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王子様は魔法使いで、シンデレラでもあったのだ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:高柳翔子(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
「ファンの皆がいてくれたから、僕はここまで頑張れたんです。ライブやイベントにもたくさん来てくれて。俺の団扇やペンライトを振って応援してくれて。チェキも一緒にたくさん撮ってくれた。……M2って名前もファンの方が俺につけてくれた名前なんです」
2019年の夏。私が大好きなアイドルグループから一推しのメンバーが卒業した。
最後の挨拶の場、ステージの上に立つ私の王子様はいつものように柔らかい笑顔で語りかけていた。客席にいた私の手元には王子様の顔写真がプリントされた団扇と、彼のイメージカラーの紫のペンライト。他のメンバーのファンもこの場だけは自分のペンライトを紫に光らせて、ステージに立つ彼を照らしてくれている。
私は確かにあの時、王子様に恋をしていた。彼は王子様でありながら、私をお姫様に変身させてくれた魔法使いでもあった。
 
王子様が所属していたのはNALU-SEE☆と言うアイドルグループだった。
NALU-SEE☆はよしもとクリエイティブ・エージェンシーの若手芸人が結成するアイドルグループ。コンセプトは「吉本が誇るナルシスト芸人たちが集い、歌って踊るアイドル」だ。そこで王子様は「M2」と言う芸名で活動していた。
色白で背が高くて、刈り上げツーブロックの髪形が特徴。メンバーの最年少が加入当時26才だったのに対して、M2は32歳でメンバー最年長者だ。それ故かハンサムなだけではなくて、大人の落ち着きを兼ね備えていた。私にはヨーロッパのどこかの国の王子様のような雰囲気を感じ取っていた。一方で口を開けば関西弁の気の優しいお兄さんで、いい意味で何を考えているのかわからない人だった。それが彼の魅力だった。
 
彼はファンは勿論他のメンバーやスタッフをも様々な方法で驚かせて心を揺り動かした。
私がNALU-SEE☆メンバーとファンが交流できる日帰りバスツアーに参加していた時の事だ。バスの車内でメンバーの私物が当たるビンゴ大会が開催されて、私は見事にM2の私物プレゼントを獲得できた。
ところがそのプレゼントはバスツアーで行った水族館に売っていた鯉の餌の残りだった。それまでのメンバーのプレゼントがメンバーの私服や、愛用しているギターのピック等、割と豪華な物ばかりだったので色んな意味で私は驚愕した。他のメンバーからもブーイングが起きたし、私は他の参加者から良くも悪くも注目されて恥ずかしくなった。
しかしそのバスツアーでトイレ休憩の為にサービスエリアへ立ち寄った時。トイレから戻って来た私にM2が声をかけてきた。「鯉の餌だけ、ってのも悪いから」……そう笑ってM2は私に自分が愛用していたキーリングと彼の趣味である将棋の駒のキーホルダーを渡した。
言うまでもないが、M2の本当の私物プレゼントはこっち。だけどただ渡すだけでは面白くないと思い、サプライズを仕掛けて来たのだ。
「ごめんやけど、鯉の餌も一緒に持って帰ってくれると助かるわ」
こっそりと私に申し訳なさそうに囁いたのが、その証拠。私はこの出来事をきっかけによりM2に惚れた。
 
NALU‐SEE☆の追っかけを続ける中で事件は起きた。ネットの掲示板に私の悪口が書き込まれていたのを偶然見つけたのである。
その書き込みを発見する数週間ほど前に開催されたNALU-SEE☆のワンマンライブ。そこでメンバーが理想のデートプランを再現するという相手役に私が抽選で当たった。それもNALU-SEE☆のリーダーにして一番人気のメンバーの相手役。私なんかがいいのかな、と思いながらも嬉しい気持ちいっぱいで舞台に上がって彼の相手役を務めた。それが一部のファンの癪に障ったのだろう。掲示板にはこう書かれていた。
 
「リーダーのデートの相手役だった真ん中分けハゲのデブス、放送事故だったよね。リーダーもよく耐えたよ」
 
元々私は自分に自信がなく、むしろ自分が嫌いだった。だからこうやって目に見える形で否定されるのはより堪えた。本当に太っていたし、髪の毛の量も人より少ない。メイクもファッションも適当に過ごしていた。ショックのあまりその時は泣き出し、しばらくは何もできなくなるほどに落ち込んだ。
だが私はM2のおかげで立ち直った。M2はナルシストと言いながらも最初から自分が好きで、自分に自信があるというわけではなかったのを思い出したのだ。
M2はダンスも歌もほとんど未経験だった。だからオーディションの課題でダンスや歌を覚えるのに時間がかかったし、他の受験者からバカにされる事もあった。けれど彼は他の誰よりも課題に真面目に向き合って、歌やダンスを頑張って練習していて、その姿を評価されてオーディションに合格した。
また、アイドルとして活動していく中で、周りからカッコイイとちやほやされるようになったM2はそれまで興味がなかったおしゃれについて勉強し始めた。周りのおしゃれな人に相談したり、自分で服屋へ行くなどして少しずつオシャレのセンスを磨いていった。周りの人から褒められて注目されることで彼は自分に自信をつけて、本当の意味で自分が好きなナルシストを自称できるようになったのである。
私は自分が嫌いになった理由はいじめられていた事と、人格否定されるような怒鳴られ方を何度もされてきていた事だった。反発することなくただ黙って攻撃されて傷つけられてそこに倒れて動かないでいるだけでは何も変わらないのだと私は悟った。そして自分も変わりたいと本気で思った。
 
結論を言えば真ん中分けのデブなのは治っていない。だけど髪にボリュームが出るように髪形に気を使ったり、自分に似合うファッションを研究したり、スキンケアやメイクに気を配ったりと今の自分がより輝けるような方法を考えて実行し続けた。すると職場の人や友人から褒められるようになって、自分に自信をつける事が出来た。
M2を始めとするNALU-SEE☆のメンバーと一緒に撮った写真はどれも表情が明るくて良い顔をしていた。昔は自分の顔を写真に撮られるのも嫌だったが、人に撮られる事に抵抗がなくなった。
 
そんなM2はNALU-SEE☆最後の挨拶で私に魔法をかけて卒業した。
「M2って名前は、ファンの方が俺につけてくれた名前なんです」
……M2の本当の姿はアイロンヘッドというお笑いコンビのメンバーの一人である毛利雅俊さんだ。毛利さんはSNSでNALU-SEE☆の芸名を募集した結果選ばれたのがこの名前だ。イニシャルがM2つだから、M2。面白さとかっこよさのちょうどいいところを突いているというのが選ばれた理由だそうだ。
なぜ私がそれを知っているか。……それはM2の名付け親が私だからである。ちゃんと覚えていてくれたことが嬉しくて、私はつい涙した。
 
王子様であり魔法使いでもあり。かつて魔法で美しく着飾ってもらったシンデレラでもあったM2。
そんな彼が最後にかけた魔法はまだ続いていて、今もまだNALU-SEE☆のM2は私の心の中に確かに存在している。
 
 
 
 
***
 
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2020-07-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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