ライティングにて、自分が現れた
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:三谷 智子(ライティング・ゼミ通信限定コース)
私がライティングを習おうと思ったキッカケは、LINEでの自分の文書を、私自身が理解できないと感じたからだった。
ある日のこと。すごく腹立ったことを、「ちょっと聞いて!!」と友達にLINEした。事細かに状況を説明し、いかに自分は腹が立ったか書き綴った。友達も私と同じ感情になるようにしたかった。
書き殴るように言葉を吐き出し、ようやっと私の気持ちは落ち着いた。改めて自分の文書を読み返した。
……全然分からなかった。もちろん日本語は分かるが、そういうことではなくて。
何が言いたいのか、伝わってこなかった。
良かれと思い、たくさんの情報を入れたことが原因だった。どの文書も横並びで、一番強調したいことが、どこなのか分からなかった。
こりゃ伝わらないわ。
懇切丁寧に説明したのに、どうして分かってくれないのよ。イラっとすることがよくあった。でも、そりゃそうだった。私の伝え方に、改善の余地があった。
そんな時、世の中に文章を教えてくれる、「ライティング・ゼミ」の存在を知った。
天狼院書店がしているライティング・ゼミは採点も厳しいが、その分本当に文章を書けるようになると、知人から教えてもらった。
軽い気持ちで、採点を通りWeb掲載となった文章を読んだ。
作家さんじゃない、一般の人がこんな文章を書けるの?!
驚いた。
私がここまで書けるようになる、とは思えないけど。でも、この手前でもいい。そうなれば、私の伝わらないLINEは、おさらばだ。そんな未来の自分を予想できた。
いそいそと、天狼院書店のライティング・ゼミに申し込んだ。
いざ課題投稿をしてみると、まぁ苦戦した。エネルギーを注ぎ、考え尽くして書いた文章の、「掲載ならず」の通知を何回見たことか。ショックだった。
私はこの数年で自分の人生に起こった、辛かった出来事を中心に課題投稿していた。辛い出来事を通して、私は色んな経験をしていた。だからその分、物語になる。書く価値のある文章になる。これ以上のテーマはないと思っていた。
当初は掲載とならなかったからこそ、私は出来事と改めて向き合った。まずは自分が書いた文章を、しっかり読み返すことから始めた。
読み直してみると、違和感がある。LINEでの自分の文書を読んだ時と似た感覚だ。肝心なところが、どの部分なのか分からなかった。
すーっと流れたように出来事を書き綴っているけど、そんな風に上手く事が運んだっけ。いや。あっちにコツン、こっちにコツンと頭をぶつけて、少しずつ進めてきたはずだ。その過程が文章の中から、無くなっていた。
いつの間にやら存在そのものを無かったことにし、すっぽり私の記憶から抹消していた。物凄く痛みを感じたからだろうか。自分を守るべく、帳尻の合う曖昧な記憶にしていた。曖昧な記憶を紐解くと、カッコ悪い、失敗した姿で、正直隠し通したい存在がわらわらと現れてきた。
試しに、消去していた自分の姿を文章の中に表してみた。すると文章に動きが出て、面白くなった。じめじめ暗い感情を感じた自分の姿があるからこそ、次の一歩をどう踏み出そうと考えた自分の在り様が生き生きした。文章の中に、物語が生まれた。
それならばと、消去していた自分の存在ばかりをクローズアップしての文章も作ってみた。愚痴のオンパレードで、読んでいても楽しくなかった。
素敵だと思う自分の姿も、カッコ悪いと思う自分の姿も、両方表して初めて、文章は面白くなるのだと知った。
例えば自分が好む、好まないという条件でなく、もっとだだっ広い、無条件の全部の自分の姿を文章に表すことで、明確に伝えることが出来た。
今思えばだが。LINEで書いていた文書は、自分の好きな部分を丁寧に伝えて、残りの部分は言葉にすらしていなかった。だから自分で読んでも、分からなかったのだ。
痛いと感じるには、理由がある。辛いと思ったのは、何に対して思ったのか。
文章にする過程を通して、当時は存在を無視していた自分へ、インタビューをしているようだった。
文章におこしていくことで、当時は気づいていなかった思いを改めて私自身が知り、深く納得することもよくあった。おかしな話だが、無意識に見ないようにしていた自分の姿は、文章にすることでしっかり現れるのだ。
文章を通して、ようやく自分の全体像に出会えたと思った。
読む価値のある文章を書きたい。読んで欲しい。この思いがあったからこそ、私は存在を無視していた自分をしっかり味わおうとした。自分の文章を読む価値のあるものにする、欠かせない存在だからだ。私が普段から意識できている自分の存在と、無意識にあった自分の存在を合わせて、文章を作る。すると、物語が生まれ、私の伝えたいことをしっかり表すことが出来た。自分の全てを総動員で文章を作る。それが私のスタイルとなった。
全部、大切だよー。欠けていいものなんて、何も無いよー。
記憶から抹消してた、カッコ悪い自分にそう伝え、しっかりその存在を感じるようにした。
***
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
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