
無邪気な質問に、こちらもふっと笑顔になり
「ほんとうに、ねぇ?」と返す。
 
パソコンを閉じ、ほかのお花も見に行こうか、と言って長女の手をとる。
まだまだ小さな手のひらが、しっかりとわたしの手を握り返す。
 
今日の分の講義は聞けなかったけれど、まあいいや。
目の前にいる彼女に、大切なことを教えてもらったから。
 
明日からは、きっとまた小さな言い合いの繰り返し。
わたしはまた、生返事をして怒られたりするのだろう。
でも今はずいぶんと、心が軽い。
 
そう、まっすぐ目を見て話せたら。
きっと、気持ちが伝わると信じているから。
 
 
 
 
***

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2020-06-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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