メディアグランプリ

自動車の運転免許証で飛行機に乗ってみた


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事;佐藤 未希子(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
ある人生の一時期、飛行機に乗るのが本当に下手だった。
乗り遅れそうになるなんてことは数えきれず、離陸の時間に起きて、本当に乗り遅れたこともあった。
しかし、私はあの日を境に変わったのだった。
 
大人30名あまりが、JAXAで、ペットボトルの水ロケットを飛ばすというなんともわくわくするイベントを行う為、種子島に向かうことになっていた。
参加者は何か月も掛けて、水ロケットを製作し、この日を本当に楽しみにしていた。
失敗するわけにはいかないイベントだった。
 
朝の4時半に起床し、イベントの成功を確認したのだった。
だって、いつもここでつまずくんですもの。
荷物はすべて前の日に準備し終わっていた。
息子と旦那の朝食も準備した。
ゴミ出しも終わった。
後は、息子と旦那に業務連絡をして家を出さえすればよかった。
 
しかし、冷蔵庫の中のブロッコリーが私に訴えかけたのだった。
「3泊4日の日程を終えて帰ってきたら、芽の部分が黄色くなってしまって、美味しくなくなっちゃうよ」
幸い、まだ少し時間に余裕があった。
鍋に湯を沸かし、ブロッコリーを茹でて、息子と旦那に食べさせて、家を出た。
 
最寄りの駅に着いた頃だっただろうか。
ふと時計を見ると、思ったより時間が経っていたことに気づく。
「これは、まずい、ギリギリだ……」
 
次の乗り換えの有楽町駅までの地下鉄の中、最短で到着できる経路をひたすら検索しまくった。
どうやら、乗り換えの要所要所で猛烈ダッシュを繰り返せばなんとか間に合うらしい。
有楽町線の8号車の一番前の扉の最前列を陣取った。
電車の扉が開き、羽田空港までのレースの火ぶたが切って落とされた。
目の前に現れるすべてのエスカレーターをダッシュで登り切り、すべての階段を一段飛ばしで登り切った。
下りの階段は一番上の段から地上に飛び降りる勢いで下った。
いやむしろ、飛び降りていたのかもしれない。
シミレーション通りの猛烈ダッシュが功を奏し、なんとか離陸25分前に羽田空港に到着できたのだった。
だが、まだ幸運の女神がほほ笑むのは先だった。
 
時は修学旅行シーズン、羽田空港はこともあろうか学生達でごったがえしていた。
羊の群れのような学生の間を鬼の形相で兎に角前に突き進む。
怯えてわらわらと両手に分かれる少年少女の間を猟犬のように走った。
 
ギリギリで到着したチェックインカウンター。
にこやかに笑っていたが、明らかに目が怒ってたグランドスタッフさんに後はすべて最優先でご案内いただいた。
あとは、搭乗口というゴールに向かってまっしぐら!
しかし、その前に売店に寄って、コーヒーとサンドウィッチを買ったのだった。
だって、あんだけ走りゃ、腹もすきますよ、そりゃね。
 
「佐藤様~」
「さとーさまぁ?」
「おーい! 佐藤! どこだぁ?」とほぼそんな意味合いで私の名前が連呼されていた搭乗口20番ゲート。
もう、誰も搭乗予定の乗客はいなかった。
 
オレンジのポロシャツが目に眩しいグランドスタッフさんに安堵の表情で迎えられ、搭乗ゲートという名のゴールテープを切ろうとしたその瞬間!
 
ん?
 
ない……
無い。
無いよ!
搭乗券が無い……
 
隣の北海道行きの飛行機の搭乗口に並んでいる大勢の乗客が大注目する中、すべてのポケットをひっくり返し、リュックの中も全部出したけど、搭乗券は見つからなかった。
 
「てんめぇ! 遅れてきた上に搭乗券失くしただとぉ? だいたい何で出かけにブロッコリー茹でちゃうんだよ! 悪くなるからっつったって、冷蔵庫の中に他にも悪くなっちゃってるもの沢山あんだろ! ブロッコリー茹でるぐらい、旦那にやらせろ!」って本当は言ってるんだろうなっていう目をしながら、グランドスタッフは言った「お客様、大丈夫ですよ。運転免許か健康保険証をお持ちでしたら、見せてください」
 
運転免許証は車だけでなく飛行機にも乗れてしまう魔法のカードだった。
なんでも、運転免許証とか健康保険証とかいわゆる身分を証明できるものがあれば、搭乗券を失くしても飛行機に乗ることができるそうだ。
ですから、飛行機で旅行する時も運転免許証は忘れずにお持ちになってくださいね。
なんなら、国内旅行でもパスポートを持っていくのがよろしいかと。
 
頭を夜会巻きにしたクールビューティーのグランドスタッフは、運転免許証を手に取り、私の顔を一瞥すると目にも止まらぬ速さで手書きの搭乗券を作ってくれ、
ぱんっ!
ぱーんっ!
ぱーーんっ!
これでもかっていう位激しくキーボードを3回ぶっ叩き、それでも顔はにこやかに笑いながら手作りの搭乗券を渡しながら言ってくれたのだった。
「行ってらっしゃいませ~」
 
「今度こそ、もう大丈夫」やっと確信できたのだった。
額に1リットル位の汗をかきながら、飛行機に搭乗すると、まだ廊下には座席上の収納棚に荷物を詰め込もうとする乗客で溢れていた。
「ふ~っ。やれやれ、何はともあれ、遅れなくて良かった! 今日もなにやら色々と冒険しちゃったな」と何事もなかったように座席に座ったところ、左のお尻に違和感が。
 
左のお尻についていたポケットを探ると見つからなかった搭乗券が……
 
その日はいていたズボンのポケットはこともあろうか右だけではなく左のお尻にもついていたことにその時はじめて気づいたのだった。
 
 
 
 
***
 
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2020-07-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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