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WFIOが合言葉だ。そして、映画を観ると会社の危機が救われることもある、ということ。


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担当:西部直樹(ライティング・ラボ)

 

 

WFIOは、心に染み入る言葉だ。
ただ、染みるのではない、染み入るのだ。
胸にグサリとくる。
WFIOは「ウィフィオー」と読む。
この言葉に、日本では30人に一人は、共感するのではないだろうか。
共感は、重々しいものだったり、ああ、あるあるという軽佻浮薄なものだったりするかもしれないが。
そして30人に一人の誰かは、今日もどこかで「WFIO」と叫んでいる。たぶん日本語でだろうけど。

WFIOは、胃潰瘍のもとでもある。
胃潰瘍を何度か患ったことがある。自覚したのは2度だけだけれども、無自覚なものも含めずいぶんある。
一度目は高校生の頃、文化祭の出し物、劇の担当となり、やる気のない級友たちの中で懊悩しているうちに、背中がとても痛くなってきた。 病院に行ったら、胃潰瘍と診断され、数週間薬を飲み続けた。

それから十数年後、アクシデンタルアントレプレナー(やむなくの起業家)となり、極めて小さな会社を経営しはじめて数年、胃の調子がよろしくないと病院に行ったら、胃潰瘍と診断され、しばらく薬を飲み続けた。
そして、ある時健康診断で、胃カメラで十二指腸まで観てみましょうとなった、が、カメラが胃から出られない、胃の出口「幽門」が狭くて、胃カメラが通らないのだ。
どうやら、何度も胃潰瘍を繰り返し、そこがケロイド状になり、幽門を狭めているというのだ。
知らなかった、私の胃がそれほど潰瘍になっていたとは。
歴戦の勇士である、私の胃は。

そう、会社を経営するということは、胃がボロボロになることなのだ。

還暦も近くなると、若い人から、相談を持ちかけられることもある。
起業してみようと思うんですが、どうしたらいいでしょう、と。
若い人は、いいねえ、と思うと同時に、胃の痛みにのたうち回る覚悟はあるのかなあ、とも思う。

自分で事業をするのは、やっかいなことばかりだから。
困難(Hard Thing)の連続なのだから。

例えば、会社が風前の灯火なら、会社の命を消さないために顧客や債権者達に説明をしなければならない、たとえ、その日、妻が病で倒れても。

シリコンバレーのベンチャーキャピタリストであるベン・ホロウイッツは、立ち上げた会社がドットコム不況に見舞われ、立ちゆかなくなった時、連日投資家や社員達を前にミーティングをしていた。この危機を乗り越えなくては、会社は倒産してしまう。そんなとき、義父から電話を貰うのだ。

「ジョン:ベン、会社にはきみを邪魔するなといわれたんだが、どうしても知らせたいことがある。フェリシア(ベン・ホロウイッツの妻)の呼吸が止まった。でも、死ぬわけではない。
ベン:死なないって? えっ? いったい何が起こったのです?」
(ハード・シングス 第2章 生き残ってやる p52)

甘いラブストーリーなら、妻のためすべてを捨てて、彼女の元へ行くのだろうが、現実はそうはいかない。
彼の肩には、数百人の従業員と家族の人生と数千万ドルの資金、顧客、などなどが掛かっているのだから。
投げ出すわけにはいかないのだ。

ベン・ホロウイッツと比較しては申し訳ないが、小さな会社でも、抜き差しならない時はある。
子どもが熱を出しても、ごめんといって仕事に行かなくてはならない時もある。

起業家のことをネットスケープを立ち上げたマーク・アンドリーセンはこんなジョークで表現する。

「マーク:スタートアップで一番良いことはなんだか知ってるかい?
ベン:なに?
マーク:2種類の感情しか体験しないこと。歓喜と恐怖さ。しかも、寝不足がその両方を促進するんだ。」
(ハード・シングス 第2章 生き残ってやる p45)

歓喜と恐怖。どちらが多いかは、まあ、人それぞれだろうけど、確かに、寝不足にはなる。

やむを得ず起業をすることになった時、会社経営の本とかを読んでみた。成功者の体験談も。実務的なこと以外は、残念ながら、参考にはならなかった。貧しい家庭に育ち、苦労して、成功して、何億稼いでいます。という話は、良かったねえとは思うが、今ここにある問題の解決にはならなかったのだ。

ベン・ホロウイッツの本に、その当時出会えていれば、少しは恐怖が和らいだかも知れない。
寝不足でもね。
残念ながら、私が起業した頃、ベン・ホロウイッツはネットスケープで働き始めたばかりで、この本はまだ書いていなかったのだけれど。

「HARD THINGS 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか」ベン・ホロウイッツ 滑川海彦、高橋信夫訳 日経BP社刊

は、恐怖を克服するための指針だ。
会社が立ちゆかなくなった時、社員に馘首を言い渡さなくてはならない時、などなど。

どうすればいいのか、例えば、何事であれ、最高責任者は
・誠実に、コミュニケーションをとれということ

友人の会社の社員が、自社の採用面接を受けに来たら、どうしたらいいのだろう。
友人には黙って採用してしまう? そして、友人を失ってしまうのか。
「最善の方法は、開示と透明性を持つことだとわかる」だという。
他社の優秀な社員は、必ずしも自社でも優秀な社員でいるとは限らず、誠実に事にあたらなければ、「友達ではいられなくなると思ったほうがいい」
(ハード・シングス 第5章 人、製品、利益を大切にする――この順番で p171)

・そして、時に映画を観よ。

窮地に陥ったら、映画を見ることだ。
危機脱出のヒントがあるかもしれない。
この本の中で、ベン・ホロウイッツは、困難に当たったとき、時として映画から解決のヒントを貰っている。

「その夜、私は『ショート・アイズ』という映画を見た。(中略)私はこの映画を見ているうちに解決策を思いついた」
(ハード・シングス 第6章 事業継続に必須な要素 p206)

「ちょうどそのとき、奇跡的めぐり合わせで、私は『フリーキー・フライデー』を観た。(中略)そして、『これが解決策になるかもしれない』と気づいた。私は『フリーキー・フライデー』式マネジメント術を試してみることにした。」
(ハード・シングス 第8章 起業家のための第一法則――困難な問題を解決する法則はない p346)

映画を見たら起業家になれるわけでも、問題の解決策が授かるわけでもない。問題を考え抜いているから、ヒントが見えるのだろう。

「WFIO――(We’re Fucked, It’s Over ――オレたちはやられた、この会社はおしまいだ)は、アンドリーセン・ホロウイッツのパートナーの一人、スコット・ワイスがつくった言葉だ。」
(ハード・シングス 第7章 やるべきことに全力で集中する p285)

日本の会社約421万社、会社の数だけCEOはいる。30人に一人は、何らかのCEOということになる。
日本の30人に一人が、ある時(けっこうある時はある)WFIOと叫びたくなったら、この本のどこかに解決のヒントが見つかるだろう。

それにしても、なんでこんなにWFIOなんていいたくなる時が多いことか。
やれやれ。

胃を大切に!

 

 

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