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好きな動物は何ですか? 私は鳥派です


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:山添真喜子(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「夢は、オウムを飼うこと?」
 
思わず聞き返してしまった。
 
「そう、私の夢は、オウムを飼うことなんだよね。でもね、オウムは求愛行動として、吐き戻しするから、なかなか難しく、残念ながら実現可能性は低いね。オウムじゃない鳥を、飼うことになるのかなあ」
 
「私、就職活動を前提に、やりたい仕事とか取りたい資格とかについて、聞いたつもりだったのだけど……」
 
これは、親友と私の大学2年生頃の会話だ。
これからの夢を聞いてみたら、全く想像していなかった返答があり、彼女との付き合いが長い私も少々おったまげた。
 
「ずっと愛犬家だと思ってたら、実は、鳥派なんだね」
 
親友の家では長い間犬を2匹飼っていたので、正直、鳥とは意外だった。
 
「でも、この想定外なところが、彼女の魅力なんだよな」
 
と、私は心の中でつぶやいた。
 
本当のところ、今回はその魅力もピンとこなかった。なぜなら、私は鳥に全く興味がなかったから。もともと動物好きでない私にとって、鳥は関心の対象外だった。
 
急性白血病の治療のため大学病院に入院し、3か月ほど経った2018年11月。厳しい抗がん剤治療で体重が10キロ近く減ったが、幸いなことに、秋に差し掛かるころ体調が落ち着いた。そして、次の抗がん剤治療が始まるのを待っているタイミングに、主治医から初めての外出許可が下りた。
 
何年かぶりに、下界に降り立つお化けのような気分で、病院の外に出た。
秋晴れの空気は少し冷たく、そして澄んでいた。私は、ゆっくりと歩きたいと思い、バスに乗って、自宅近くの自然公園に向かった。
 
木の実をつけた木々が両脇に並ぶ道を、歩き出した。落ち葉の上を歩いていると、寝たきりで使っていなかった筋肉が、久しぶりの役目を果たすため、一生懸命働いているのが分かる。
 
「ほら、あそこ。写真撮るのがむずかしいのよね」
 
「あ、見えました。都内にも、あんな鳥がいるのですね」
 
望遠レンズが付いたカメラを持つ先客が、一生懸命何かを指さしながら話している。
 
「カワセミだ!」
 
私は初めて見る、ブルーとオレンジの色鮮やかな羽を持つ鳥に心奪われた。
 
「きれいな青色だな。オレンジとのコントラストでさらに鮮やかに見える」
 
病気をしてから、初めて心から感動した瞬間だった。厳しい闘病生活からくたくたになってしまった私。身も心も全てが乾ききって、何にも反応出来なくなってしまったのではないかと、ずっと心配だった。だが、カワセミを見て、私の心は素直に高揚した。
 
カワセミを見て心が動かされたことで、昔の自分が戻ってきた感覚を覚えた。そして、その時から、「白血病を必ず克服して、昔の自分に戻るのだ」と思えるようになった。
 
病は気から、である。大病を患っても、「自分は、治るかもしれない」と思い続けることは重要だ。私の場合、自然の中を一歩一歩踏みしめながら散策し、そしてカワセミに感動した時に手応えを感じた。自分の身体がまだ実際に動き、心が反応することを確認できたからだと思う。
 
外出許可がでるたびに、私は自然公園に出かけた。
その後も、数回カワセミを目にしたし、ダイサギという真っ白な美しい鷺にも出くわした。
鳥は、私に自分の治癒力を認識させてくれた大切な動物だった。
 
「鳥達が、私に幸運を運んできてくれるみたい」
 
いつの間にか、鳥が私のラッキーチャームになっていた。
 
親友は、入院して真っ先に見舞いに来てくれた一人だった。
 
「これ、会社の旅行のお土産。 佐渡島に行ったから、トキね」
 
そういって、トキのマグネットと、トキがプリントされているフェイスタオルを差し出した。
 
「やっぱり、鳥なんだね」
 
大病を抱える私も、思わずくすっと笑ってしまった。ぶれない親友は、今でも鳥好きだった。陰気な病室が、明るくなった貴重な瞬間だった。親友が来てくれただけでもありがたかったが、鳥グッズでさらに病室が明るくなった。
 
彼女は、毎週末病院に来てくれた。病院食を食べない私のために、たくさんの差し入れを持って。私も彼女自身も何回お見舞に来てくれたか、分からなくなるほどだった。
 
私が鳥に魅了されたのは、親友への厚い信頼があったからかもしれない。闘病中の私を支えてくれた、鳥好きの親友。鳥を見て感動し、そして自分の回復を確信したのは、改めて考えれば、そう不思議なことではなかった。
 
「そういえば、切迫早産で3か月入院したときも、お見舞い来てくれたよね?」
 
「行ったね、あの世田谷の病院」
 
「あの時も、鳥の置物を持ってきてくれたよね」
 
「そうそう。 何にしようか迷ったけど、病室でさびしくならないように、と思ってね!」
 
10年前にも、鳥グッズを持ってお見舞いに来てくれた親友。おかげで、病室が少し和らいだっけ。無事に出産できるかどうか不安だったあの時も、鳥が見守ってくれていた。
 
白血病の治療を無事に終え、退院してから1年が経つ。
 
今でも時間を見つけては、あの自然公園に散歩に行く。すっかり鳥派になった私は、水辺に到着すると、無意識に鳥を探す。そして鳥たちを見つけると、こう語りかける。
 
「あの時、あなたたちに心を動かされたから、またこんなに元気になれました。これからも、一生懸命生きていきます」
 
 
 
 
***

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2020-07-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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