メディアグランプリ

“本を読む”ことを問い直す


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記事:渡辺 彩加(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
本を読む時間がない。
いや、時間はあるのかもしれないが、うまく活用できていない。
 
積読と呼ばれる、買ったにもかかわらず読まれていない本が積み上がっている。
自己啓発本から、小説、専門書まで様々なジャンルのものが、
私の部屋にある本棚の中にも、床の上にも、段ボールの中にも積み上がっている。
どれもこれも、買ったばかりのままで文字通り何も手をつけられていない。
 
昔から、私にとって本は例外だった。
自分の欲しいものは、お小遣いから基本出さなければいけなかったが、
本だけは、親が買ってくれていた。マンガでも、雑誌でも、小説でも。
だからか、昔から本屋さんにいくと、無性にワクワクしていた。
選ぶ楽しさ、読む楽しさ、読んだ後感想を話す楽しさ、
様々な楽しさが詰まっている場所だった。
 
いつからだろうか、本屋さんにいくと、苦しく感じるようになったのは。
 
あぁ、まだ読んでない本がある。
これも読まなければいけないけど、まず先に部屋に積んだままの本を読まないと。
もう次の本が出ているのか、追いつけない……。
 
本屋さんに行っても、積読のことが頭を過ぎる。
読んでまとめなければならない本もあるし、
自分の趣味で読みたい本もある。
押しつぶされそうになって、苦しくなった。
 
前は行くだけで楽しかった本屋さんが、
今はプレッシャーを与える場になっていった。
 
本屋さんにめっきり行かなくなってから、何年か経った今年、
Audiobookというアプリに出会った。
なんと、本を音声で読み上げてくれるアプリである!
 
これなら、何かと忙しい私に取って作業しながらでも聞き流しをすることができる。
今まで読めてこなかった本も聞くことならできるのではないだろうか。
よし、聞き流し読書を始めてみよう。
 
そう思い、アプリを入れた。
本をダウンロードするのに、お金はかかるが、
本を買うよりは安い。
無料キャンペーンなど行っていたこともあり、
無料で音読してくれる本をまずダウンロードしてみた。
 
再生を押す。
 
ゆったりとした男性の声で、本文が読み上げられていく。
 
なるほど、これなら聞き流しできる!
洗い物をしながら聴こう。
 
そう思ったのも束の間、
本の内容が全く入ってこなくなってしまった。
 
本当に「聞き流し」になってしまったのだ。
受験生がBGMとして、ラジオを流している、あの感じ。
音として認識できるけど、内容が入ってこない。
本を読み上げているけど、BGMになってしまっていた。
 
これは、作業をしながら聞くのはダメだ。
BGMになってしまう。
ちゃんと座って、静かな場所で聴こう。
 
次に、作業机に座って、再生ボタンを押した。
 
男性が引き続き読み上げてくれる。
ゆったりと、読み上げてくれる。
きちんと文と文の間は空白の時間をとってくれる。
 
あれ……?
なんだか集中できない。
内容が入ってこない。
ゆっくりすぎるのか?
欲しい情報が、がつん! と来てほしいのにこない。
耳を通して理解する情報量が男性の声に依存していて、もどかしい。
 
気づいてしまった。
あれ、これはもしかして……、
自分で本を手に取って読んだ方が早いんじゃないか?
 
オーディオとして「本を聴く」時の欠点は、
斜め読みして、知りたい情報だけを取り出すことができないことだ。
最初から最後まで、一言一句読み上げてくれる。
でも、私にとって正直欲しいのは全ての一言一句ではない。
 
もう一つ気がついたことは、著者の書いている文章の行間を読んだり、言葉の美しさに気づいたりすることができないことだ。
読み上げてもらうと、なんの違和感もなく全ての単語が読み上げられる。
活字を目にしたときの衝撃や、わざと与えられる違和感には、目からの情報では優位になるが、耳からの情報では気がつきにくい。
 
「本を聴く」ことへの淡い期待が打ち砕かれたのと同時に、
「本を読む」ことの自由度の高さに気づかされた。
 
書かれていることをどう解釈するか、
登場人物はどんな気持ちだったのか、
音にしてしまうと失われる感動がある。
 
本を読むときは、順番通りではなく、
自分の好きなところだけを読んだらいいし、
斜め読みをしてもいい。
解釈は自分次第だ。
 
本が読めないなら、本を聞けばいい。
手段を効率化して賢くありたいと願う私がいる。
 
時短をしてみようと試みたが、諦めた。
時代が変化しても、本が本として残っている理由はここにあるのかもしれない。
 
時間がないのは、本当に時間がないからではない。作るしかないのだ。
本は“読む”からこそ価値がある。
活字を読んで得られる感動をきちんと味わうべきだ。
 
そう思った私は、積読になっている本の一番上にある本を手に取った。
 
 
 
 
***
 
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2020-07-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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