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「偽善」でもいい、ちょっとした行動で自分と世界を変えていく


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:田中佑樹(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
こんな経験は、ないだろうか?
 
良かれと思って人を助けようとしたのにもかかわらず、相手の気分を害してしまうこと。
 
 
私は20歳の時にオーストラリアの農園で働いていた。
 
その農園には、世界各国の若者が集まっていた。
 
そこでは、欧州出身の女性とペアになり、一緒に農作業をすることが多かった。
 
ある日、仕事が早く終わったので、彼女に助けを申し出たが、あっさりと断られた。
 
「これは、私の仕事であって、私がしなければならない作業なの。あなたの力はいらないわ」と彼女は言った。
 
「まじか!?」私は面を食らったが、考え方って色々あるもんだからな、と思い、それもそうだなと納得した。
 
「余計なお世話だったね」と私が言ったら、「偽善者」と彼女は言った。
 
その当時は、「偽善」という言葉があまりピンこなかったが、相手が自分にイライラしていたことは容易に理解できた。
 
その一件以来、困っている人がいても、助けたい気持ちはあるが「本当は困ってないかもしれない」「偽善的ではないだろうか」「自分で解決をしたいと思うタイプかもしれない」と無意識に思い行動にストップがかかるようになった。
 
***************
 
日本に帰国してからは不思議な現象が続いた。
 
 
「Excuse me?」
 
新宿駅で外国の方に声を掛けられた。
 
よくよく話を聞いてみたら、新宿から箱根までのロマンスカーの乗車券を買いたかったようだ。
 
私は、すでに仕事を終えていたので早く帰路につきたかったが、邪険に扱うこともできない性格なので、彼をロマンスカーの切符売り場まで案内した。
 
その時「いいことをした!」と思い、何かが満たされることはなかった…
工場で右からくるものを左に流している感覚だった。
 
 
新宿駅の1日平均乗降客数は、世界最多の353万人で、ギネスブックにも認定されている。
 
彼は、声を掛けるべき対象の中から、なぜ、私に声を掛けたのであろう?
 
経験上、声を掛けられたのが、人生で一度や二度であればこんなことを思いめぐらせることはない。
なぜ、こんなことを考えるのかと言うと、
信じてもらえないかもしれないが、私はよく外国の方に声をかけられるからだ。
 
新宿駅だけで、もう10回以上声を掛けられている…
 
私の見た目はいたって普通だ。
そして、新宿駅には私のようなタイプの人は、ゴロゴロいるはずだ。
 
私はオーストラリアで1年半暮らしていたので、多少英語は話せる。
ただ、相手にとってみれば英語が話せるか話せないかは見た目では判断できないはずだ。
 
考えれば考えるほどに不思議な現象である。
 
友人にそんなことを話したら「人を助けたいオーラが出てんじゃね?」と笑いながら言われた。
 
自分ではそんなオーラ出てねーだろ、と思ったが、オーストラリアの農園のことを思い出すと人を助けたいと思う気持ちは常に持っているのかな、とも考えた。
その気持ちが行動に反映されていないだけで…
 
 
月日は流れ、今度は逆の意味の不思議なことが起こるようになった。
「外国の人に頻繁に声を掛けられる」と言う現象がある日突然、一度も起こらなくなったのだ。
30歳ぐらいを境にピタリと止まった。
 
人を助けたいオーラすら出なくなったのか?
それはそれで、どうなんだ? と思った。
 
********************
 
私は30代中盤に差し掛かった。
 
ある日、神田駅の階段で上に行ったり、下に行ったり、右往左往している外国の方が目に飛び込んできた。
 
明らかに困っていた。
ザッツ、迷子だ。
 
その人は、私とすれ違う時に私に声を掛けなかった。
 
自分ではかなり人を助けたいオーラを出していたはずなのだが…
 
私は一旦その場を通り過ぎた。
 
 
 
が、思い直して、勇気を振り絞り、彼のところまで行き、声を掛けた。
 
彼は満面の笑みで私に紙切れを渡してくれた。
 
彼は、日本語も英語も話せないようだ。
私は意気揚々と紙切れを見た。
 
紙切れには……
 
ローマ字が書かれていたが、クセのある字だったので、判別が不明だった…
 
これでは彼の役には立てないなと思ったが、彼にローマ字を発音してもらったら容易に問題は解決した。
 
 
目的地は、水道橋であることがわかった。
 
神田からだと、中央線で御茶ノ水まで行き、そこから総武線に乗り換えないとたどり着かない。
 
言葉やジェスチャーで伝えるのは難しいから、彼を水道橋まで案内することにした。
 
神田から水道橋まで彼とは一言も話さなかったが、彼は終始笑顔だった。
 
水道橋に到着して、彼と別れる時に彼は日本語で「ありがとう」と言った。
 
おそらく、数少ない知っている日本語の一つだったのであろう。
 
発音は良くなかったが、その言葉の意味を伝えたい気持ちは十分に伝わってきた。
 
その日は、やたらと気分が良かった。
 
********************
 
相手のバックグラウンド、過去の経験、状態によって、誰かを助ける行為が余計なことに繋がってしまうことがある。
そして、助ける行為そのものが「偽善」と思われてしまうこともあるかもしれない。
ただ、こればかりは相手ありきのことなので、考えてもしょうがない。
 
「偽善」と思われようが、些細な行動で自分の幸福度を上げることができるのであれば、それはそれでいいのではないだろうか。
それでいてなおかつ、自分の行動が相手のメリットに繋がるのであれば御の字である。
 
世の中がポジティブに変化する時って、そんな小さな積み重ねの連続なのかもしれない。
 
私は、偽善者でも構わないから、声を掛ける人へとシフトチェンジをした。
 
そうすることが生きている実感にも繋がることを理解したから。
 
 
 
 ***

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2020-06-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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